両対局者の決意表明です。
(豊島将之棋聖)
「私が淡路島に来るのは昨年の棋聖戦以来1年ぶりです。昨年の淡路島対局はよいスタートを切ることでき、そのあとは一進一退の展開でしたが、棋聖のタイトルを獲得することができました。そういった意味では今期の五番勝負も1局目の淡路島対局が非常に重要になってくるのではないかと思っています。棋聖になったあとは1年間あっという間でしたが、色々なことを経験できました。今回の棋聖戦は渡辺二冠が相手で、大変な強敵ではありますが、1年間自分が経験したことを生かし、また成長したところをファンの方に見ていただけるよう頑張りたいと思っています」
(渡辺明二冠)
「私が棋聖戦五番勝負に出場するのは第84期以来6年ぶり。この淡路島にも久しぶりに来ることができて大変うれしく思っています。私は昨日からこちらに来ているのですが、今朝は天気がよかったので洲本城を見ようと三熊山に登りました。これは『頂上決戦を前に山頂を制す』というゲン担ぎでもあったのですが、途中で蛇が出まして、皆さんは慣れているのかもしれませんが、私は東京に住んでいますので蛇に会うのは大変な出来事で、初めて悲鳴を上げました。タイトル戦の前日にそういった過ごし方ができるのも、この自然豊かな淡路島ならではかなと思いますし、非常にリラックスできました。さて、明日から棋聖戦五番勝負が始まるわけですが、豊島さんは三冠を持たれていて名実ともに将棋界の第一人者。いまの将棋界で何かしらの成果を挙げようと思えば避けては通れない相手ですので、自分なりに精一杯ぶつかっていければと思っております。豊島さんとの番勝負は初めてですので、そういった番勝負ならではの戦略性にも注目してもらえればと思います」
(書き起こし=夏芽記者、撮影=武蔵)
(武蔵)
両対局者入場後、関係者からのあいさつがありました。
(浦上雅史・淡路島棋聖戦実行委員会委員長)
「豊島棋聖におかれましては、この一年間で一挙に三冠を獲得され、将棋界の頂点に立たれました。一方、渡辺二冠におかれましては、永世竜王、永世棋王の資格を持っておられ、タイトル獲得通算22期のベテランでございます。現在、タイトルをこのように複数持っておられるのは、おふたりだけでございます。この度のおふたりの対決は将棋界の頂上戦と言っても過言ではないかと存じます。さて、私ども洲本ライオンズクラブと棋聖戦のご縁でございますが、いまから24年前、阪神淡路大震災で淡路島は大きな被害を受けました。そこで何とか淡路島に元気を取り戻そうと、地域の活性化と青少年の健全育成を目的とし、洲本ライオンズクラブが棋聖戦と取り組むことになったのがきっかけです。淡路島では震災の翌年からホテルニューアワジを棋聖戦の会場として始められ、今日に至っております。豊島棋聖、渡辺二冠におかれましては、対局を控え、お疲れのことと存じますが、お時間の許す限り、ご歓談いただけたらと存じます」
(竹内通弘・洲本市長)
「経緯に関しては先ほど浦上委員長が述べられましたので、私としましては、阪神淡路大震災の復興を期して、実行委員会の皆さま、産経新聞社さま、日本将棋連盟の方々のお陰で、この洲本市での棋聖戦が開催されますことを、心より感謝申し上げたいと思います。豊島棋聖、渡辺二冠は、今もっとも勢いのあるおふたりでございますので、この洲本市の棋聖戦第1局でどのような戦いをされるか興味深く、素晴らしい戦いをしていただけると思っております。明日は大変な対局を控えておりますが、淡路島の美味しい食材を食べていただき、洲本温泉にゆっくり浸かって鋭気を回復していただいて、明日の淡路島の棋聖戦が有意義なよい一日になることを願っております」
(安東義隆・産経新聞大阪本社編集局長)
「ご承知のように時代は平成から令和に代わり、今回は令和最初の棋聖戦ということで、またその記念すべき開演にふさわしい対局になると確信しております。豊島棋聖は若手の棋士の中では、いつタイトルを獲ってもおかしくないと言われていた実力の持ち主で、昨年、念願の初タイトルを獲得されました。対する渡辺二冠は、加藤一二三九段、谷川浩司九段、羽生善治九段に続く4人目の中学生棋士で華々しくデビューされまして、その後の活躍は皆さんご承知のとおり。永世竜王、永世棋王の資格を持ち、前年度の成績は勝率8割ということで、非常に勢いに乗っている方です。まさに頂上決戦という名にふさわしい対局になると思っております」
(脇謙二・日本将棋連盟常務理事)
「私事ではありますが、この淡路島は私の祖父母の出身地でございまして、子どもの頃はよくこちらにも参りました。素晴らしい前夜祭を催していただきまして大変感謝しております。先ほどから紹介がありましたように、絶好調の豊島棋聖に対し、絶好調の渡辺二冠が挑むという図式。この棋聖戦の結果次第では、タイトルの数が変動するかもしれません。そういう意味でも第一人者の地位をかけた戦いになると思います。将棋の内容的にも居飛車党の本格派同士、互いの深い研究がうかがえる対局になるのではないでしょうか」
(書き起こし=夏芽記者、撮影=武蔵)
(武蔵)
豊島将之棋聖(名人・王位)に渡辺明二冠(棋王・王将)が挑戦する第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(主催:産経新聞社、特別協賛:ヒューリック株式会社)は、6月4日(火)に兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で開幕します。立会人は淡路仁茂九段、副立会人は稲葉陽八段、記録係は桝田悠介三段(井上慶太九段門下)、産経新聞紙上の観戦記は東和男八段が担当します。先後は振り駒で決まります。
【将棋 - 産経ニュース】
http://www.sankei.com/life/newslist/shogi-n1.html
【ヒューリック株式会社】
https://www.hulic.co.jp/
【棋譜中継ページ】
http://live.shogi.or.jp/kisei/kifu/90/kisei201906040101.html
本局の模様は棋譜コメントを夏芽記者が、ブログを武蔵が担当します。どうぞ、よろしくお願い致します。
(武蔵)