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2023年10月12日 (木)

一夜明け会見

藤井王座の八冠達成から一夜が明け、改めて会見が行われました。まずは花束贈呈から。

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1ya04 (フォトセッション。両手で八冠の8を表す)

1ya05 (昨夜同様、会見は着席して)

――昨晩の過ごし方は。

藤井 終局も遅かったので、部屋に戻ったあとに軽く対局を振り返って、という感じでした。

――よく眠れたか。

藤井 いろいろ考えてしまったところもあったのですが、それなりに普段どおりに寝られたかなと思います。

――師匠や家族からのお祝いのメッセージや連絡は。

藤井 はい、家族からは。師匠は恐らくお忙しいかと思うので、まだ特にご連絡はないのですが、こちらのほうから報告を入れようと思います。

――一夜明けて、改めて八冠の重みや感慨は。

藤井 今回の王座戦で八冠に挑戦できるのは、すごく貴重な機会と思っていましたし、それを達成できたのは、なかなか実感が湧かないのが正直なところです。うれしい気持ちとともに、これまで以上に将棋の内容でも細かいレベルのものが要求されると思っています。

――21歳になり、今後のピークはどのあたりを想定して取り組むのか。

藤井 まだまだ改善の余地は多いと思っているのですが、10代の頃と違って何か意識的に取り組んでいかないと、棋力を伸ばしていくのがどんどん難しくなっていっているのが私の目からも感じています。なので、どうすれば実力を高めていけるのかは、しっかり考えていきたいと思っています。

1ya07_2

――八冠をどの期間、維持していきたいといった目標はあるか。

藤井 目標といわれるとまったく考えていないのですが(笑)。いまも竜王戦も始まっていますし、これからの番勝負をできる限り、よい内容のものにしたいと思っています。

――デビューからこれまでの成長を振り返って。

藤井 プロデビューからだと、タイトルに挑戦するまではある程度の時間がかかったかとは思っているのですが、それ以降のタイトル戦では自分の実力以上の結果が出ているというのが正直なところで、これからは結果に見合うだけの実力を求められると思っています。

――完全に追われる立場になった。戦い方は変わるか。

藤井 そうですね(笑)。ただ、将棋は盤を挟んでしまえば立場の違いなどもまったくないので、その点はこれまでと変わらない気持ちでもいいのかなと思っています。

1ya12 ――どうして独りだけこれほど勝ち続けられるのか。これほど強いのか。

藤井 この王座戦に関していうと第3局と第4局は全体を通しても非常に苦しい将棋で、逆のスコアでも、まったくおかしくなかったと思っています。そのことについては幸運だったと思っています。運はどちらに出ることもあるので、そうではなく、もっと実力が必要だと感じることが多いシリーズだったと思っています。

――昨日一日、対局室はどのような環境だったか。また、八冠の偉業をこの京都で達成したことに何か感じるものがあれば。

藤井 私自身はこちらで対局をさせていただくのは昨日が初めてだったのですが、対局室はすごく静かで、素晴らしい環境のところで集中して対局できたと思っています。京都での対局は他棋戦を含めると仁和寺さんなど何回か経験をさせていただいているので、私自身もなじみ深く、そういったところで達成したこともうれしく思っています。

――現在の心境を何と揮毫するか。

藤井 すみません、それはまだ考えていないのですが、恐らくどこかで(記念)扇子が出るかと思いますので、それをお待ちいただければと思います。

1ya09(笑顔を見せることも)

――今回、自身へのご褒美は。

藤井 私自身は勝ったときに何かご褒美をということは、実はあまり考えていません。勝ったときも負けたときも変わらずモチベーションを保つことが大事なので、むしろ負けたときにどう気分をよくするかは意識しています。なので、今回も何かご褒美をということはなく、この王座戦をしっかり振り返って、また前に進んでいけたらと思っています。

――劣勢の場面で幸運を引き寄せる力はあると考える。そういう場面で心がけていることは。

藤井 局面が苦しいときは、そのまま自然に進めてもさらに苦しくなってしまうので、なるべく相手玉に少しでも迫る形を作って、何とか複雑にできればということを考えて指していました。

