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2025年10月

2025年10月29日 (水)

一夜明け会見

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――一夜明けての心境について。
伊藤 王座戦をフルセットまで戦うことができていろいろと課題が見えましたけど、自分のよいところも出せたので、充実した時間を過ごせたと感じています。
――フルセットで意識しているところは。
伊藤 タイトル戦は1局ごとにいろいろな対局場で指させていただけるので、なるべく1局でも多く指すのが理想かなと思っています。もちろん2勝1敗で迎えた時点では勝ちを目指していましたが、フルセットまで対局できるのはよいことかと感じていました。フルセットで指せる環境に喜びを感じながら指していました。
――過密日程について。
伊藤 第4局と第5局の間にもたくさんの対局を指して、あまりよくない手を指してしまう将棋もありましたが、たくさん対局を重ねていく中で非常に成長できた部分もあると感じています。たくさん対局を重ねたことで、よい状態で臨むことができたと感じています。
――今期の王座戦で印象に残ったことは。
伊藤 シンガポールで指せたのは貴重な経験として残っていて、将棋としては悔いが残った部分もありましたが、観光する時間もあって楽しめたと思います。
――1日制と2日制の違いについて、得意・不得意はあるか。
伊藤 2日制の対局は竜王戦しか経験がなく、そのときは熱戦にできなかった。自分としては持ち時間が長いほど、精度の高い将棋を指すことができると思っています。時間が長い設定を生かして、よい将棋を指せればいいかなと思っています。

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――終盤の自己評価や藤井さんとの違いについて。
伊藤 自分自身は中盤戦に課題があると感じていて、苦しい状態で終盤を迎えるケースが多い。終盤で形勢がよくても勝ちきるのは大変だと感じます。形勢が苦しい中でも最善を尽くして指し続けるのが、ここ最近は結果に出ているのかなと思います。はっきりとはわからない部分もあるんですが、藤井さんは読みが深くて、直線の順に入ってしまうと読みきられるので、なるべくそういう順には持ち込まれないように辛抱強く指す必要があると感じています。

――お祝いの声があったと思う。印象に残るやり取りがあれば。
伊藤 たくさんの方にお祝いの言葉をいただけて、家族や応援していただいている方、棋士仲間などからもいただいて、ありがたいなと感じています。師匠とはやり取りができていないので、これからご報告できればと思います。
――趣味は将棋というお話があったが、やってみたいことは何か。
伊藤 趣味としてはフェアリー詰将棋という変則的な詰将棋を解くのが、一つの趣味で、対局が終わったあとにそういう詰将棋を考えるのが息抜きとして楽しみになっています。フェアリー詰将棋は普通の詰将棋に違うルールが加わったもので、例えば攻め方と受け方が協力して詰ますルールがあります。
――順位戦B級1組で単独首位を走っている。抱負は。
伊藤 順位戦は名人を目指していく戦いで、A級までいかないと挑戦権を争えない。名人は特別で憧れもあります。A級昇級を目指して、長い戦いではありますが、一局一局頑張りたいと思います。

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――叡王奪取のときに「藤井さんに引き上げてもらった」というお話をされていた。藤井さんの背中を捉えた感覚はあるか。
伊藤 藤井さんに初めて挑戦した頃はなかなか競り合いに持ち込めなかった。そこから叡王戦や王座戦を経て、徐々に内容がよくなっているのかなと感じています。特に今回のシリーズでは第3局と第5局が、これまでの対藤井戦ではできなかった将棋が指せて、自信にもつながる部分かなと思います。最近はある程度よい勝負をできているんじゃないかなという感覚があります。

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2025年10月28日 (火)

記者会見

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――自身初の二冠となった。改めて思うことは。
伊藤 まだまだ実感がわかないといいますか、信じられない気持ちです。
――藤井六冠と1年ぶりの対戦だった。印象について。
伊藤 藤井さんは一手一手の指し手の精度が高い印象。ほとんど悪い手を指してこられないので、こちらもしっかり一手の緩みもなく指していかないと勝負するのは難しい印象でした。
――終盤で競り勝った場面が多かった。手応えはあるか。
伊藤 第2局はかなり苦しい局面が多くて、その将棋を拾うことができたのは非常に大きかったと感じています。藤井さん相手にリードして押し切る将棋が指せていなかったので、その点で第3局や第5局は充実した将棋が指せたと感じています。
――藤井六冠とはライバルと呼ばれてきた。距離感についてはどうか。
伊藤 藤井さんと番勝負で対戦するにあたってはシリーズを盛り上げる気持ちが大きくて、第1局はよくない内容だったので、そこから徐々に内容を上げることができたのは非常によかったと感じています。ここ最近は自分自身も充実した時間を過ごすことができたと感じていますし、今後もさらに内容を向上させていく意欲を持って臨むことができるかなと感じています。(ライバルと)呼んでいただけるのは光栄なことだと思いますし、ほかの棋戦も含めて藤井さんに挑戦してよい将棋を見せられればと思っています。

