第32期女流王位戦五番勝負第3局

2021年6月 2日 (水)

里見香奈女流王位記者会見

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感想戦のあと、場所を変えて記者会見が行われました。

――挑戦者の山根女流二段との五番勝負を振り返って。
里見 山根さんは幅広い戦型を指されますので、相振り飛車の定跡形になるのかなとは予想していました。やっていく中で、山根さんの棋風を知っていくというか、対局数が多くはなかったので手探りな部分もありました。

――今回のシリーズを勝ちきることができた要因。
里見 第1局と第2局は終盤戦が難しくて。でも時間を残していたので。時間配分に助けられた部分はあるかなと思います。

――防衛について率直な心境。
里見 対局直後なので、気持ち的にはホッとしています。

――通算44期について。
里見 大変光栄なことだと思っております。

――通算44期を実際に達成しての実感は。
里見 すぐに実感はありませんが、こういった記者会見の場は実感できるところかなと思います。

――印象深いタイトル戦は。
里見 フルセットになったタイトル戦もたくさんありまして、それは記憶に強く残っています。そういう経験をさせていただけたのは、自分にとって貴重な時間だったかなと思います。

――女流王位戦の中で印象深い場面。
里見 やはり失冠したタイトル戦が印象に残っていまして、甲斐さん(智美女流五段)と渡部さん(愛女流三段)と戦わせてもらいましたけれども、自分の弱さが分かったというか、それが自分にとってよい勉強材料になると振り返ってみて思います。

Img_7455(感想戦後に揮毫した色紙を持って)

――どのような活躍を目指しているか。
里見 女流王位を獲得したことで王位戦の出場権も得ましたので、そういった棋戦でも一生懸命戦えればなと思います。

――女流棋戦が八大タイトル戦になった。第一線としてどうしていきたいか。
里見 私が女流棋士になった当初より、棋戦がいくつも増えました。非常にありがたいことだと思っています。そのうえで私自身も地力をつけつつ活躍して、女流棋界が発展していけば。それを客観視できるほどの余裕はありませんが、日々精進していきたいなと思います。

――公式戦で活躍すればプロ編入試験という選択肢も見えてくる。
里見 いまはあまり考えてはいないですね。地力をつけて、棋戦で勝てるように頑張っていきたいと思います。

――タイトル獲得について、いちばんうれしかったタイトル、自信がついたタイトル、これから先いくつ獲りたいか。
里見 うれしかったのは、パッと思い浮かぶのは初戴冠の倉敷藤花、それと女流名人を初めて獲得できたときも印象に残っています。自信については、フルセットまで戦ったタイトル戦は精神的にも成長できたのではないか。また、数値に執着することがこれまでなかったように、これからも目の前の対局に向かって頑張っていきたいです。

――これまでの歩みをどう感じているか。
里見 いろんな経験をさせていただきました。その中でひとつ励みになったのは、地元があるということです。後援会も作っていただいてますし、そういった自分の帰るべき場所があるというのはひとつの強みかなと思います。

――20代で今回の記録を達成した。プレイヤーとしていまの年齢をどう感じているか。
里見 10年前に大阪に出てきて、将棋に打ち込む環境になったわけですけれども、当時の自分よりは成長できているかなと思います。こうして結果がついてきたことはうれしく思います。より棋力向上に努めないと厳しくなっていくと思うので、そのあたりを自分なりに考えて勉強していきたいです。

――マイナビ女子オープンで西山朋佳女王が防衛し、全棋戦でタイトルに絡んでいきたいという言葉があった。脅威であったり、刺激であったり、何か意識はしているか。
里見 西山さんが女流棋士に転向されまして、前々から公式戦でも活躍されています。ほんとに刺激になりますし、頑張らないといけないなと思わされます。そういう気持ちを持ちながら日々勉強して、地力をつけていきたいです。

――清水市代女流七段の通算期数を抜いた。そのことについての心境。
里見 いまと時代や棋戦数が違いますし、比較はできないものだと思います。清水さんはその素晴らしい人間性だとか、私がすごく尊敬している先輩です。少しでもそういった部分でも成長できればと思っています。

以上で第32期女流王位戦五番勝負の全日程を終了致します。
ご観戦いただきまして、誠にありがとうございました。

(虹)

感想戦

Img_7344_e_heya01(局後インタビュー後は、すぐに感想戦に移った)

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Img_7393_e_yama01(しばらくは両者とも、疲れの色が出ていた)

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Img_7411_e_sato02(感想戦は50分ほど行われた)

(虹)