以上で第71期王座戦の中継を終了します。

1ya11(すでに一次予選の始まっている第72期も、どうぞよろしく。お楽しみに)

(飛龍)

記者会見

記者会見の内容を一部抜粋します。Kaiken01(藤井新王座登壇)

Kaiken02 (八冠の色紙を手にフォトセッション)

Kaiken04 (記者会見は着座して)

――八冠達成のいまの率直な感想は。

藤井 このような結果を自分自身も残せるとは思っていませんでしたので、うれしく思っています。一方で今回のシリーズは本当に苦しい将棋が多かったですし、実力としてまだまだ足りないところが多いと相変わらず感じていますので、その地位に見合った実力をつけられるように、今後いっそう取り組んでいかなくてはいけないと思っています。

――八冠の達成感や充実感は。

藤井 今日の達成はすごくうれしいことではあるのです。ただ、ずっとそれを目標にしていたというわけではないので、これからも変わらず取り組んでいきたいと思いますし、今回の王座戦の経験を今後の糧にもできたらと思っています。

――全冠制覇は羽生善治九段以来。並び立つことができたと思うか。

藤井 全冠制覇はチャレンジできる機会が今後、なかなかこないと思っていたので、今回達成できたことはすごくうれしいです。全冠制覇という点では羽生先生の記録と並ぶことはできたといえるかとは思うのですが、羽生先生の場合はそのあともずっとトップのプレーヤーとして活躍しておられるので、自身もそういった今後も息長く活躍できることをひとつ目指してやっていけたらと思います。

――今シリーズの内容については。

藤井 今回のシリーズはどれも難しい将棋だったと思うのですが、特に第3局と本局はどちらも終盤でハッキリ負けという局面がありましたので、本当に逆のスコアでもまったくおかしくなかったと思います。そういう点でも幸運な結果だったと思っています。

――シリーズを戦ってみて、改めて感じた永瀬前王座の強さについて。

藤井 どの対局でも準備をされて臨まれていると感じましたし、それを離れた中盤以降でも的確に指されることがすごく多かったので、永瀬王座の強さを感じるところが多かったです。勉強になったシリーズだったと思っています。

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――八冠達成により、タイトル戦では予選やリーグなどを戦うことがなくなる。対して具体的にどのような勉強法でモチベーションを保っていこうとするのか。

藤井 今回のシリーズでいろいろ足りないところがあると感じたので、まずはそこを改善して、これまでと変わらず実力を高めていくことを目指していきたいと思っています。ただ、どうしても時季によって対局数に偏りができてしまうこともあるかと思うので、そのあたりをどう補っていくかは今後、取り組んでいくうえで考えたいと思います。

――歴代最強と評される棋士もいる。その点について。

藤井 特に時代の違う方との比較は一概にできないので、そういっていただけるのはうれしいことではあるのですが、自分自身は「そうではない」かなと思っています。また、ほかの方の将棋を見ていても勉強になることはすごく多いので、今後もそういったところから学んでいけたらと思っています。

――今後、棋士として目標は。また、棋士としてのゴールはどのように考えているか。

藤井 まずは実力をつけること。そのうえで面白い将棋を指したいという気持ちがあるので、そういったところを目指していきたいと思っています。本局でも中盤の難しいところでうまくバランスが取れなかったので、そういうところでうまくバランスを保てるようになれば、また違った将棋が指せるようになるかと考えています。

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――将棋の面白さはどのようなところにあるか。

藤井 一言ではいえないと思うのですが、将棋は取った駒を持ち駒として使えるのが大きな特徴で、それによって中盤、終盤と局面が進んでいくにつれて複雑になっていくところが指していて面白いのではと思っています。私も将棋を指す中で、そういった局面に出会えたらいいなと思いながら指している感じです。

――今後の目標として記録など具体的に意識しているものはあるか。

藤井 タイトル戦が始まればそこで結果を残したいとはいつも思っているのですが、長期的な先の先のタイトル戦で勝ちたいとか、そういったことは意識していないので、長い目で見ると面白い将棋を指すことがいちばんの目標になるかなと思っています。

