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2025年9月

2025年9月 3日 (水)

対局検分(3)

Dsc_8134_227(最初に並べた駒を右にまとめて、2組目の駒を並べる。これを繰り返して、すべての駒の感触を確かめた)

Dsc_8147_229(佐藤康九段に「どれがいいですか」と問われ、藤井王座は苦笑。どれも甲乙つけがたい逸品だった)

20250903ouzakenbunfujiisoutaitoutak (少考して「いちばん最初のものがいいです」とのこと。伊藤叡王も同意したため、掬水作・菱湖書に決まった。写真では白い布に近く、いちばん奥にあるもの)

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(紋蛇)

対局検分(2)

Dsc_8120_223(盤駒は地元の支部が準備したもの。佐藤康九段が4種類の駒があることを説明した)

Dsc_8126_224(桐箱を開けてみると、駒が丁寧に紙に包まれていたので、大急ぎで開封する)

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(紋蛇)

対局検分(1)

記者会見終了後、両対局者は対局場のホテルに戻りました。予定通り、16時から対局検分が行われています。

Dsc_8112_219(伊藤叡王が下座に着く。畳は日本から運ばれたものだ)

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Dsc_8116_221(藤井王座が入室)

Dsc_8119_222(佐藤康九段が声をかけて、検分開始)

(紋蛇)

記者会見(5)

Dsc_8092_267(両対局者から色紙の記念品が贈呈された)

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Dsc_8099_271 (最後は外で記念撮影)

(紋蛇)

記者会見(4)

Dsc_8082_260(質疑応答の様子)

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―― 伊藤叡王という存在について。
藤井 これまでに3度タイトル戦で対戦しまして、対局を通じて伊藤叡王の強さを感じています。最近の対局を見ても、手厚さや鋭さが増していると感じます。同い年ではありますが、将棋の棋風という点では異なるところもあると感じていて、伊藤叡王の対局や指し手を見て勉強にもなりますし、刺激になる存在です。

―― 直近の叡王戦では敗れ、リベンジマッチとなる。その反省と今回に向けて。
藤井 昨年の叡王戦では伊藤叡王の強さに加えて、自分自身についての課題を感じました。特に時間配分についてがありまして、今回も叡王戦と長さは違うものの、同じチェスクロック制の対局で、時間の使い方が重要なポイントだと考えています。そういったところを意識をしながら、叡王戦よりも内容の濃い将棋を指したいと思っています。

―― 勝ち続ける中で自身のなかで心境の変化は生まれるのか。
藤井 公式戦の対局が続き、勝つときがあれば負けるときもあります。わたしの場合は勝敗そのものは意識せず、内容に着目して学びを得ていくことを重視しています。続けていくことが基礎的であり、最も重要なことだと感じますから、具体的な目標をはっきり設定するというよりも、目の前の一局に全力を尽くすことに重きを置いています。

―― これからの時代に、どのような将棋を見せるのが大事か。
藤井 リアルタイムでの中継が普及し、見て楽しむファンも増えました。プレイヤーとしては、最後まで対局を楽しんでいただけるよう、面白い将棋を指したいと思っています。海外を含めた将棋の普及という点についても、いまはインターネットを通じてその機会が拡大しています。将棋界全体として、そういった機会を生かして普及に取り組んでいけたらと思います。

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―― 二冠目に対する意気込みについて。
伊藤 藤井王座は常に素晴らしい将棋を残され、自分もそういった姿勢に大きく感銘を受けています。どういった戦いができるかわからない部分がありますが、この一年間で成長できたところを見せられたらと思います。

―― 勝ち続ける中で自身のなかで心境の変化は生まれるのか。
伊藤 棋士になってから、タイトル獲得を目標に続けてきました。獲得後は注目していただく舞台も多く、内容を高めることを意識しています。棋譜を作り上げていくプロセス、対局中の集中力などを磨いていけたらいいと思っています。

―― これからの時代に、どのような将棋を見せるのが大事か。

伊藤 藤井王座が突出して強いという状況が続いており、そこに迫っていく棋士がいることでさらに盛り上がると感じます。注目していただける舞台で、面白い熱戦を指すことで将棋に注目していただける方がいればうれしく思います。

(紋蛇、書き起こし=武蔵)

記者会見(3)

