第21期女流王位戦五番勝負第4局

2010年6月17日 (木)

甲斐女王、決めに出たか。「焦っている?」との声も

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図は16時ごろの局面。甲斐女王は△5六歩▲同歩で5七の地点をこじ開け、△4五桂と跳ねた。「これは一気に攻め潰そうという手ですね。甲斐さんはそのつもりで△5六歩としたんでしょうね」と、佐藤八段。ただ、やや強引に見える攻めなので、「甲斐女王が焦っているのではないか」との声も。及川四段は「後手も一気に決めるのは大変そうです」とコメントしている。図では▲4三飛と勝負する手があり、控え室は「先手の逆転は厳しい」から「ちょっと先が見えなくなってきた」というムードに変わってきた。

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徳島饅頭

佐藤八段からいただいた差し入れは「徳島饅頭」。包み紙の上でも阿波踊りを踊っている。味は素朴なまんじゅう……と思えば、ほんのりスダチの香りがする。

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佐藤義則八段が来訪

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図は清水女流王位が△5六歩を防いで▲5七歩と打った局面。「涙が出る手だね」と東七段。15時半すぎには、佐藤義則八段が差し入れを持って控え室を訪れた。

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(モニタを見て感想を交わす東七段(左)と佐藤八段(右))

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甲斐女王優勢。清水女流王位、苦しい局面が続く

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図は15時すぎの局面。後手の甲斐女王が角筋を通した手に対し、先手の清水女流王位は7七に銀を埋めて守った。後手の立場からすると、攻めるとすれば△5六歩の「垂れ歩」で迫るのが確実。だが、及川四段は「この局面で普通は△5六歩ですが、▲4五桂や▲4三飛で容易ではないので、少し指しにくい△6三歩▲5三角成△3七飛成も有力そうです」と他の策を提案している。控え室では「どうすれば先手が粘れるか」に焦点を当てて検討している。形勢は後手が優勢で、先手はだいぶ苦しいようだ。考えても考えても悪い局面ばかりが浮かぶと、考えること自体も苦しくなる。徳島では負けなしの清水女流王位、ここで粘って踏みとどまることができるか。

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15時のおやつ

15時のおやつは、清水女流王位が「カフェオレ、クッキー、チョコレート」。甲斐女王が「ショートケーキ、レモンティー」。甲斐女王の注文したケーキはチョコレートケーキのようだ。

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(カゴにクッキーとチョコレートが盛られている。手前にあるのがカフェオレ)

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(チョコレートケーキ)

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徳島駅前

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(対局場である「ホテルクレメント徳島」エントランスに設置された看板)

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(ホテルを出て右に進むとすぐ、「ポッポ街」という商店街の入り口に着く)

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(駅前のある建物の地面には、「鳴門のうず潮」がデザインされたタイルが)

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(ホテルエントランス正面、ポストの上でも阿波踊り)

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一気に決戦へ。先手の構想に疑問か

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13時45分すぎ、バタバタと指し手が進んで図の局面になった。あっという間に決戦になり、終盤戦に突入した。ここからは「どちらが先に相手玉を仕留めることができるか」というスピードレース……になるのが普通だが、後手陣の守備力が強く、先手が攻め合って勝つのは難しそうだ。控え室では後手優勢と見られている。チャット解説の及川四段も、「お互いに捌きあって駒の損得なしですが、先手としてはもう少し5筋の厚みを活かしてみたかったですね」と、先手の構想に疑問を投げかけた。

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(徳島城跡を擁する徳島中央公園。対局室及び控え室から望むことができる)

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甲斐女王、引きつけての反撃を狙う

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13時になって対局が再開し、20分ほどで図の局面まで進んだ。甲斐女王が5四の銀を「銀ばさみ」で捕獲しようとすると、清水女流王位はそれはたまらないと▲5三歩を先着して防ぐ。先手が5筋を制圧したようだが、これは後手の計画のうち。守りは後手の方が堅く、引きつけてのカウンターが決まれば形勢は後手に傾くだろう。虎視眈々と反撃のチャンスをうかがう甲斐女王。清水女流王位はここからどう手をつないでいくのか。

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対局再開

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(甲斐女王。先に入室し、清水女流王位を待つ)

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(清水女流王位。定刻の少し前に入室)

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関係者が対局室を後にしたすぐのち、甲斐女王は再開後の一手△6四歩を着手した。

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序盤を振り返って――中飛車を巡る駆け引き

初手▲7六歩。後手を持った振り飛車党は、以前であれば何気なく△3四歩と突いていただろう。ところが現在では、ここで振り飛車党が考えなければいけない「先手の作戦」があるのだ。それが▲7六歩△3四歩▲6八玉(参考図)という3手目の玉上がりである。
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図で△5四歩と中飛車を目指すと、▲2二角成△同銀▲5三角で馬を作られてしまう。かといって先に△5二飛は▲2二角成△同銀▲6五角でやはり馬を作られてしまう。つまり、図の作戦によって先手は後手の「角道を止めない中飛車」を封じることができるわけだ。△4四歩と角道を止めてからオーソドックスな振り飛車にはできるが、それなら先手の主張は通ったと言える。補足しておくと、実は▲6八玉という手は、後手が居飛車に作戦を切り替えたとき、戦場に近づく意味があって危険な可能性がある。しかしそこは相手を見ての作戦。先手は「居飛車にはしないでしょ」と言っているわけだ。清水女流王位は第2局でこの作戦を採用、甲斐女王は中飛車を断念して△4四歩から三間飛車を選択した。

本局は2手目に△5四歩と、今度は甲斐女王が工夫した。
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これに▲6八玉は△5二飛で問題ない。△5四歩は先手の「中飛車封じ」を警戒しての指し手だったわけだ。つまり、開始2手で「『中飛車封じ』を封じる」、という駆け引きが行われていたことになる。本局、何気ないように見えたオープニングの裏には、こうした事情があったのである。

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