12時、図の局面で福間が22分使って昼食休憩に入りました。消費時間は☗福間1時間15分、☖伊藤1時間25分。休憩時間は1時間です。昼食注文は福間女流王位が「煮魚・刺身定食」と「フルーツ盛り合わせ」、「ウーロン茶」。伊藤女流四段が「五目入りチャーハン」と「フルーツ盛り合わせ」、「ウーロン茶」です。
(紋蛇)
△3三角まで、後手は歩得を主張する戦いです。実戦は28分考えて、▲2八玉と穏やかに玉を囲いました。控室では☗5六飛☖8四飛☗8六飛も検討されており、おそらく福間女流王位もその変化を読んでいたと思われます。▲8六飛は△同飛から飛車交換になり、☗同角☖1五歩☗同歩☖1八歩☗同香☖1七歩☗同香☖5五角が一例でした。激しい変化のため、相当に成算がなければ踏み込めない順だったでしょう。
▲2八玉から少し進んで、図は△8四飛と回ったところ。手拍子で▲8七歩と受けては歩切れになり、先手が動きにくくなります。実戦は▲5九飛でした。続いて▲6六角~▲7七桂~▲8四歩~▲8九飛と反発しています。
8筋を逆襲したのが先手の狙いで、手慣れた指し回しです。8三に打つ駒さえ手に入れれば、俗な攻めが見込みます。伊藤女流四段は戦いを避けるために、慎重な指し回しが求められます。
(紋蛇)
初手から▲5六歩△3四歩▲5八飛△1四歩▲1六歩△4二銀▲6八銀の出だしでした。 手元のデータベースを調べてみると、前例は6局あり、後手を持っているのはすべて伊藤女流四段です。そのうち福間女流王位は先手で4局持ち、3勝1敗の成績を収めています。
▲6八銀に対し、伊藤女流四段は△4四歩を4局、△3三角と△8四歩を1局ずつ指しています。本局は△8四歩を採用しました。直近の前例である、昨年12月の第36期女流王位戦挑戦者決定リーグ白組▲小高佐季子女流初段-△伊藤戦(伊藤勝ち)で指した手です。△8四歩以下▲5七銀△8五歩▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛の進行でした。
小高女流初段の▲7八金に代えて、▲7六歩も有力だったでしょう。△8八角成なら▲同飛、△4四歩なら▲7七角で飛車先交換を防げます。
本局に話を戻しましょう。▲6八銀以下、▲5五歩△8五歩▲7六歩△8六歩▲同歩△同飛▲7八金と進んでいます。
先手は5筋の位を取ってから、角道を開けました。飛車先交換を防がないのは▲小高-△伊藤沙戦と同じですが、▲7六歩を指しているため飛車先交換から△7六飛を誘発する格好です。控室では「△7六飛▲7七角△7四飛でも先手がどう指すかわからない」といわれていましたが、実戦は▲7八金に△3二金▲4八玉の交換を入れてから△7六飛でした。相振り飛車を含みにしながら対抗形に進んだ展開、「横歩を取りますよ」「取りなさい」の応酬に、控室では「見たことがない」「へぇー」と感心するような声が上がりました。
(紋蛇)
△3三角は9時20分過ぎに指された手で、福間女流王位は手を止めています。先手中飛車から駆け引きがあり、伊藤女流四段が居飛車に構えて横歩を取る展開になりました。予想もしない力戦形に、控室では驚きの声が上がっています。序盤の駆け引きについては、後程ご紹介します。
18時から関係者による食事会が行われ、対局者は冒頭だけ出席して明日の抱負を述べました。
(西山由佳子・北海道新聞社執行役員編集局長)
「第1局の熱戦ぶりは多くの注目を集めました。第2局も臨場感が伝わるように報道したいと思います。札幌の遅い春は終わりに近づき、ライラックやバラなどの花が次々と咲く、美しい時期を迎えます。さわやかな空気のなか、素晴らしい対局になることを願っています」
(福間女流王位)
「明日から始まる第2局では、自分の力を精いっぱい出し切れるように頑張ります。関係者の皆さまにはお世話になります。よろしくお願いします」
(伊藤女流四段)
「(直前に挑戦者の変更があり)第1局は心の準備が整わないままの対局となりましたが、いまは挑戦者になった実感があります。札幌は師匠(屋敷伸之九段)の出身地で、私も好きな場所です。明日はいい将棋が指したいと思います」
(乾杯の挨拶は、森下卓・日本将棋連盟常務理事)
「私は21歳のときに『さっぽろ東急将棋まつり』で初めて北海道の皆さまにお世話になりました。もう38年前のことです。2020年10月には北海道研修会も始まりました。今後ともご協力いただきますよう、お願いいたします」
本日の中継は以上で終了となります。明日の対局開始は9時です。どうぞお楽しみに。
(紋蛇)