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2025年10月

2025年10月28日 (火)

挑戦者、反撃

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伊藤叡王が長考して反撃に出ました。やはり玉頭を狙う▲5四歩です。以下△同歩に▲5三歩(57手目)とたたきました。大盤解説会の藤井猛九段は「間違えろの歩」と解説。応手が悩ましいというわけです。パッと見の形は△4一玉ですが、控室で検討すると△5一玉も有力とわかってきました。「居玉は避けよ」の格言に反する逃げ場所ですが、▲3四歩~▲3三歩成~▲3二とにすべて手抜きが利くため、激しい攻め合いで有利に働く可能性があります。

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意表の組み立て

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藤井王座の攻勢が続いています。歩の裏に潜り込む△7六飛(50手目)は次に△9六歩を狙った手。ゆっくりできない伊藤叡王は▲7七桂と守りの桂をぶつけて迎え撃ちました。控室では△同桂成▲同金△同飛成▲同角△3四桂▲2八飛△4六桂▲同歩△7六歩▲6六角△7七銀という激しい順を本線に検討していましたが、実戦の△5七桂成(57手目)が意表の組み立てです。

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予想外の一手に控室で驚きの声が上がりました。ここで▲5七同銀は△2六飛と飛車を素抜かれるため▲5七同金と応じ、以下△9六歩の局面で伊藤叡王が考えています。香を入手して△2四香が後手の狙い筋ですが、5筋の歩が切れる関係で▲5四歩と急所への反撃を許すため、なかなか指しにくい手順です。

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おやつ

15時、おやつの時間になりました。藤井王座は「ザクザク・もちもち食感 和風ミニパフェ」とアイスレモンティー、伊藤叡王は「木漏れ日のワッフル 常磐ホテル風…」とアイスティーを注文。パフェは常磐ホテルの社員が考案したメニューで、抹茶アイス・小豆あん・白玉に黒蜜が添えられています。ワッフルはバニラアイスをのせ、コーヒーの風味がアクセントになった一品です。

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現地大盤解説会始まる

14時から現地大盤解説会が始まりました。最初に登壇したのは藤井猛九段と山田久美女流四段の同門コンビ。藤井猛九段は王座戦で第48期と第58期に挑戦を決めています。どちらも羽生善治王座(当時)とタイトルを争いましたが、敗退して王座獲得はかないませんでした。当時のエピソードを交えながら、まずは盤外のトークに花を咲かせていました。

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対局再開

昼食休憩明けの対局再開が近づいて藤井王座が戻り、伊藤叡王は定刻の13時を少し過ぎてから対局室に入りました。両対局者とも表情が険しく、勝負どころを迎えていることがうかがえました。

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昼食休憩

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12時10分、藤井王座が29分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲伊藤叡王57分、△藤井王座2時間12分。昼食は両者とも「常磐名物 カレーうどん御膳」とウーロン茶を注文しました。カレーうどんにはカツオ出汁の和風ポークカレーを使い、甲州小梅のひとくちおにぎり、切り干し大根、果物の「あり」と柿がセットになっています。「あり」は梨の縁起を担いだ呼び方です。対局は13時に再開されます。

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王座が打って出る

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藤井王座、△6五桂(42手目)と積極的に打って出ました。「桂の高跳び歩のえじき」という格言がありますが、▲6六歩には△7七歩▲6七金△8六歩▲同歩△同飛▲6五歩△9八歩▲同香△8七飛成(参考図)という攻め筋があります。

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端の突き捨てによって△9八歩が入ることがポイントで、参考図は次に△7八歩成▲同銀△8八竜と△9八竜の両狙いになっています。香を入手すれば△2四香が痛打。先手はこう進むと失敗なので、どう対応するか策を練る必要があります。控室では日本将棋連盟常務理事の森下卓九段、取材に訪れた勝又清和七段が飯島八段と継ぎ盤を囲んでいます。飯島八段は「手が広い」とうなっていました。

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因縁の一戦

藤井王座と伊藤叡王が常磐ホテルでタイトル戦を戦うのは今回が初めてではありません。2024年6月20日、第9期叡王戦五番勝負第5局が常磐ホテルで指されました。当時、八冠を保持していた藤井叡王に挑戦者の伊藤七段が勝ち、八冠独占を崩して話題になったことは記憶に新しい出来事です。

今期の王座戦五番勝負はここまでの星取りがタイトル保持者から見て○●●○という並びですが、これは昨年の叡王戦五番勝負と同じ。さらに記録係の福田三段は叡王戦第5局でも記録を取っていました。伊藤叡王は『将棋世界』の自戦記で、振り駒の際に入念に振ってもらったので後手番を引いても諦めがついた、という旨を記しています。

藤井王座が叡王戦の借りを返すか、伊藤叡王が初タイトル獲得の地で二冠の栄誉を手にするか。因縁の一戦の行方に注目です。

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常磐ホテル

対局場の常磐ホテルは1929年創業と長い歴史があり、皇室御用達の格式あるホテルで「甲府の迎賓館」とも呼ばれます。囲碁・将棋のタイトル戦の定宿として知られ、1954年に王将戦七番勝負第6局の大山康晴王将-升田幸三八段(肩書は当時)戦が行われて以来、数多くのタイトル戦が行われてきました。2階にある「名人の小径」では対局時の写真をはじめ、貴重な資料が展示されています。

王座戦の開催は2020年以来5年ぶりです。この年の第68期五番勝負は永瀬拓矢王座(当時)に久保利明九段が挑戦したシリーズ。常磐ホテルで行われた第5局を永瀬王座が制し、防衛を決めました。

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観戦記情報

本局の観戦記は上地隆蔵さんが担当します。今日の日本経済新聞には、若島正さんが執筆した今期五番勝負第2局の観戦記が掲載されています。

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