Dsc_8062_246(清水市代・公益社団法人日本将棋連盟会長
「本対局は、シンガポール建国60周年を記念した文化交流事業の一環として、在シンガポール日本国大使館、Japan Creative Centreをはじめ、多くの皆様のご支援とご協力のもと実現いたしました。
私事で恐縮ですが、初めての海外はタイトル戦の対局で、アトランタでした。他国の文化と世界の大きさに初めて触れさせていただいたことで、それまでの女流棋士としての悩みが小さく思えたことと、日本を離れて初めて、日本の伝統文化のいいところを再発見するきっかけにもなりました。
シンガポールと日本は長年にわたり、友好関係を築いてまいりましたが、今回の王座戦を通じて、将棋という日本の伝統文化が新たな形で紹介されることは、両国の文化的なつながりをより深めるものと確信しております。
また、対局以外にも、学校訪問や将棋教室など、シンガポールの皆様と交流させていただく機会も予定されており、将棋が世代を超えて、国を越えて、心と心をつなぐ存在であることを実感していただける機会になることを期待しております」

Dsc_8065_250 (藤井聡太王座)
「将棋は大変面白いゲームですが、まだ世界で十分に認知されているとはいいがたく、いい方を変えれば、これから多くの方々に知っていただく余地を残しているということになります。今回の王座戦第1局をきっかけとして、興味をもってくださる方が増えることを心より願っています。
昨日の朝に到着して、マーライオンを見学したりとシンガポールならではの時間を楽しむことができました。明日の対局も、ほどよくリラックスした状態で臨むことができそうです。
将棋の魅力を多くの方にお伝えできるような熱戦となるよう、力を尽くしたいと思っています」

Dsc_8069_272(挑戦者の伊藤叡王)

「藤井王座は常に素晴らしい内容の将棋を指されて結果を残し続けておられ、大きな刺激を受けております。盤を挟む度に多くの学びがあり、私自身、対戦を重ねることで大きく成長することができたと感じております。今回は久々の対戦ということで、いままでとはまた違ったシリーズになるのかなという予感もありますが、挑戦する気持ちを持ちつつ、一手一手最善を追求していい内容の将棋をお見せできればと思っております」

Dsc_8073_257(立会人の佐藤康九段)

「私事になりますが、約32年前にシンガポールで対局をさせていただいたことがありました。今期の王座戦五番勝負はタイトルホルダー同士の若い同学年のお二人の頂上決戦が実現しました。今回で4度目のタイトル戦での激突となります。現代将棋はAIの進歩もあり、一段と棋士の進化も著しく、その最先端を走っているお二人の新たな世界が紡がれるのではないかと思います。研究のみならず卓越した技術、謙虚な姿勢、タフな精神力もあわせ持つお二人による素晴らしい勝負となり、新たな名局、歴史が刻まれることとなるでしょう。また、お二人の和服姿や対局にまつわる日本の伝統文化、様式美にもご注目いただければと思います。私も立会人として対局が滞りなく行われていくよう、務めてまいりたいと思います」

(紋蛇、書き起こし=武蔵)

記者会見(2)

Dsc_8034_243(石川 浩司・駐シンガポール日本国特命全権大使 )
「将棋は日本における長い歴史の中で発展し、受け継がれてきた伝統文化です。その将棋のタイトル戦がシンガポールで行われるのは、日本文化をシンガポールのみなさまに紹介する貴重な機会であるとともに、両国の文化交流のさらなる進化につながるものと確信しております。本年2025年はシンガポール建国60周年であり、またちょうど今週、アジア文明博物館では将棋を含むさまざまな盤上ゲームに関する特別展が開幕すると承知しております。さらに来年2026年は日本とシンガポールの外交関係樹立60周年です。今回の対局は日本とシンガポールのさらなる友好関係の発展に大いに寄与するものと確信しております。今回、藤井聡太王座と挑戦者の伊藤匠叡王による真剣勝負は、将棋に初めて触れる方々にも大きな感動を与えることでしょう。シンガポールではシャンチーという日本の将棋によく似た盤上競技が広く楽しまれていますが、この機会にぜひ将棋ならではの奥深い魅力を感じていただければと思います」

Dsc_8041_244(クレメント オン・アジア文明博物館館長)

