« 2014年7月 | メイン | 2014年10月 »
羽生善治王座に豊島将之七段が挑戦する第62期王座戦五番勝負は、羽生王座の先勝で第2局を迎える。連勝で羽生王座が防衛にあと1勝とするか、若き挑戦者・豊島七段が勝ってタイに戻すか。五番勝負急所の一番は9月18日(木)、神奈川県足柄下郡箱根町「強羅環翠楼」で行われる。
立会人は大内延介九段、新聞解説は佐藤天彦七段、記録係は梶浦宏孝三段(19歳、鈴木大介八段門下)。観戦記者は英文学者の柳瀬尚紀氏。インターネット中継は棋譜・コメント入力を銀杏記者が、ブログを文が担当する。
【日本経済新聞】
http://www.nikkei.com/
【NIKKEI 将棋王国】
http://hobby.nikkei.co.jp/shogi/
【強羅環翠楼】
http://www.gourakansuirou.co.jp/
(文)
102手目△3二金の変化で、以下▲6五玉まで進めたのが4図(再掲)。
ここで△3一金の変化が難解とされたあと、豊島七段が△6四歩を示しました。羽生王座は、「なるほど、明快ですか」と反応しましたが、実際はこれまた難解な変化が待ち受けていました。
△6四歩以下、▲同金△3一金▲1四歩△2二玉▲3三銀△2三玉▲9二成桂と進めたのが8図。
先手は▲3三銀とくさびを入れ、飛車を取りました。問題はここで先手玉が詰むかどうか。当初は△7四金▲同金△同銀▲同玉△7三金▲7五玉△5七馬▲8六玉で竜の利きが強く詰まないとされましたが、しばらくして△7四桂▲9五玉△9四歩▲同玉に、△8二桂!(9図)が谷川浩司九段指摘の絶妙の桂捨て。
以下、▲8二同竜と上部を壁にしておいてから△8五銀と打てば▲9三玉に△9四金までの詰みとなります。
この変化は戻って8図に至るまでに、▲3三銀△2三玉の交換を入れなければ、▲8二同竜が逆王手になり先手の勝ちとなります。ただ▲3三銀△2三玉を入れないと先手玉が右辺に逃げ込む変化になったときに詰みが生じてしまうようです。よって▲3三銀では▲1三歩成△同香▲1一角△1二玉▲9二桂成がどうなのかとなりましたが、先手の竜と角の利きの受けが強く先手玉に詰みはなさそうなものの、反面後手は竜や角を王手で剥がしながらどこかで手を戻す順も考えられそうとのことで、はっきりとした結論は出されず感想戦は終了となりました。
以上、本局の102手目の感想戦についての補足でした。
ご観戦いただき、ありがとうございました。
第2局は9月18日(木)に神奈川県足柄下郡「強羅環翠楼」にて行われます。
(潤)
次に102手目、△6六歩に代えて△3二金の変化について。感想戦ではこの手の精査に1時間半近くに及ぶ検討がなされました。逆王手あり、開き王手あり、合い駒問題ありなど難解な変化が調べられましたが、その中から主要変化を抜粋し掲載します。
図の△3二金以下、▲8二桂成△6八銀成▲同金△7八金▲同金△同銀成▲同玉△6九角▲6七玉△5八角成▲6六玉△4六馬と進めたのが2図の局面。
羽生王座は上記手順中の△5八角成を軽視していたそうで、代えて△6五歩や△6五金と上部脱出を阻止する手を予想していたとのこと。ただこの△4六馬までが並べられ、「言われてみれば確かにこうやりますね。これでこちらの玉は寄っていそうです」と感想を述べられました。ところが豊島七段はその先を読んでいて▲3一銀△2三玉▲1五桂△同歩▲2二金△1三玉▲1四銀△同馬▲1五歩(3図)がどうなのかと。
「よく分からなかったのですが、自信が持てませんでした」と豊島七段は△3二金を見送った理由をここで述べましたが、羽生王座は「ここで手を渡すのは何となくですが負けのパターンのような気がします」と自身の感覚を述べ、さらにこの先が調べられました。
▲1五歩以下、△6五歩▲7五玉△7四歩▲同玉△8五銀▲6五玉と進めたのが4図。なお▲7五玉で▲6五同玉は△5三桂以下寄りです。
4図で(1)△3一金と、(2)△6四歩が調べられました。まず、(1)△3一金ですが、以下▲1四歩△2二玉▲1三歩成△同香▲1一角△1二玉▲3一竜△7四銀(5図)までが並べられました。
この△7四銀は観戦記担当で詰将棋作家でもある若島正氏が示した一手。対して▲同玉は△6二桂が捨て駒の第二弾で▲同金△7三金以下先手玉は寄り。、この辺りはいかにも詰将棋作家らしい読みを披露されました。
△7四銀以下は▲5四玉△6三銀▲同玉△6二金▲同玉△8二飛▲7二金△7三銀▲5一玉△5二金▲同玉△7二飛(6図)で、「合駒が悪いのがずっと祟りますね」と羽生王座。以下▲4一玉△4二金▲同竜△同飛▲同玉△6四馬▲5三金(7図)で難解が結論。なお最後の▲5三金で▲5三銀は、△同馬▲同玉△4一桂で先手玉は寄り筋です。
△6四歩については次項で。
(潤)
王座戦第1局の棋譜・コメント欄の中継を担当しました潤です。
感想戦の内容を棋譜・コメント欄に掲載しましたが、102手目の内容はあまりにも長手数に及ぶ変化でしたので、このブログ欄にて図面を使って再掲、補足させていただきます。
図は101手目に羽生王座が▲8一飛成と桂を取った局面。ここで豊島七段が指した△6六歩が敗着となりました。代えて△7一歩と△3二金が有力だったようで、特に△3二金は難解かつ多岐にわたる膨大な変化が潜んでおり、感想戦でもはっきりした結論は出されませんでした。まずは△7一歩の変化を見ていきます。
△7一歩以下▲8二桂成は△9四飛で後手よし。このあと▲9五歩から飛車を取りに行ったとき、△6八銀成▲同金△6七歩が△7九角以下の詰めろになるのがその理由です。
よって▲5三金としますが、以下△8五桂▲9二竜△同香▲6二飛△2三玉▲2二銀△2五歩▲同歩△同馬▲2六歩(1図)までが並べられ、しばしの沈黙のあと、「ちょっと自信がないですかね」と豊島七段は感想を述べました。
(潤)
本日はご観戦いただき、ありがとうございました。
第2局は9月18日(木)に神奈川県足柄下郡「強羅環翠楼」にて行われます。
(翔)