第22期女流王位戦五番勝負第3局

2011年6月15日 (水)

両対局者の昼食は「茶寮弁当」

「茶寮弁当」は、日本料理のお店「茶寮このみ」の仕出し弁当。

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昼食休憩に入る。再開は13時より

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図の局面で昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲清水1時間13分、△甲斐1時間22分。対局は13時に再開される。

■棋譜解説チャット(片上大輔六段)
「▲1六歩ですか。これは外野には浮かばない手ですね~。▲1七桂の含みと、もう一歩持つと端攻め(▲1五歩~▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲2四歩)の狙いがあります。もっとも、どちらも見せ手という感じですが。よし皆さん、お昼にしましょう。しばらくはスローペースが予想されます」

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旧伊藤伝右衛門邸ギャラリー (2)

■応接間
「腰壁を高く張った本格的な洋間です。マントルピースにはアール・ヌーボー風ビクトリアン・タイルを配し、格調高い英国風の演出がなされています。床は精緻な寄木張り。南側に設けた出窓の欄間に嵌め込まれているのは英国製でダイヤ模様のステンドグラスです」

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■高田忠周書扁額(たかだただちかしょへんがく)
「右から「和協輯睦」(わきょうしゅうぼく)と読みます。左側は、「丙子初夏日篆 伊藤大人雅属 竹山逸子忠周」(ひのえねしょかじつてん いとうだいじんがしょく ちくざんいっしただちか)と読みます。1936年(昭和11)の初夏に、高田忠親が伊藤伝右衛門に頼まれて篆書(てんしょ)で書きましたという意味です。伊藤大人は伊藤伝右衛門のことです。逸子はまずい書家であると自分を謙遜する言葉です」

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旧伊藤伝右衛門邸ギャラリー (1)

■書斎
「西側に書棚を設け、床は寄木張り。壁は帯を解いた絹の繊維を塗りこめた珍しい布壁です。板戸には背景に金粉を散りばめて四季の草花がが描かれています。制作者は鞍手郡植木町(現直方市)出身で帝展審査員の阿部春峰(あべしゅんぼう)。出窓の欄間には英国製のステンドグラスが輝きます」

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控室

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(控室の継ぎ盤)

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(使用されている駒は江陽作。書体は宗歩好(そうほこのみ))

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(LPSA所属の大庭美樹女流初段。座右の銘は「玉子を割らなきゃオムレツは作れない(You can't make an omelette without breaking eggs.)」)

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清水女流六段、積極的に動く

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図は▲6七角と、後手の飛車を狙って角を据えた局面。このラインはひとつの急所で、角交換型の石田流には頻出する手筋だ。後手は△4五歩と突いて軽くさばくか、△3三飛と引いてチャンスをうかがうか、2通りの指し方がある。どう対応するにせよ、先手がリードを奪いにいく思想なのは間違いない。午前中から清水女流六段は早くも覚悟を決めた格好になっている。実戦はここから△3三飛▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛△5四銀と進んだ。

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積極的な姿勢を見せる清水女流六段に対し、甲斐女流王位は穏やかに駒組みを進めている。両者の棋風がよく表れている局面といえそうだ。

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(邸内の庭園)

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午前のおやつ

10時30分、対局室におやつが運ばれた。メニューは同じコーヒーゼリー。飲み物に、甲斐女流王位はハーブティー、清水女流六段はロイヤルミルクティーを注文している。

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森下九段、升田式石田流を語る

「升田式石田流はですね、升田先生の本で読んだことがあるんですが、角を換えて△2二飛とぶつける筋は驚きましたね。こんな手があるのかと。とても感動したのを覚えています」(森下九段)

森下九段の言う「△2二飛」とはおおよそ次の図のこと。

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ここで▲2三歩は△1二飛▲2二角△3二金▲3一角成△同金▲2二銀△5五角▲3一銀不成△3三角打がひとつの定跡で、後手よし。端的に言えば、先手からの単純な突破は成功しないということだ。この指し方を見出したのが、「新手一生」を掲げた升田幸三実力制第四代名人だ。この筋が発見されたことで、飛車先を受けない石田流の可能性が大きく広がった。

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(大盤解説を担当する二人。村田女流二段、森下九段)

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参考棋譜

2手目△3二飛戦法の参考棋譜を紹介します。

2010年12月15日
第22期女流王位戦 挑戦者決定リーグ白組
先手:鈴木環那女流初段
後手:里見香奈女流三冠
▲7六歩 △3二飛 ▲2六歩 △6二玉 ▲2五歩 △3四歩
▲4八銀 △7二玉 ▲6八玉 △3五歩 ▲7八玉 △8二玉
▲4六歩 △7二銀 ▲4七銀 △3四飛 ▲5八金右 △9四歩
▲9六歩 △7四飛 ▲2二角成 △同 銀 ▲7七玉 △3二金
▲7八銀 △3三銀 ▲6六歩 △2四歩 ▲同 歩 △同 飛
▲2五歩 △2二飛 ▲3六歩 △3四銀 ▲2四歩 △1四角
▲5六角 △2五銀 ▲2三歩成 △同 角 ▲2五飛 △5六角
▲2二飛成 △7八角成 ▲同 玉 △2二金 ▲2八飛 △2六歩
▲同 飛 △2五歩 ▲2八飛 △3六歩 ▲5六銀 △3九飛
▲2五飛 △2四歩 ▲同 飛 △8八銀 ▲5九銀 △8九銀不成
▲6七玉 △3三角 ▲2五飛 △5四桂 ▲5五銀 △3七歩成
▲8六角 △4七と ▲同 金 △3四飛成 ▲2八飛 △5五角
▲5六金 △3三角 ▲3七歩 △4七銀 ▲6五金 △3五龍
▲9七香 △6四歩 ▲同 金 △4六龍 ▲6五金 △6六角
▲6八銀 △2七歩 ▲同 飛 △5六銀成 ▲同 歩 △4七龍
▲5七銀打 △同角成 ▲同 銀 △6六歩 ▲同 金 △7八銀打
▲同 金 △同銀不成 ▲同 玉 △5七龍 ▲6五金 △8九銀
まで、後手の勝ち

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甲斐女流王位の作戦は2手目△3二飛

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対局開始後、清水女流六段の初手▲7六歩が着手されたのちに報道陣が退室。ほどなく控室のモニタに2手目△3二飛が映し出された。まっしぐらに三間飛車に振る。歩をまったく突かない陣形は異様にも見えるが、現在ではすでにひとつの戦法として確立されている。初手▲7六歩に対し後手番で確実に石田流を用いるための趣向で、今泉健司三段(当時)創案による戦法だ。第35回将棋大賞では升田幸三賞を受賞している(奨励会員の受賞は初)。当時今泉さんは三段リーグ編入試験に合格し、四段を目指し三段リーグを戦っていた。2手目△3二飛はさまざまな棋士によって指されており、現在までに公式戦では57局を数えている。

2筋が受けにくいように思えるが、ここから▲2六歩△6二玉▲2五歩には△3四歩(参考図)で対抗する。

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参考図で▲2四歩△同歩▲同飛は△8八角成▲同銀△3三角の両取り。また▲2二角成△同銀▲6五角は△7四角で受かっている。そもそもこの指し方が注目されたのは、▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩▲5六歩(▲6八玉)の「石田流封じ」があったから。平たい陣形の中で飛角がぴったりくっつく形は視覚的にもおもしろく、ユニークな戦法だ。

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