局後インタビュー

Img_7396_p01【里見女流王位】

――三度の相振り飛車。本局は早い飛車ぶつけの将棋でした。
里見 深く研究していた変化ではありませんでした。第1局のようにやるかどうか迷っていたのですけど、勢いよくいけたらなと思って指しました。

――中盤について。
里見 もっとどんどん攻めていく予定でした。でも自重してしまって。疑問手を指して、悪くなっていったかなと思います。

――先手の香打ちの攻めが鋭かったですか。
里見 そこは苦しかったです。決めにこられてもだいぶ苦しいと思っていました。

――そのあとは▲6七桂から攻めてこられました。
里見 少し意外でした。駒が入る形になって、先手玉も少し危険になったかなと。

――勝ちを意識したのは。
里見 ほんとに最後です。△7四竜と引いたところですね。

――山根女流二段とのシリーズを振り返って。
里見 相振り飛車で、自分なりに工夫して指せたかなと思います。

――通算44期となりました。
里見 光栄なことです。ただシリーズを通して見ると、よくなった局面で危うさが出たかなと感じています。

Img_7388_p02【山根女流二段】

――45手目▲7五歩で82分の長考となりました。
山根 ▲3五飛と▲3二飛を中心に考えていて、それで方針が変わってきますので。ただ考えすぎだったかなとは思います。

――中盤戦はいかがでしたか。
山根 一応駒得でしたので、カウンターを狙っていこうと思っていました。

――8筋の攻めの手応えは。
山根 寄せがあってもおかしくはないだろうな、とは思っていました。ただ97手目▲5五角とするようでは変だったかなと。角を切ったりだとか、そういう手を選んだほうがよかったかもしれません。

――▲6七桂の攻めについては、
山根 おかしくしてしまったかなと思いました。時間もなくなってきて、悪くなっていきました。

――タイトル戦はどのような舞台でしたか。
山根 結果は残念ですけど、よい経験ができました。実力不足なので、実力をつけてまたこの舞台に戻ってきたいです。

なお、感想戦の写真は、このあと場所を変えて行われる記者会見後に更新致します。

(虹)

終局直後

Img_7377_e_sato(防衛を決めた里見女流王位)

Img_7385_e_yama(敗れた山根女流二段)

Img_7366_e_heya(感想戦の前に局後インタビューが行われた)

(虹)

里見女流王位が防衛を果たす

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▲山根-△里見香戦は、150手で里見女流王位が勝ちました。終局時刻は19時ちょうど。消費時間は、▲山根3時間59分、△里見3時間44分。本局の結果、五番勝負は3連勝で里見女流王位が防衛に成功しました。女流王位3連覇を果たすとともに、歴代単独1位となる44期目のタイトルを獲得となります。

(武蔵)

手堅い指し回し

20210602_121途中で5四地点に打った角が攻防に利いています。例えば現局面から△4三角▲6一竜△同銀に▲7一角とすれば後手玉付近に手がつきますが、以下△3一香▲3五歩△同香▲同角成に△3一香で後手が押し切れると控室ではいわれています。

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(虹)

後手よし

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ここでの残り時間は▲山根18分、△里見香54分。
駒割りこそ▲銀△香の交換で先手が得をしていますが、控室では後手よしで見解が固まりました。その理由は、

・囲いの堅さの差
・先手の1七銀が使えていない
・△3三香と打てば先手玉が狭くなる

の3点が主なポイントとして挙げられています。

Img_7037_z_sato02(朝、駒箱を開く里見女流王位。防衛と記録樹立に近づいているようだ)

(虹)

旧伊藤伝右衛門邸(3)

Img_6985_i08(長い廊下と網代天井。薄く加工した竹を平面状に編んでいる)

Img_6838_i13 Img_6813_i08(長押の木彫)

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(虹)

流れが変わった

20210602_101ここまで「難解ながら先手持ち」との声が控室では多かったですが、現局面では「ひっくり返った」と豊川七段。以下△5五角▲7五桂△同竜に▲6七桂で大駒両取りを掛けても、△7四竜と引かれると先手の追撃が悩ましいようです。続く▲5五桂の角取りでは、打った桂がソッポにいくため変調とのこと。

Img_7080_z_yama01(残り時間も20分少々と切迫している山根女流二段、どう切り抜けるだろうか)

(虹)

相手に楽をさせない

20210602_94「腰の入った手です。代えて△4四竜や△6五竜の寄せ合いでは危険だと判断したのでしょう。どちらを持つかといわれれば先手ですが、先手玉もいったん手がつけば寄りやすい形ですし、また後手のほうが駒を存分に使えているとも思います」(豊川七段)

Img_7336_h1700(検討中の豊川七段)

(虹)

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