第57期王座戦第3局大盤解説会 天童温泉「あづま荘」
1 開 催 日 平成21年9月25日(金)
2 会 場 天童市 天童温泉 あづま荘
3 解説会等 午前10時より開場・解説会は午後3時より・会費1000円
記念将棋大会
1 開 催 日 平成21年9月26日(土)
午前9時20分開会 9時15分受付
2 会 場 天童市 天童将棋交流室
3 参 加 費 無料(昼食は各自)
4 申し込み 当日申し込み
5 部 門 中学生の部・小学生の部(2級以上・3-6級・7級以下・3部門)
6 対 象 小中学生
7 賞 品 等 各部門上位3名(賞状・賞品)と参加賞
久保「最終盤まで見ごたえのある将棋だったと思うのですが、△2九飛と打ったあたりの形勢判断はどうだったのでしょうか?」
羽生「角と銀がひどい形なので、ちょっと悪いかなと。先手先手でどんどん攻められる形なので、ええ。」
山崎「こちらも玉形が悪いので難しいなと思っていたのですが、時間が無かったので」
久保「△2九飛に▲3八銀ですと…」
山崎「それは△3九飛成で良いかと」
羽生「ええ、そうですね。△1九飛成と香を取ってくれればいいのですが、△3九飛成で角の処置が難しくなってしまうので」
久保「その後なのですが、山崎さんにチャンスは無かったのでしょうか」
山崎「いや、あの…実は最後まで勝ちだと…」
久保「あ、そうですよね。難しいですよね」
山崎「最後、▲3一飛に△4一金と引いて勝ちだと思っていたのです。▲3四飛成は詰めろなのですが、それに△6九角と打った手が詰めろになっていると見ていました」
久保「なるほど。しかし最後に▲8六歩ではなく▲8六銀の筋で後手玉が詰んでしまうという…」
山崎「そうですね。その順に気付いて、もう収拾がつかなくなってしまって」
久保「▲3一飛△4一金▲3四飛成に△6九角で。これが詰めろなので、後手玉が詰むかどうかですが」
山崎「▲6三桂△5二玉▲4三銀△6二玉▲7一馬△6三玉▲7二銀△7四玉のときに…」
羽生「(山崎が先手側を持って大盤の駒を動かすと、羽生も後手側を持って黙々と応じていく)」
山崎「▲7五銀△8五玉▲8六銀で、詰んでいます。8七に金が行けなければ詰まないと思ってしまって」
久保「その順になったときに、△6九角が利いてこないのですね。」
山崎「はい」
久保「その前の▲7一角あたりはどうだったでしょうか?」
羽生「▲7一角と打ったあたりは勝ちという感じはしませんでしたが…」
山崎「ええ、羽生王座が長考(23分)されたときに、先ほどの△6九角の筋が見えて、△2三歩を選んでしまいました。最初は△6九銀と打つつもりでしたが…」
羽生「はい、△6九銀かと思っていました」
山崎「△6九銀だと▲8二角成△7八銀成▲同玉△2八竜で角を抜いて、長い将棋になります」
久保「その変化は、実際のところどうなのでしょうか」
羽生「向こうもそんなには…2四に竜が行くので手厚いですが。ちょっとどういう風になるかは、わかりません」
山崎「長い将棋になると、よくわからない局面になったときに持ち時間が少ないので、ちょっと厳しいかなと。最後の数手はお粗末でした」
(烏)
【北島忠雄六段】
とても難しい将棋でした。終わった今でも、はっきりとした敗着は、分かりません。印象に残った手は36手目の△2三金です。普通はノータイムで△2三歩と打つところなので、びっくりしましたが、△2三金以下、ほとんど時間を使わず羽生王座が▲2七同角まで進めたのにも驚きました。普通なら、ありえない手も、きちんと拾って読んでいるんですね。読みの厚みが、まるで違うと思いました。あと65手目の▲3五歩、普通は後手に△2五銀の選択肢を与えず▲1六角と出そうなものですが、終盤、時間のない時に有力な候補手を目の前に出されたら、思わず考えてしまいます。羽生王座の勝負術を感じさせる一着でした。
【片上大輔六段】
一局を通じて働きの悪い駒が多く、形勢判断の難しい将棋でした。山崎七段としては、一度も動かずに飛車を取られてしまったのが痛かったでしょうか。最後は▲7一角に△9二飛と逃げたほうが難しかったと思います。1局目は角が動かずに取られたので、第3局はまず大駒の活躍が期待されます。
途中羽生王座がじっと▲8八玉と入り、△2九飛にも(先に▲1六角でなく)▲3五歩と打ったのが印象に残りました。これ以降のやり取りで、結果的に先手は右辺の駒すべてをさばくことに成功しました。
後手は▲3五歩に△2五銀とかわしておく手、△6九銀で先に△6五桂とする手など有力な選択肢が多く、勝つ順があったと思うのですが私には分かりませんでした。羽生王座は正確にお互いの玉までの距離を見極めていたということだと思います。
【遠山雄亮四段】
山崎七段が36手目△2三金から積極的に将棋を組み立て、持ち味を存分に出してペースを掴んでいたでしょう。
羽生王座相手に自分から局面を動かしペースを握って戦っていける棋士はそう多くはいません。
そうした辺り、山崎七段としては実力を見せつけました。
ただ65手目▲3五歩が玄妙な一手だったと感じます。ここで山崎七段は随分と持ち時間を奪われてしまいました。
終盤戦は双方にチャンスのある展開でしたが、その中で持ち時間が切迫していたのは山崎七段としては非常に辛いところだったでしょう。
現地で深く検討されていたという68手目△6九銀で△6五桂という手や、最終盤83手目▲7一角に対して△9二飛▲5三角成△3三銀と粘る手など、持ち時間があれば深く追及出来たと思います。
しかし時間も勝負のうちです。逆に最後は勝ちを手繰り寄せる、羽生王座の強さ、懐の深さを改めて感じました。これで王座戦で羽生王座は15連勝となったわけですが、その理由が垣間見えた一局だったと思います。
第3局以降もこうして自宅解説を行っていきますので、ファンの皆様に楽しんで観戦いただければ幸いです。
またネット委員としましても、今後も将棋ファンの皆様に将棋を楽しんでいただけるよう、ネット中継をはじめとし、様々な事を打ち出していく所存であります。
どうぞ温かい声援とご支援のほど、よろしくお願い致します。
「押さえ込まれる感じになってしまったので、ちょっと苦しいかなと思っていました。勝ちだと思ったのは、最後の最後▲3一飛と打って、もしかしたらと。ええ、次も変わらず頑張ります」(羽生王座)
「難しかったです…最後の最後まで、ちょっとよく分からなかった勝ちだと思ってやっていたのですが、最後の最後…▲3一飛に△4一金と引いて、▲3四飛成に角(6九)を打って最後に▲8六歩~▲8七金の筋を消して詰めろ逃れの詰めろかと。しかし▲8六歩ではなく▲8六銀があるんですね。それに気付いて△4一金打としたのですが、きつかったです。第3局は……そう、ですね………はい。本局はまずまずの将棋だったと思うのですが、結果が伴わなかったので…次は結果を…ええ、出したいですね」(山崎七段)
(烏)