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――藤井さんに10連敗していた時期もあったが、最近は勝ち越している。何か違いは感じるか。
伊藤 内容を見ると逆転勝ちもあって、結果については幸運だったのかなと感じています。ここ数ヵ月は叡王戦を防衛して以降、非常によい状態で将棋に臨むことができていると感じているので、今回のシリーズではそういう部分を出すことができたのかなと思っています。
――本局は相掛かりになった。作戦選択について。
伊藤 最近は相掛かりが興味深い戦型というか、相掛かりの中でもいろいろとやってみたい局面があったので、第3局や第5局で実際に指すことができて、一局を通してそれなりの精度で指すことができたかなと感じています。そこは非常に満足している部分ではあります。

――本局は今まで見たことがないような指し手が象徴的だった。対局のクオリティについて感じるものはあるか。
伊藤 相掛かりは中盤以降お互いに最善を突き詰めると派手な応酬が見られるケースがよくある戦型と感じていて、自分としても一つの魅力というか、面白いところと感じていて、本局もそういう局面を指すことができて、よい経験になったかなと感じています。
――昨年の叡王戦は「幸運」という言葉をよく使っていた。今回は「充実」という言葉をよく聞く。心境の違いはあるか。
伊藤 藤井さんとのタイトル戦は久々だったんですが、最近は自身の棋力を向上させることに対する意欲が高まっている状態だと思っていて、まだまだ強くなる余地があると感じていて、自分が強くなっていくことに対する楽しみが大きい。今回のシリーズはよいモチベーションで臨むことができたと思います。

――藤井六冠は伊藤二冠と読みが合わないとおっしゃっていた。藤井六冠と読み筋の違いについて感じるか。
伊藤 読みが合う部分も異なっている部分もあると思うんですけども、自分自身は割と受け将棋といわれることが多くて、強く踏み込まれる手を軽視してしまう部分もあったと思うので、そういうところを藤井さんと対局することで修正していけたらいいかなと感じています。
――棋風の違いはどう感じているか。
伊藤 藤井さんは直線的な順での深い読みが強みという印象で、私には足りない部分と感じているので、藤井さんと対戦することでそういう部分も吸収していけるのかなと感じています。

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――九段に昇段されて師匠の段位を超えた。叡王を獲得されたときは「師匠に並んだ」と報告したそうだが、今回はどう報告するか。
伊藤 まだ考えてはいないんですけど(笑)、九段昇段はかなりハードルが高いことだと思っていたので、こんなに早く昇段できるとはという思いが強いですし、段位とか関係なく師匠は偉大な存在ですので、そこに関しては揺るがないところかなと思います。

――1日制でタイトルを2つ取った。藤井さんと2日制のタイトルを戦いたいと思うか。
伊藤 もちろん2日制のタイトル戦を戦いたい気持ちは強くありますし、2日制ですと一手一手の重みが増してくると思いますので、さらに読みの精度を増していく必要があると思います。

――常磐ホテルは叡王も獲得した場所。気持ちのうえでアドバンテージはあったか。
伊藤 昨年も叡王戦の最終局で対局させていただき、素晴らしい旅館という印象を持ちました。もう一度うかがいたいという思いがありましたし、普段以上の力を出すことができたと感じています。
――師匠と家族以外で報告したい相手は。
伊藤 たくさんの方に応援していただいていることを感じていますし、ちょうど2日前にもこども大会にうかがったんですが、たくさんの応援をいただいたので、応援していただいている方に感謝を伝えたいと思います。