「シンガポールと日本は、長きにわたり、相互の尊敬と共通の価値観、そして豊かな文化交流によって築かれた友情を分かち合っております。知的探究であり、生きた芸術でもある将棋は、その絆を象徴的に表すものといえます。本日の藤井聡太王座と伊藤匠叡王、二人の卓越した棋士による対局は、古来の伝統を現代に引き継ぐものであり、戦略の妙のみならず、将棋という文化がもつ奥深さを私たちに示してくれることでしょう。
アジア文明博物館では、このお祝いの場に加われることを誇りに思います。9月5日開幕の企画展『Let’s Play! Art & Design of Asian Games』では、将棋をはじめとする伝統的な遊びが、アジア諸文化の創造性や価値観、精神をいかに体現しているかを探ります。今回、実際に王座戦で使用される将棋盤と駒を展示できることは大きな名誉であり、来館されるシンガポールの方々や海外からの訪問者にとって、まさに歴史がつくられる瞬間に立ち会う稀有な機会となることでしょう。
また、32年前にシンガポールで対局された佐藤康光九段を再びお迎えできることも大きな喜びです。佐藤先生のご臨席は、将棋が知力や競技にとどまらず、世代や地域、人々の心、時空を超えて結びつける架け橋であることを示す生きた証であります。この対局と展示が、シンガポールの人々に日本文化へのさらなる関心を呼び起こし、両国の友好と協力の新たな機会を生み出すことを願ってやみません。
 『遊び』の美しさ、『伝統』の力、そして芸術と文化が生み出す永続的な絆を、共に祝い続けてまいりましょう」

Dsc_8048_245(長谷部剛・株式会社日本経済新聞社代表取締役社長)

「将棋の王座戦は1952年に、囲碁の王座戦ともに創設され、今年で第73期を迎えました。73年の歴史の中で海外対局は今回が3度目となります。1度目は2000年の第48期で舞台は中国・広州、2度目はその2年後で、両対局者がお生まれになった2002年の第50期で中国・上海で、今回のシンガポール対局は将棋王座戦としては23年ぶりの海外対局となります。
近年、日本文化には海外から熱い目が注がれています。日本経済新聞社では文化芸術分野の報道・紹介にも力を入れており、日本の伝統文化の一つ、将棋のタイトル戦を海外で行うことは日本文化の海外発信や文化交流の促進にもつながると考えております。
当社はグローバルメディアを掲げており、とりわけアジア報道に注力しています。30年前から『アジアの未来』と題したシンポジウムを毎年開いており、亡くなられたリー・クアンユー元首相は、亡くなる数年前まで欠かさず、お越しになられておられました。
文化交流という面でも、オペラを日本に呼んだり、パリのオルセー美術館の収蔵作品の展覧会を企画、開催したりしておりますが、一方で日本の文化である能の舞台をパリで公演しております。、八冠のうち七冠を持つ藤井王座と、残り一冠を持つ伊藤叡王ですから、まさに現時点での頂上対決になります。ぜひこれを機会にシンガポールでも将棋のへの関心が高まって、文化交流が進んでいければと願っております」

(紋蛇、書き起こし=武蔵)

記者会見(1)

現地のスケジュール2日は観光、3日は記者会見と対局検分・前夜祭、4日が対局です(5日は現時点で非公表)。2日の様子は明日に掲載し、先に3日の模様からお伝えします。

記者会見は14時よりJCC(Japan Creative Centre)で開催されました。

Dsc_8012_237(JCC。日差しが強いが、東京に比べると気温が数度低いので、涼しく感じる)

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(開所は2009年)

Dsc_8019_240(大阪万博のポスターが貼られていた)

Dsc_8022_241(14時、記者会見開始)

(紋蛇)

なぜシンガポールで対局?

第73期王座戦五番勝負第1局のシンガポール対局は、シンガポール建国60周年を記念した文化交流事業の一環として、在シンガポール日本国大使館、及びJapan Creative Centreの後援を受けて実施されます。

海外対局は画像の通りです(クリックすると拡大します)。王座戦の対局は黄色でマークしてあります。

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画像の※(注)は以下の通りです。

※1 内藤九段は第1回棋王戦優勝者。千日手指し直し局。
※2 海外対局初(2025年現在、唯一)の持将棋。谷川先手。
※3 女流棋戦初の海外対局。シリーズを制した清水女流三冠は当時の女流タイトルを独占。
※4 一般棋戦での海外対局。現在の朝日杯将棋オープン戦の前身棋戦。
※5 千日手指し直し局。
※6 2日目21時51分に2回目の千日手。その指し直し局を第2局予定の対局場で行う。なお、1回目の千日手局は羽生先手。
※7 初代永世竜王をかけたシリーズ。渡辺竜王が将棋界初の3連敗後4連勝で永世竜王の資格を得る。

