【糸谷哲郎八段の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「序盤はうまく進められたかと思ったのですが、夕休後に悪くしてしまったかと思いました。最後たまたま詰めろで……」
――どのあたりで勝ちになったと思われましたか。
「いやあ、本当に最後で。銀を打ちこんだあたりで(145手目▲8三銀)こちらが詰まないなと」
――これで王座戦初挑戦ということになります。羽生王座とタイトル戦を初めて戦うわけですが、抱負をお願いいたします。
「そうですね。羽生先生は目標としている先生ですので、いい将棋を指せるように頑張りたいと思います」
【佐藤天彦名人の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「ちょと序中盤は、相当悪くなってしまったような気がしました。中盤持ち直したような気がして、もしかしたら逆転できるかもというところもあったのですが、ちょっと具体的にわからなかったです」
(八雲)
糸谷八段が佐藤名人をくだしました。終局時刻は21時52分。消費時間は▲糸谷4時間14分、△佐藤4時間59分。
勝った糸谷八段は、羽生王座への挑戦権を獲得しました。五番勝負第1局は9月6日(火)、神奈川県横浜市「横浜ロイヤルパークホテル」で行われます。
(紋蛇)
後手優勢と見られていましたが、現局面は後手玉が詰めろ。△6六角▲同歩と角を切っても、まだ▲8三銀以下の詰めろです。「これはどちらが勝ちかわからない。流れは先手にあります」と検討陣。「いい将棋だ」と感嘆する声も挙がっています。いよいよ最終盤です。
(八雲)
図は21時前の局面。△7六桂に▲7七金と上がったところです。
この手は検討されていませんでした。しかし、△8八銀▲7八玉△7七銀成▲同玉に△3六竜と切って、△8八銀以下、先手玉は寄っていると見られています。ここまで熱戦が続いていましたが、急転直下、後手が勝ちになっている可能性があります。
21時過ぎ、図から△8八銀▲7八玉△7七銀成▲同玉に、佐藤名人は竜を切らずに△7七桂としました。△3六竜から決めにいくのは寄せきれないと判断したようです。これで急転直下の終局は回避されましたが、検討陣は依然として後手よしと見ています。
(八雲)
図は20時30分過ぎの局面。
ここまで早いペースで指し続けていた糸谷八段ですが、△3六歩に手を止めています。ここまで軽快に指し回していた感じの先手ですが、△3六歩はプロなら一目の手。当然見えていたはずの手を指されて手を止めるのでは変調かといわれています。
△3六歩に対しては、流れからすれば▲6四角と出たいのですが△7三銀打と受けられて大変と見られています。検討陣は▲3六同銀と取って辛抱するしかないと見ています。
(八雲)
図は20時前の局面。指し手のペースはますます上がっています。そして検討陣の評価は、後手持ちから先手持ちに変わりました。後手がさばけたといわれていましたが、現局面は後手の2五桂が負担になっており、先手のほうが自然な指し手を続けています。佐藤名人の残り時間も少なく、見た目以上に後手が苦しい恐れもあるといわれています。
▲2六飛までの消費時間は▲糸谷3時間20分、△佐藤4時間37分。
(八雲)
図は19時25分頃の局面。
19時過ぎからペースアップして10手ほどパタパタと進みました。銀交換に成功した後手に対して、先手は自陣に銀を打って頑張る展開。この進行を見て、検討陣は「後手がうまくさばいた格好」と評価し、後手持ちといっています。ただ、大きな差ではなく「勝負としてはこれから」といわれています。
(八雲)
18時40分を回り、対局が再開されました。
糸谷八段の夕休明けの一手は▲4八角。2六飛にヒモをつけて△5五銀の筋を緩和しています。この手は検討陣も予想しており、感触のいい手と評判でした。
対して佐藤名人は△3八歩とさらに歩を垂らします。歩切れになるだけに指しにくい手ですが、この歩も好手と評判です。狙いは△5九歩成▲同角△3九歩成▲同金と連続して成り捨ててからの△5五銀です。
互いに好手を繰り出して、1手指したほうがよく見える展開。互いに玉が薄いため、終盤に入ると一気に決着がついてしまう恐れもあります。この中盤のねじりあいが勝負どころになりそうです。
(八雲)