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感想戦

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大盤解説会で振り返る

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終局直後

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――序盤はどのように見ていたか。
伊藤 ▲8六飛(33手目)とぶつける手を指してみたかったんですけど、手が広い局面が続くのかなと思っていて、その中でも本譜△7三桂(38手目)からかなり激しい展開になって、難しい局面が続いたと感じています。
――中盤は先手が押しているという評判だった。
伊藤 よくわからないまま指していました。▲5四歩(55手目)に手抜いて△9七歩成から攻め合われる変化もわからなかったですし。本譜は▲5三歩(57手目)が入って、少し手段がありそうな気もしたんですが、難しいのかなと感じていました。
――どのあたりで勝ちを意識したか。
伊藤 最後までまったくわかっていなかったんですが……。▲5七銀上(83手目)の局面でかなり怖いですが、具体的にどうされるかわからなかったので、そのあたりはもしかしたら指せていたのかな、という気がします。
――シリーズ全体を振り返って。
伊藤 第1局はあまり内容がよくなかったんですが、そこから徐々に内容をよくしていくことができたのかなと感じています。最後もフルセットになりましたけども、最終局も終盤まで難しい将棋が指せたかなと思うので、充実したシリーズになったかなと思います。
――王座獲得と二冠獲得について。
伊藤 まだまだ実感がわかないところですけども、ここ最近はよい状態で対局に臨むことができたかなと思うので、その中で一つ結果を出すことができてよかったと思います。
――同世代の藤井王座と戦って六冠対二冠になった。
伊藤 藤井さんとのタイトル戦は1年以上間があいていて、どのような戦いができるか不安もあったんですが、結果的に熱戦のよいシリーズにできたのでうれしく思っています。

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――本局を振り返って。
藤井 ▲3七銀(37手目)から▲4六銀(39手目)と出られてこちらが何か動いていかなくてはいけない形になったかなと思ったんですけど、そこでいい手の組み合わせがわからなくて。本譜▲7七桂(51手目)までいくとうまく切り返された気がして、ちょっと苦しい形になってしまったかなと。攻め方で工夫のいるところだったという気がします。
――シリーズ全体を振り返って。
藤井 全体的に終盤戦で競り負ける形になってしまったと思うので、実力不足だったと感じています。
――2度目の失冠になった。
藤井 実力が足りなかったということだと思うので、少しずつ力をつけていくしかないのかなと思います。

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伊藤叡王が勝って、王座獲得

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▲伊藤匠-△藤井聡戦は、97手で伊藤叡王が勝ちました。終局時刻は20時34分。消費時間は▲伊藤叡王5時間0分、△藤井王座5時間0分(持ち時間は各5時間、チェスクロック使用)。
伊藤叡王は3勝2敗で、王座獲得となりました。また、タイトル獲得3期による昇段規定で、九段昇段を決めました。

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決めに出た

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伊藤叡王、27分の熟考で▲5二銀(71手目)と打ち込みました。着実な路線で指すなら▲2三飛成もあったところ。厳しく迫って決めに出た手です。以下△同金寄▲同歩成△同金に▲5三歩が痛打。急所はどこまでいっても急所という手で、藤井王座にとっては5筋の歩を切ってしまったことが大きく響く展開になりました。

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藤井王座も△5六桂と反撃しますが、と金に近い位置をキープする▲6九玉(77手目)が好判断。やはり△7八とは▲同玉で逃がしてしまうのが痛く、なかなか包囲網が築けません。

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両者残り1時間を切る

藤井王座と伊藤叡王、ともに残り1時間を切っています。複雑な終盤戦とあって控室の検討も熱が入っていますが、なかなか明快な結論は出ません。検討陣から「大変だ」「難しい」という声が漏れます。飯島八段は「疲れてきました」と目をこすりました。9時の対局開始から約10時間が経過し、対局者の疲労も蓄積しているものと思われますが、まだまだ難所は続きます。気が抜けません。

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すさまじい応酬

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夕食休憩明けに手が進みました。反動を利用した▲6六金(59手目)で飛車が捕まっています。以下△9七歩成▲7六金△8八と▲8四桂と進みます。

2025102863すさまじい応酬になりました。飛車と角香の取り合いだけでも目が回りそうですが、さらに玉に近いと金を放置して▲8四桂(63手目)とは恐ろしい攻め合いです。王手で△7八とと金を取られて大損のようでも、▲同玉で意外に先手玉が安定しているのが主張。格言に「終盤は駒の損得より速度」とありますが、そうはいっても、という驚きの手順です。大盤解説会の藤井猛九段は「えーっ!」と驚きの声を上げ、「すごみのある手ですね。私が向こう(後手側)に座っていたら、『読み切られたか』と思ってしまう」と話していました。時間を使っていた藤井王座、取れる金を取らずに△7三銀とかわしました。まさに異次元の手順。控室がどよめいています。

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夕食休憩

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17時、藤井王座が24分使って夕食休憩に入りました。消費時間は▲伊藤叡王3時間35分、△藤井王座3時間34分。夕食は藤井王座が天ぷらそば御膳(冷)、伊藤叡王がハヤシライスを注文しました。藤井王座の要望により、セットのおにぎりと小鉢はなし。天ぷらはサツマイモ、茄子、シシトウ、エビ2本。ハヤシライスには甲州牛をふんだんに使い、地元勝沼産の赤ワインが隠し味。サービスでみたらし団子と生信玄餅が出されています。対局は17時30分に再開されます。

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