■羽生善治王座
――1二香型がどうかという将棋だったと思うのですが、△4五飛(68手目)と回った局面はいかがでしたか。
羽生 いや、怖いところだったんですけども、ただ途中からはこの変化やるしかないんじゃないかという……あんまり成算があったわけではないんですが。
――▲4五同飛の変化については?
羽生 あ、それもあると思って。まあこっちは千日手になればいいかなという感じで。ごちゃごちゃ食いついて、ということになるかと。
――形勢がいいと思った局面はどこでしょうか。
羽生 うーん……。まあ、△5五桂(94手目)と打ったところはなんかちょっと感じがいいんじゃないかと思ったんですけども、ただ怖い形なので、はっきりはしていないのかなと。
■豊島将之七段
――△4五飛の局面はいかがでしたか。
豊島 難しいかなと思っていたんですが……。
――▲2四桂(71手目)と打ったあたりから調子がいいようにも思えたのですが。
豊島 うーん、そうですね、ちょっとわからなかったです。
――金を取って▲6八金打(75手目)と打ったあたりは。
豊島 難しいかなと思ったんですが、そのあと自信がなかったので、金埋めたあたりがあまりよくなかったかもしれないですね。
(文)
羽生善治王座に豊島将之七段が挑戦する第62期王座戦五番勝負第2局は21時8分、108手で羽生王座の勝ちとなりました。消費時間は▲豊島4時間55 分、△羽生4時間19分。羽生王座が2連勝。王座防衛にあと1勝としました。第3局は9月30日に宮城県仙台市「茶寮宗園」で行われます。
(銀杏)
羽生王座は△6八銀(図)と金を攻める。後手の攻め駒が多いので、とても受けきれる攻めではない。控室ではここから▲4四桂△同銀▲2五飛(A図)が調べられた。桂を捨てて飛車を使う勝負手だ。
次に▲2三銀と打ち込めば、△3一玉は▲3二銀成△同玉▲2三歩成△4一玉▲3二と△5二玉▲4一角(B図)以下の頓死筋がある。
手順中▲3二とに△同玉は▲1四角△4二玉▲2二飛成。このとき▲4四桂と捨てて銀を動かした効果が出ている。
だが、▲2三銀には△1三玉(C図)が絶妙のしのぎ。打ち歩詰めに誘導している。C図以下▲1五飛は△2四玉で不詰。これは▲4四桂△同銀の交換が不利に働いている(▲1四銀成のときに逃げ道ができている)。
19時になり対局再開。羽生王座は△6五桂(図)と銀に狙いをつけた。シンプルな攻めだが、金を1枚失って弱体化した先手陣には響きが大きい。豊島七段はすぐに▲7八金と金を埋めて徹底抗戦。控室では「つらい受け」との声が出ている。
18時、豊島七段が▲6八歩と受けた局面で夕食休憩に入った。「ここでスパッと決める手があるかどうかですね。あるならもっとポイントを稼ぎたい局面です」と佐藤天七段。昼食休憩明けからここまでの流れを、佐藤天七段に振り返ってもらった。
「▲4五歩は大きな方針を決めた手です。▲6五歩だと一時的に受けに回ることになるので、そうではなく、この一瞬で激しく攻めて、後手の1二香型をとがめようという展開ですね」
「△4五飛には▲同飛△同銀▲2四桂で激しくいく順もありましたが、どのような終盤になるのか不透明です。本譜の順とは分岐点でした」
「△6九銀のときに、▲6六銀が利いたかどうかはひとつポイントだと思います。というのも、本譜の▲3二桂成があまり利いていないからです」
「△3三銀と引いた形は後手陣が引き締まっていて、2筋と1筋も広い。後手に楽しみの多い展開になりました」