(終局直後)
【伊藤沙恵女流四段インタビュー】
--本局は持久戦を選択されました。振り飛車側から△5五歩(40手目)と開戦しましたが、序盤はどのように思っていましたか。
「難しいと思っていました。戦いが起こったところはしっかり考えて指そうと思いました」
--▲4七銀(45手目)とじっくり進めたあと、▲4五桂(53手目)△4四角▲2四飛と激しくなりました。中盤戦はどのように思っていましたか。
「難しかったです。予定変更を何度かして、と金を作られたあたり(46手目△5七歩成)は駒割が金桂交換で分が悪いと思っていました」
--△8七金(66手目)と、のど元に置かれたあたりはどのように見ていましたか。
「こちらの玉だけすごく薄く、しかも馬が手厚いので嫌味、嫌味で指されていると思っていました」
--▲6四桂(77手目)から攻めの手掛かりができたかと思います。
「穴熊の強さが生きればと思って、そういう展開にしました」
--▲6一竜(83手目)がいい手という評判でした。
「手ごたえはなくて、まだ何があるかわからないと思っていました」
--その後も攻め続ける展開でした。
「かなりミスしている気がします。もうちょっと明快な寄せがありそうという気もしていましたが、時間切迫もあって見えなかったです」
--一分将棋の大熱戦でした。全体を振り返ってください。
「中盤は難しい将棋だったと思いますが、最善を指せていない気もしますし、終盤にかなりヨレてしまって、焦っていたと思います」
--第2局、札幌対局に向けてひとことお願いします。
「体調に気をつけてがんばりたいと思います」
【里見香奈女流王位インタビュー】
--向かい飛車の本局、△5五歩(40手目)から仕掛けましたが、どのように局面を見ていましたか。
「難しいと思っていました」
--△6五桂(48手目)、▲4五桂(53手目)と桂馬を跳ね合う、激しい展開になりました。
「先手の攻めをかなり呼び込んだので、駒得ではあるのですが実戦的には大変と思っていました」
--と金を作ったあと(56手目△5七歩成)の攻めについてはどう見ていましたか。
「こちらが1手速いと思っていました」
--△3六角成(72手目)と馬を作って、後手が手厚くなったかと思いましたが。
「激しい攻め合いですけど、途中、相手玉に迫る手が指せなかったです」
--飛車を成り込まれて6一に入られたあと(81手目▲2一飛成~83手目▲6三竜)迫られているのかと思いましたが。「△4五馬(82手目)が甘かったのかもしれないです」
--最終盤は難解でしたが、振り返るといかがでしたか。
「チャンスが来ていたと思うのですが、間違えてしまったので悔いが残ります」
--一局を振り返ってください。
「難しい将棋だったと思いますが、反省点がいくつかあったので、それを修正して次局に向かえたらと思います」
(インタビューに答えている)
(翔)
第34期女流王位戦五番勝負第1局は、133手で伊藤女流四段が勝ちました。終局時刻は19時13分。消費時間は▲伊藤女流四段3時間59分、△里見女流王位3時間59分。
五番勝負は挑戦者が先勝。第2局は5月16日(火)に北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」で行われます。
(夏芽)
途中、後手玉に詰みが生じた場面もありましたが、伊藤女流四段は後手玉を下段に追って、寄せの網を絞る方針のようです。局面は先手勝勢で変わりありません。
(翔)
図の▲3七角は詰めろ竜取りになっています。竜を逃げる場所によっては▲7四竜以下の詰みがあります。本譜は△4九竜として▲7四竜△4五玉▲4六金に△同竜を用意しました。先手勝勢と見られてはいますが、里見女流王位も簡単に崩れません。
(翔)
上図の△7五桂は、△8七桂打▲同金△同桂不成▲8八玉△7八馬以下の詰めろになっています。
▲7五同歩と取る手も考えられましたが、伊藤女流四段は▲7二桂成△同馬(先手玉への詰めろが消えた)に▲7一銀と、寄せに出ました。
ここで里見女流王位が考え、両者ともに残り10分からの秒読みに入っています。
(翔)
上図で伊藤女流四段が考え、残り30分になりました。里見女流王位は34分残しています。
森信七段は「▲7二桂成△同金に▲2一飛成までは進みそうです。そこで△5九飛成に▲6九歩か▲6九金か。弾かれるのがいやなら△5九飛成とせずに△6六桂がいいのか。双方、手が広い局面です。形勢は互角です」と話しています。
(翔)