――地元の瀬戸市の皆さんに向けてメッセージを一言。

藤井 地元の方には私が棋士になる前から応援していただいて、ずっと励みになってきたので、すごく感謝しています。

――八冠は誰に伝えたいか。

藤井 家族や師匠には、またあとで伝えられたらと思っています。

――八冠を達成した喜びを。

藤井 対局をご覧いただきましてありがとうございました。この王座戦は第3局と第4局、どちらも苦しい将棋で、まだなかなか実感がないのが正直なところでもあります。ただ、今回の王座戦で八冠にチャレンジするのはすごく貴重な機会かと思っていましたし、それをつかめたのはうれしく思っています。今後もしっかり取り組んで、皆様にこういう将棋をお見せできればと思っています。

(飛龍)

2023年10月11日 (水)

感想戦

Kansou01(対局室に戻って感想戦が行われた)

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Kansou02

Kansou03(左端は新聞解説の村田顕弘六段)

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Fujii12

(飛龍)

最終盤のポイント

Ouza202310110101_122井田四段、宮嶋四段に最終盤のポイントを解説してもらいました。図は藤井竜王・名人が△4六角成▲5八玉(▲4八玉は△4七飛以下)△7八飛▲5九玉△6八飛成までの詰めろをかけた局面です。本譜の▲5三馬は△2二玉▲3一銀△1二玉▲2二金△1三玉(変化1図)で詰みません。

2_128_2▲4二金なら先手が勝ちでした。(1)△4二同金は▲同成銀△同玉に▲5二飛△3三玉▲5五馬△同角成▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△同玉▲1七銀以下の詰み。(2)△2二玉は▲3二金△1三玉(△同玉は▲4二飛△3三玉▲4三馬△2四玉▲3四馬以下の詰み)▲2二銀△2四玉に(A)▲2七飛(変化2図)で先手が勝ちそうです。(B)▲2五歩△同玉▲2七飛△2六金▲1七桂以下の即詰みもありました。

2_129【後日追記】
藤井新王座はあとの投稿の会見で「局面が苦しいときは、そのまま自然に進めてもさらに苦しくなってしまうので、なるべく相手玉に少しでも迫る形を作って、何とか複雑にできればということを考えて指していました」と述べています。

Ouza202310110101_119本局では119手目▲5二とに△3三金右と逃げるのが「自然に進める」手と考えられるでしょう。△5二同金▲同成銀と駒損を受け入れ、△5五銀と冒頭の図の詰めろをかけて勝負に出たのが本譜でした。まさに「なるべく相手玉に」からの部分に該当し、逆転勝ちの幸運を引き寄せたといっていいのかもしれません。

(飛龍)

大盤解説会場で挨拶

終局直後のインタビューのあと、両対局者は現地大盤解説会場に登壇。ファンの皆さんに挨拶をしました。

Ooban22 (両者が登壇すると大いに沸く)

Ooban23 (糸谷八段が主導した)

Ooban24(淡路九段、大石七段も壇上で見守る)

Fujii09 (藤井新王座の挨拶)

Nagase09(同じく永瀬前王座)

(飛龍)

終局直後

Kyokugo01(終局直後の両者)

Kyokugo03 (すぐに報道陣が取り囲んだ)

Fujii07 (藤井新王座は八冠を達成)

Nagase07(永瀬前王座は勝ちをつかみきれなかった)

Kyokugo04

(主催紙による終局後インタビュー)

──本局を振り返って。

藤井 早い段階から激しい展開になったのですが、▲7七角(37手目)△同馬▲同桂と局面が落ち着いたところで、どうバランスを取るかが分からなくて、そのあとは苦しくなってしまったのかなと思っていました。

──形勢を苦しくしたと思われたのは。

藤井 夕食休憩(54手目△6四銀)の辺りは、はっきり苦しいと思っていました。

──終盤は二転三転していたと思いますが、ご自身の形勢判断は。

藤井 終盤、先手玉に迫れる形になって、難しいところも出てきたのかなと思いましたが、時間もなかったですし、分からなかったというのが正直なところでした。最後は負けにしてしまったところもあったと思います。