***************以下は、日本将棋連盟のリリースになります***************

将棋の海外開催は近年、積極的に進めており、2023年の第94期ヒューリック杯棋聖戦(ベトナム・ダナン)では大きな反響を呼びました。今回の王座戦でも、将棋文化の国際的な魅力の発信と、新たなファン層の獲得を目的とした取り組みを行っていきたいと思います。
日本経済新聞社、並びに日本将棋連盟は、伝統文化である将棋を通じて、日本とシンガポールの文化的・人的交流がさらに深まることを願っております。

Q. なぜシンガポールで対局なのですか?
A. 多国籍文化の中心地であり、日本文化への関心も高いシンガポールは、将棋の魅力を発信する拠点として非常に適していると考えます。

Q.シンガポール建国60周年との関連について。
A. 2025年はシンガポール建国60周年にあたります。この節目を記念する文化交流事業の一環として、在シンガポール日本大使館およびJapan Creative Centreより後援を頂き、本対局の開催が実現しました。

Q.現地での関連イベントは予定されていますか?
A. 対局にあわせて、大盤解説会、将棋教室や交流会などを実施します。現地の皆様にも将棋の奥深さと楽しさに触れていただける機会を作る予定です。

Q.対局は一般公開されますか?現地で観戦できますか?
A. 現地では、大盤解説を設ける予定です。オンラインでの中継(ABEMA、日経ライブ、囲碁将棋チャンネル)でも行われる予定です。 

Q. シンガポール以外でも今後、海外対局の予定はありますか?
A. 具体的な予定は未定ですが、将棋の国際的な普及・発信は中長期的なテーマとして位置づけており、他国での開催も今後検討してまいります。

(紋蛇)

開幕戦はシンガポール

藤井聡太王座に伊藤匠叡王が挑戦する、第73期王座戦五番勝負が9月4日に開幕します。第1局の舞台は、シンガポール「アマラ・サンクチュアリ・セントーサ」。王座戦では23年ぶり、将棋界では2年ぶり26回目の海外対局が実現しました。
藤井王座と伊藤叡王が公式戦で対戦するのは、2024年の叡王戦五番勝負第5局以来のこと。伊藤がタイトルを初獲得し、藤井の八冠独占が崩れた大勝負から久々の対戦です。藤井王座が3連覇するのか、それとも伊藤叡王が自身初の二冠に輝くのか。今後の将棋界を占う重要な番勝負になるでしょう。
第1局は9月4日の午前9時(現地時間。日本時間は午前10時)に開始されます。持ち時間は各5時間(チェスクロック使用、使いきると1手60秒未満での着手)。昼食休憩は12時10分から13時、夕食休憩は17時から17時30分。第1局の先後は振り駒で決定します。
立会人は佐藤康光九段、新聞解説は中村太地八段、記録係は齊藤優希四段、現地大盤解説会解説は森内俊之九段、聞き手は北尾まどか女流二段と和田はな女流1級が務めます。観戦記は野月浩貴八段が執筆します。
棋譜コメントは武蔵、ブログ更新は紋蛇が担当します。よろしくお願いします。

【お知らせ】
シンガポールは、日本とマイナス1時間の時差があります。例えば、日本が午前11時のときはシンガポールだと午前10時です。
今回の記事では、基本的に現地時間で時刻を表記します。ブログ記事の投稿時のタイムスタンプは、日本時間です。

【主催:日本経済新聞社】
https://www.nikkei.com/
【主催:日本将棋連盟】
https://www.shogi.or.jp/  

【特別協賛:東海東京証券株式会社】
https://www.tokaitokyo.co.jp/
  

【第1局協賛:全日本空輸株式会社、三菱商事株式会社、管清工業(かんせいこうぎょう)株式会社】

Dsc_7599_116(一行は2日朝にシンガポールに到着し、対局場に向かった。写真は対局場での藤井王座と立会人の佐藤康九段)

Dsc_7602_117(伊藤叡王)

(紋蛇)

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