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2025年10月28日 (火)

記者会見

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――自身初の二冠となった。改めて思うことは。
伊藤 まだまだ実感がわかないといいますか、信じられない気持ちです。
――藤井六冠と1年ぶりの対戦だった。印象について。
伊藤 藤井さんは一手一手の指し手の精度が高い印象。ほとんど悪い手を指してこられないので、こちらもしっかり一手の緩みもなく指していかないと勝負するのは難しい印象でした。
――終盤で競り勝った場面が多かった。手応えはあるか。
伊藤 第2局はかなり苦しい局面が多くて、その将棋を拾うことができたのは非常に大きかったと感じています。藤井さん相手にリードして押し切る将棋が指せていなかったので、その点で第3局や第5局は充実した将棋が指せたと感じています。
――藤井六冠とはライバルと呼ばれてきた。距離感についてはどうか。
伊藤 藤井さんと番勝負で対戦するにあたってはシリーズを盛り上げる気持ちが大きくて、第1局はよくない内容だったので、そこから徐々に内容を上げることができたのは非常によかったと感じています。ここ最近は自分自身も充実した時間を過ごすことができたと感じていますし、今後もさらに内容を向上させていく意欲を持って臨むことができるかなと感じています。(ライバルと)呼んでいただけるのは光栄なことだと思いますし、ほかの棋戦も含めて藤井さんに挑戦してよい将棋を見せられればと思っています。

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――藤井さんに10連敗していた時期もあったが、最近は勝ち越している。何か違いは感じるか。
伊藤 内容を見ると逆転勝ちもあって、結果については幸運だったのかなと感じています。ここ数ヵ月は叡王戦を防衛して以降、非常によい状態で将棋に臨むことができていると感じているので、今回のシリーズではそういう部分を出すことができたのかなと思っています。
――本局は相掛かりになった。作戦選択について。
伊藤 最近は相掛かりが興味深い戦型というか、相掛かりの中でもいろいろとやってみたい局面があったので、第3局や第5局で実際に指すことができて、一局を通してそれなりの精度で指すことができたかなと感じています。そこは非常に満足している部分ではあります。

――本局は今まで見たことがないような指し手が象徴的だった。対局のクオリティについて感じるものはあるか。
伊藤 相掛かりは中盤以降お互いに最善を突き詰めると派手な応酬が見られるケースがよくある戦型と感じていて、自分としても一つの魅力というか、面白いところと感じていて、本局もそういう局面を指すことができて、よい経験になったかなと感じています。
――昨年の叡王戦は「幸運」という言葉をよく使っていた。今回は「充実」という言葉をよく聞く。心境の違いはあるか。
伊藤 藤井さんとのタイトル戦は久々だったんですが、最近は自身の棋力を向上させることに対する意欲が高まっている状態だと思っていて、まだまだ強くなる余地があると感じていて、自分が強くなっていくことに対する楽しみが大きい。今回のシリーズはよいモチベーションで臨むことができたと思います。

――藤井六冠は伊藤二冠と読みが合わないとおっしゃっていた。藤井六冠と読み筋の違いについて感じるか。
伊藤 読みが合う部分も異なっている部分もあると思うんですけども、自分自身は割と受け将棋といわれることが多くて、強く踏み込まれる手を軽視してしまう部分もあったと思うので、そういうところを藤井さんと対局することで修正していけたらいいかなと感じています。
――棋風の違いはどう感じているか。
伊藤 藤井さんは直線的な順での深い読みが強みという印象で、私には足りない部分と感じているので、藤井さんと対戦することでそういう部分も吸収していけるのかなと感じています。

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――九段に昇段されて師匠の段位を超えた。叡王を獲得されたときは「師匠に並んだ」と報告したそうだが、今回はどう報告するか。
伊藤 まだ考えてはいないんですけど(笑)、九段昇段はかなりハードルが高いことだと思っていたので、こんなに早く昇段できるとはという思いが強いですし、段位とか関係なく師匠は偉大な存在ですので、そこに関しては揺るがないところかなと思います。

――1日制でタイトルを2つ取った。藤井さんと2日制のタイトルを戦いたいと思うか。
伊藤 もちろん2日制のタイトル戦を戦いたい気持ちは強くありますし、2日制ですと一手一手の重みが増してくると思いますので、さらに読みの精度を増していく必要があると思います。

――常磐ホテルは叡王も獲得した場所。気持ちのうえでアドバンテージはあったか。
伊藤 昨年も叡王戦の最終局で対局させていただき、素晴らしい旅館という印象を持ちました。もう一度うかがいたいという思いがありましたし、普段以上の力を出すことができたと感じています。
――師匠と家族以外で報告したい相手は。
伊藤 たくさんの方に応援していただいていることを感じていますし、ちょうど2日前にもこども大会にうかがったんですが、たくさんの応援をいただいたので、応援していただいている方に感謝を伝えたいと思います。

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(文)

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