佐藤和俊>皆さんお疲れ様でした。22手目△2四歩から積極的に仕掛けた甲斐さんの緩急自在の指し回しが光った一局でした。清水さんは本局では勝ちづらい将棋の作りになってしまったと思います。
佐藤紳哉>一局を通して、甲斐さんの指し回しは安定していました。途中少し攻め急ぎはありましたが、全体的に見てカイ勝と言えるのではないでしょうか。カイ心の将棋だったと思います。防衛おめでとうございます。
門倉啓太>最終局にふさわしい大熱戦でした。清水さんが追い上げて逆転ムードもあったのですが、全体的に甲斐さんの落ち着いた指し手が印象に残りました。
村田智弘>お疲れ様でした。甲斐さんが終始攻めの姿勢で戦っていたのが印象的でした。清水さんはやや駒がちぐはぐになってしまい残念でしたが、最後の追い込みは見事でした。決着局にふさわしい見ごたえのある将棋でした。
長岡裕也>清水さんの押さえ込みに対して、甲斐さんがうまく捌いた一局でした。先手も終盤追い込んだように見えましたが、甲斐さんは冷静でしたね。初防衛おめでとうございます。
(八雲)
(終局直後、主催紙の担当者から両者にインタビューが行われました)
甲斐智美女流王位インタビュー
――この1局を振り返っていかがでしたか
「序盤から、こちらが攻めて行く展開になったので、駒損だったのですが少しいいのかなと。ただずっと難しかったので、わずかにいいのかなと」
――どのあたりで勝ちを意識されましたか
「最後の最後で…(102手目)△7八竜と回った局面で、勝ちかなと」
――五番勝負を振り返っていかがでしたか
「ほんとに1局1局、悪い将棋が多くて。自分なりに悩みながら五番勝負を指してきたのですけど、いろいろと勉強になることがあったと思います」
清水市代女流六段インタビュー
――この1局を振り返っていかがでしたか
「序盤で少し得をしたので、その良さを広げようと思って、動きすぎてしまった気がします」
――終盤はどのような感じで見ていましたか
「終盤は、少し足りないと思っていました」
――五番勝負を振り返っていかがでしたか
「そうですね……。5局、いろんな将棋が指せたので、そういう意味では収穫の多いシリーズでした。全国を転戦することもできたので、それは良かったなと思います。結果は凄く残念ではありますが、自分の中で課題は見つけられましたので、来期に生かしたいと思います」
(八雲)
△8七竜で清水が投了。甲斐が女流王位を3勝2敗で初防衛を決めた。
投了以下▲8七同玉△7八銀打▲8六玉△8七飛▲7五銀△6四銀▲
同角△同金までの即詰み。終局は19時11分、消費時間はともに3時間
59分。
「先手に指す手がない」控室でそういわれた局面から、清水女流六段は持ち駒の全てを投入して受け続けています。最終局、投了した瞬間に全てが終わります。刀折れ、矢尽きるまで戦い抜く覚悟のようです。
(八雲)
控室では後手勝ちと見て、検討が打ち切られました。終局が近いようです。
【Twitter解説】
村田智弘>92手目△7九と、勝ちを読み切った一手ですね。後手玉は詰みがないので、甲斐さんの勝ちになりました。
佐藤紳哉>94手目△6二金打手堅いです。攻めても勝ちだったと思いますが間違いのない手です。
(八雲)
18時40分、ここまでの残り時間は▲清水9分、△甲斐7分。
控室で検討されていたのは、図から▲4五竜△6八と▲7四桂△9二玉。そこで▲9五歩、▲5四竜、▲4一竜の3通りの手段が検討されていた。そして▲4一竜が最も難しいのではないか、と検討が進みかけたところで、清水女流六段は▲5二同竜の強手。
控室ではまったく検討されていなかった手。慌てて検討が開始されました。
【Twitter解説】
長岡裕也>大激戦になっていますね。89手目▲7四銀ですが、△6八とに対して後手玉に詰めろが掛けづらい。▲6一銀には△7九と▲8三香成△同銀▲同銀成△同玉▲7二銀打△8四玉で詰みません。
門倉啓太>87手目は▲4五竜の方が優ったと思います。90手目の局面は後手玉にうまい詰めろがかかりません。甲斐さんが勝ちになったのではないのでしょうか。
佐藤紳哉>90手目△6八とで後手勝ちとみます。▲6一銀が勝負手ですが冷静に対処されると足りないです。
(八雲)
難解な最終盤を迎え、控室には米長邦雄永世棋聖、田中寅彦九段らが来訪。検討が続けられていますが、結論は出ていません。
「難しい。大変な勝負です。どちらが勝ちかわかりません」(米長永世棋聖)
【Twitter解説】
佐藤紳哉>80手目、やはりまだまだ大変かもしれません。ここから先手は▲4五竜から▲5五角をねらうか▲8五香から玉頭をねらうか、迷うところです。
佐藤和俊>紛れてきているように思います。佐々木五段の指摘と一緒で金銀をあっさり取らせたのはどうだったのでしょうか。80手目の局面ですが▲4五竜として先手も楽しみがありそうです。
実戦は80手目(左図)から▲5五角△6九銀不成▲7七玉(右図)と進み控室では「これも難しい」といわれています。
門倉啓太>83手目の局面ですが、形勢不明になっていると思います。先手は次に▲7四銀と出る手があります。その後▲8五香から玉頭を殺到する狙いです。
佐藤和俊>83手目▲7七玉の局面ですが△5八とで少し後手が余せるとみます。
(八雲)
図は18時少し前の局面。
控室では「4九竜を追われるのでは、流れがおかしい」の声。
「(70手目)△4九竜が甘かったか。しかし、代わる手も検討ではハッキリ後手勝ちの順は見つからなかった。もしかすると元の局面が難しかったのかもしれないです」といわれています。
17時50分頃、72手目△4六歩までの消費時間は▲清水3時間28分、△甲斐3時間34分。
【Twitter解説】
佐々木慎>甲斐さんが決めにいってますが▲5九金打がいい頑張りで若干紛れているような気がします。△3二金を取らせたのは気前が良すぎたような気がします。
(八雲)