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第57期王座戦五番勝負第3局

2009年9月25日 (金)

ご観戦ありがとうございました

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(第57期王座戦五番勝負は、羽生善治王座の3連勝で幕を閉じました。ご観戦いただき、ありがとうございました)

自宅観戦棋士の総括

【王座戦第3局の総括】

序盤から終盤まで、大変見応えのある将棋でした。特に印象に残った手は、△3三銀(40手目)、▲1六歩(45手目)、△2九竜(60手目)の3手です。
まず△3三銀。この新手を用意してこの対局に臨んでいた事に、強い衝撃を受けました。この手の成否は、新山崎流の根幹に関わる大きなものです。
次に▲1六歩。相手が角を切ってきそうな局面で、あの大胆な歩突きは、恐らく山崎七段しか指せないでしょう。強烈な個性を感じました。
最後は△2九竜。3八の歩が銀取りに当たっている局面で、竜を2九に入る手は相当気がつきにくく、羽生王座の柔軟な思考に驚かされました。最後の寄せも正確無比でしたね。(中座真七段)

横歩取りから羽生王座が、いきなり終盤になだれ込む激しい変化に誘導した感じの将棋でした。前例を離れてからも、比較的指し手が早かったのに目を見張りました。
具体的には、39手目▲2三歩に対する△3三銀と、41手目▲8五飛に対する△4四銀です。特に△4四銀が印象に残っています。直後の▲3三歩が見えているだけに、相当深い研究がなければ指せない一手と言えるでしょう。
山崎七段の手では、切ってこいの▲1六歩に驚かされました。夕休直後は難しくなったと思ったのですが、いつもながら、羽生王座の終盤、寄せはしなやかですね。ただただ感服するばかりでした。(伊藤能五段)

(烏)

インタビュー

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羽生王座が駒を片付け第57期王座戦は幕を閉じた。

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囲碁将棋ジャーナルのインタビューに答える羽生王座。
「今シリーズは接戦の将棋が多く、第2局は負けだったのでツキがありました。1日制の5時間の将棋は相性が良いのでしょうね。指し慣れていると言うことはあると思います。5期連続ストレート防衛については気がついていませんでした」

(吟)

大盤解説会での感想戦

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大盤解説場での感想戦では、まずこの場面が再現されました。▲2二歩成△同金▲8一飛成△2九飛▲2六歩、また単に▲1六歩が有力だったようです。

羽生「最後の▲2六歩が味の良い手で、桂を守りつつ、△同角ですと…」
山崎「そうですね、後で▲1六歩と催促する必要が無くなります。本譜は一番悪いタイミングで▲1六歩と突いてしまった。突くなら図ですぐに▲1六歩でしたか」
羽生「▲1六歩には…切るしかないですね。△4八角成▲同玉…意外に先手玉に迫る筋が難しい。△2九飛▲3九歩…ええ、これは自信がないです。△2八飛成には▲5九玉で堅いです」
山崎「こちらはいいところで▲6五桂と跳ね、玉を左に逃がしていく感じになりますね。本譜は図ですぐに▲6五桂。1局目で角が使えなくて負かされたので、桂を使う手に悪い手は無いだろうと思ったんですが…。実は△4四銀と上がった局面は指せるんじゃないかと思っていました。以前に考えたことがあって、確か先手が良いという結論だったのに、その順を忘れてしまって。あれー?どうだったかなぁって。▲3三歩だったような気がするのですが、その後が…」
羽生「▲3三歩には△2三金と…逃げますよね。」
山崎「そこで▲1六歩と突くか、▲6五桂と跳ねるか…」
羽生「▲1六歩には△4八角成▲同玉△3三桂▲同桂不成△同金…」
山崎「ええ、難しいんですよね。△4四銀の局面は、有力な手が何個もあったところで、▲6五桂を選んでしまった。角を働かせる手に悪手なしと思ったのですが、△2九飛と打たれて…これは安易に指してしまったかなと。△2九飛には▲8一飛成のつもりだったけれど、嫌な手がいくつも見えてしまって。しかし本譜の▲1六歩のタイミングは一番良くなかったです」

(烏)

感想戦

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王座戦では、ここ5年で1度も負けていない羽生王座。ストレート防衛を続け、無敵の王座として君臨する。

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「予定変更を繰り返してしまったのがちょっと・・・内容的に悔いが残りました。力負けのシリーズでした」と振り返った山崎七段。

228

大盤解説会場から戻り、感想戦が行われた。関係者や報道陣が多いためか対局室の温度は急上昇した。

(吟)

終局直後の両対局者

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防衛直後の羽生王座。18連覇の感想を聞かれると、「まだ実感が沸かないです。せっかくの記録なので大事にしたい」と語った。

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終局直後、大盤解説会場に両対局者が姿を見せると大きな拍手につつまれた。

(吟)

羽生王座が勝って18連覇達成

78ouza20090925 王座戦第3局は、78手まで羽生王座の勝ちとなりました。終局20時59分、消費時間は山崎4時間39分、羽生4時間38分。
羽生王座は3勝0敗のストレートで防衛を決め、王座戦18連覇を達成しました。

(烏)

中原名誉王座の見解(3)

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中原名誉王座の見解
「羽生王座が勝勢ですね。後手の駒得が大きく、これはハッキリしました。▲8五桂と成るために打った桂が成れないのでは辛いですね。△2九竜が気がつきにくい好手です。先手は▲2二歩成をもっと早く入れるべきだったと思います」(高野五段)。

(吟)

催促の△8四歩

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△8四歩と羽生王座が打った歩が控え室では評判がいい。▲7三桂左成から△同銀▲同桂成と清算するのは、後手からの△6五桂が厳しい。▲8四同竜とするのは攻めの竜を引かされるだけに先手は辛いか。

(吟)

東京の大盤解説会

東京・将棋会館2階研修室では19時から大盤解説会が行われています。

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(多くのお客さんが訪れ、片上六段の解説に耳を傾けている。解説は片上大輔六段、聞き手は甲斐智美女流二段)

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(熱弁ふるう片上六段(左)と聞き手の甲斐女流二段)

「手数は短いですが、内容の濃い将棋ですね」と片上六段。

(銀杏)

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