図で伊藤叡王は1時間16分の考慮に沈み、▲7九玉と引きました。以下△6二銀▲5六銀△3六歩▲2六飛と進んでいます。
▲5六銀から▲2六飛は穏やかな戦いを目指す方針です。▲5六銀と引いたのは▲3三角成に△同桂の銀取り、▲2六飛と浮いたのは△3七歩成▲同桂△3六歩を受けています。
(紋蛇)
シンガポール共和国は(以下シンガポール)、アジア有数の経済大国かつ金融国家です。東南アジアのほぼ中心、北緯1度17分、東経103度51分に位置します。赤道に近いとあって年間を通して高温多湿のようですが、現在は30度前後。雨季は日本でいう秋冬の時期にやってくることもあり、「東京に比べると数度低いので涼しい」という声も関係者から上がりました。
国土は、シンガポール島および60以上の小規模な島々から成り立っています。対局が行われるセントーサ島は、シンガポール島の南に位置するリゾート地として開発が進んでいます。セントーサ島とシンガポール島は橋でつながっており、徒歩や自動車だけではなくモノレールやロープウェーを使って移動するのも可能です。ユニバーサルスタジオは人気の観光スポットのひとつです。前夜祭では、和田はな女流1級が「高校の修学旅行でシンガポールで、ユニバーサルスタジオは思い出の観光地。今回は空き時間にひとりでアトラクションを楽しんだ」と話していました。
日本からシンガポール共和国のフライトは、約7時間。国土は東京23区よりやや大きいです。多民族国家として知られ、日本の外務省によれば人口のうち中華系は74%、マレー系14%、インド系9%。国語はマレー語で、公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語が使われています。食も文化も多種多様であり、高層ビルが立ち並ぶ繁華街、緑豊かな海のリゾートゾート、それぞれの民族や植民地時代の文化が反映された街などのさまざまなエリアがあります。
2025年はシンガポール建国60周年に当たります。1965年8月9日にマレーシア連邦から脱退してシンガポール共和国として独立したため、8月9日はシンガポールの独立記念日「ナショナルデー」です。街中には至るところに国旗や60周年を祝う垂れ幕が飾られていました。来年2026年は、日本とシンガポールの外交関係樹立60周年を迎えます。
将棋の公式戦が行われるのは、1993年の第6期竜王戦第1局▲羽生善治竜王-△佐藤康光七段戦以来、2回目です(竜王戦の対局場は別のホテル)。戦型は先手のひねり飛車。途中で羽生竜王が歩をわざと自陣に打って、相手の様子を見ながら敵陣に伸ばしていく高度戦術が話題になりました。開幕戦の結果は羽生勝ちながら、シリーズは佐藤康七段が4勝2敗で制して初のタイトルを獲得しました(肩書・段位は当時)。
藤井王座はベトナム・ダナン以来、2回目の海外対局。伊藤叡王は初です。伊藤叡王によれば、10数年ぶりの海外旅行のようで、前回は小学生のアマチュア時代に世界オープン将棋選手権に参加するため、東欧のベラルーシにいったそうです。
(来年2026年は、日本とシンガポールの外交関係樹立60周年)
藤井王座は2手目△3四歩から雁木に組み、先手は急戦に出ました。現代将棋では大きなテーマのひとつですが、先手の左美濃と早繰り銀の組み合わせ、後手が居玉で7一銀型のまま△7四歩と突いたのが珍しいようです。
▲3五歩に△7五歩▲同歩△4五歩▲同銀△3五歩と進み、伊藤叡王が長考に沈んでいます。
先手が踏み込むなら▲2四歩△同歩▲3三角成△同桂▲5四銀△同銀▲2四飛の十字飛車。それは銀取りと飛車成りが受かりませんが、先手が銀損しての攻めなので、常套手段でもわずかな形の違いによって成立するかは何ともいえません。
▲2四歩のほかに▲7四歩も有力で、次に▲7三歩成△同桂▲7四歩△6五桂▲9五角の攻めがあります。後手は△6二銀と備えてどうか。
もっと先手がじっくり指すなら、▲5六銀と戻るのも考えられます。手が広い局面で、悩ましいようです。
(紋蛇)