──最後、逆転したと思われたところは。

藤井 △5六歩(126手目)と打って、詰めろで迫っていけそうな形になったかなと思いました。

Fujii14

──五番勝負全体を振り返って。

藤井 どれも難しい将棋だったと思っているのですが、その中で中盤で差を作られてしまう将棋が多くて、その辺りにまだ実力不足を感じるところが多かったと思います。

──王座獲得ついて。

藤井 本当に苦しいシリーズだったので、結果は幸いしたのですが、この経験を糧に、もっと実力をつけていかなくてはと感じています。

──八冠制覇について。

藤井 ここ1、2年、タイトル戦の結果はよかったのですが、ただ、それに見合った力があるかというと、まだまだだと思うので、引き続き実力をつけていくことが必要かと思っています。

Nagase14

(続いて永瀬前王座にもインタビュー)

──序盤、かなり工夫された展開でしたが。

永瀬 昼食休憩明けの▲7五歩(41手目)までは予定だったのですけど、△8四飛に対して、こちらの選択肢が多くて難しかったと思います。

──控室では永瀬王座が優勢と見られていましたが、ご自身の形勢判断は。

永瀬 いや、難しいのかなと思って指していました。

──本局の敗因、敗着があれば教えてください。

永瀬 ▲5三馬(123手目)に代えて▲4二金なら。以下△同金▲同成銀△同玉▲5二飛の順がエアポケットに入ってしまっていて、▲6二飛だと足りないと思ったのですが、▲5二飛~▲5五馬の順なら駒が取れるので。それほど難しくない順だったので、逃していけなかったと思います。

──五番勝負全体を振り返って。

永瀬 前の棋聖戦よりは、だいぶ差が縮まったのかなと思っていたのですが、終盤でチャンスがあったときに決定力が足りずに負けになってしまう、というのが2局続けてありましたので、それはなんとかしなければいけないと思っています。全体的には一局一局、全力で挑むことができて、一生懸命指して、内容はどれも見応えのある瞬間があったかと思っていますので、自分なりに一局一局、ベストを尽くしてて、今の自分の全力は出せたのかなと思います。第3局、第4局とチャンスの局面をものにできていれば次につながっていましたので、その点は残念に思います。

──名誉王座を目指す戦いでした。

永瀬 途中からは一局一局、ベストを尽くすという方向でしたので、そちらを意識して取り組んでいたかなと思います。結果としてはとても残念に思います。

──無冠になってしまいましたが、再起に向けて。

永瀬 公式戦で藤井さんに教えていただいて、番勝負を始める前と後では、だいぶ見えてきたものも違うかなと思うので、個人としては悲観せずに、今まで通り一歩一歩頑張っていきたいな思っています。

(書き起こし:夏芽)

(飛龍)

藤井聡太八冠が誕生

投了図

第71期王座戦五番勝負第4局は、138手で藤井竜王・名人が勝ちました。終局時刻は20時59分。消費時間は▲永瀬王座5時間0分、△藤井竜王・名人5時間0分(チェスクロック使用)。

この結果、五番勝負は藤井挑戦者が3勝1敗で王座のタイトルを奪取。将棋界史上初の八冠が誕生しました。

(夏芽)

両者秒読みに

Ouza202310110101_110図の局面で永瀬王座も持ち時間を使いきりました。以降は両者ともに1手60秒の秒読みの中のたたき合いとなります。

Fujii06(朝の藤井竜王・名人。時間のハンディキャップがなくなった)

(飛龍)

20時過ぎの控室

Hikae08 (ベテラン棋士が継ぎ盤を囲み、糸谷八段が見解を述べる)

Hikae09(淡路九段の隣には勝又七段)

(飛龍)

藤井竜王・名人、持ち時間を使いきる

Ouza202310110101_85図の局面で藤井竜王・名人は残り時間を投入して使いきりました。以降は1手60秒未満の着手となります。

Ooban21(ちょうどその頃、大盤解説会場では糸谷哲郎八段が登壇していた)

(飛龍)

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