記者会見(4)
―― 伊藤叡王という存在について。
藤井 これまでに3度タイトル戦で対戦しまして、対局を通じて伊藤叡王の強さを感じています。最近の対局を見ても、手厚さや鋭さが増していると感じます。同い年ではありますが、将棋の棋風という点では異なるところもあると感じていて、伊藤叡王の対局や指し手を見て勉強にもなりますし、刺激になる存在です。
―― 直近の叡王戦では敗れ、リベンジマッチとなる。その反省と今回に向けて。
藤井 昨年の叡王戦では伊藤叡王の強さに加えて、自分自身についての課題を感じました。特に時間配分についてがありまして、今回も叡王戦と長さは違うものの、同じチェスクロック制の対局で、時間の使い方が重要なポイントだと考えています。そういったところを意識をしながら、叡王戦よりも内容の濃い将棋を指したいと思っています。
―― 勝ち続ける中で自身のなかで心境の変化は生まれるのか。
藤井 公式戦の対局が続き、勝つときがあれば負けるときもあります。わたしの場合は勝敗そのものは意識せず、内容に着目して学びを得ていくことを重視しています。続けていくことが基礎的であり、最も重要なことだと感じますから、具体的な目標をはっきり設定するというよりも、目の前の一局に全力を尽くすことに重きを置いています。
―― これからの時代に、どのような将棋を見せるのが大事か。
藤井 リアルタイムでの中継が普及し、見て楽しむファンも増えました。プレイヤーとしては、最後まで対局を楽しんでいただけるよう、面白い将棋を指したいと思っています。海外を含めた将棋の普及という点についても、いまはインターネットを通じてその機会が拡大しています。将棋界全体として、そういった機会を生かして普及に取り組んでいけたらと思います。
―― 二冠目に対する意気込みについて。
伊藤 藤井王座は常に素晴らしい将棋を残され、自分もそういった姿勢に大きく感銘を受けています。どういった戦いができるかわからない部分がありますが、この一年間で成長できたところを見せられたらと思います。
―― 勝ち続ける中で自身のなかで心境の変化は生まれるのか。
伊藤 棋士になってから、タイトル獲得を目標に続けてきました。獲得後は注目していただく舞台も多く、内容を高めることを意識しています。棋譜を作り上げていくプロセス、対局中の集中力などを磨いていけたらいいと思っています。
―― これからの時代に、どのような将棋を見せるのが大事か。
伊藤 藤井王座が突出して強いという状況が続いており、そこに迫っていく棋士がいることでさらに盛り上がると感じます。注目していただける舞台で、面白い熱戦を指すことで将棋に注目していただける方がいればうれしく思います。
(紋蛇、書き起こし=武蔵)