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2025年7月

2025年7月 3日 (木)

五番勝負日程

藤井聡太王座と伊藤匠叡王による五番勝負は、以下の日程で開催されます。

第1局 9月4日(木) シンガポール「アマラ・サンクチュアリ・セントーサ」
第2局 9月18日(木) 兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」
第3局 9月30日(火) 愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」
第4局 10月7日(火) 神奈川県秦野市「元湯 陣屋」
第5局 10月28日(火) 山梨県甲府市「常磐ホテル」

第1局はシンガポール・セントーサ島の上記ホテルで行われます。
海外対局の開催は2023年、ベトナムのダナンで行われた第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局以来2年ぶり。王座戦の海外対局は第50期第3局(2002年、中国・上海)以来23年ぶり。シンガポールでの公式戦は第6期竜王戦七番勝負(1993年、第1局)以来32年ぶり。


以上で本日の中継を終わります。ご観戦いただきまして、ありがとうございました。

(牛蒡)

大盤会場

会見後の大盤会場では、藤井猛九段、佐藤天九段、安食女流二段、野原女流二段が解説を続けていました。さらにサプライズゲストで伊藤叡王が登場。大きな拍手で迎えられました。

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Dsc_0553(藤井猛九段と佐藤天彦九段)

Dsc_0561(安食総子女流二段と野原未蘭女流二段)

Dsc_0683(伊藤叡王が登場。本日一番の笑顔だった)

Dsc_0641(感想戦を終えた直後の自戦解説は貴重だ)

(牛蒡)

記者会見

感想戦後に伊藤叡王の記者会見がありました。

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――今日はどのような気持ちで対局に臨んだか。
伊藤 羽生先生と大きな一番で対局できるのはうれしいことで、楽しみにしていました。始まってしまえば普段通り指すことができたかと思います。

――1年以上タイトル挑戦から遠ざかっていた。
伊藤 タイトル挑戦になかなか絡むことができなくて、まだまだ実力が足りていないのかなと感じてはいたんですけど、今日は久々のチャンスでしたので、なんとかものにできればという気持ちでした。

――今期の好結果の要因についてどう考えるか。
伊藤 今期は本戦から出場することができて、当然、一局一局、強敵との対戦になるんですけど、比較的決断よく指していたのがよい結果につながったのかなと感じています。

――藤井聡太王座とのタイトル戦は久しぶりになる。
伊藤 藤井王座とタイトル戦で対戦することは各棋戦で目標にしているので、それが一つかなったのはうれしいことだと思っています。公式戦でも1年以上対戦がなかったと思うので、こちらが頑張らないとなかなかいい勝負にならないと思うので、しっかりと準備して充実したシリーズにしたいと思います。

――深い研究が光った一局だった。どのあたりまで考えたことがあったか。
伊藤 本局はここ最近、角換わりの一つのテーマとして考えていた展開でした。△8六歩に▲7六金と上がられてからは細い攻めをうまくつなげられるかという展開かと思っていて、そのあとも事前に考えたことはあったんですが、実戦で改めて指してみるとまだまだわからないことが多く、非常に難しい将棋だと感じていました。

――第1局がシンガポールで行われる。海外に行った経験と、海外対局について。
伊藤 海外は最後に行ったのも10年以上前だと思うので、パスポートも更新しないといけないですし、なかなか海外に行く機会はないので、こうした機会をいただくのはうれしいです。シンガポールに行くのは初めてなので楽しみにしています。

――叡王防衛から王座挑戦となった。モチベーションが変わるきっかけがあったのか。
伊藤 叡王を獲得してから1年間は次の防衛戦に向けてプレッシャーも少なからずありました。叡王戦は大変なシリーズだったんですけど、よい結果で終えることができて、それ以降は伸び伸び過ごすことができたと思います。

――藤井王座との距離が広がったと話していた。
伊藤 藤井王座と公式戦で対局するには、こちらが勝ち上がっていかないといけない状況ですので、1年以上対局がなかったのは残念だったんですけど、今回挑戦することができたので、気持ちを前向きに取り組んでいきたいと思います。開幕まで時間があるので、しっかり準備したいと思います。 

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――タイトル保持者同士で戦うことについて、心境の変化はあるか。
伊藤 以前は1局も勝てていない状況で対局が続いていたので、そういう点では少し伸び伸びと臨めるかなと思うのですが、最近の藤井王座の将棋を見ていると高いレベルで充実されていると感じるので、こちらが努力してどれだけ食いつけるかという戦いになるのかなと思います。

――研究の深さに定評のある伊藤叡王に対し、羽生九段が研究勝負に飛び込んだ。どういう印象を持ったか。
伊藤 先手ですと矢倉をよく指されている印象があったので、その可能性が高いと思い、角換わりの定跡形でこられるのは本命視はしていなかったですが、羽生先生らしい選択と感じました。

――本局はどのあたりまで準備していたか。
伊藤 ▲7六金と上がられてからはこちらに選択の余地がないと思っていたので、仕方ないところかなと思っていました。

――シンガポールについて、楽しみにしていることは。
伊藤 あまり詳しくないので、これから調べてみようとは思うんですけど、街がきれいという印象があるので、美しい街並みを楽しみにしたいと思います。

――海外はいつ頃に行ったのか。
伊藤 いちばん最近だと、小学校高学年の頃に、ベラルーシで行われたヨーロッパの将棋大会に参加したことがありました。

【World Open Shogi Championships 2013 in Minsk|WOSC】
https://euro2013.shogi.by/en/tournaments#rwosc
【World Open Shogi Championships 2013 in Minsk|Photo】
https://euro2013.shogi.by/en/gallery#photos

――藤井王座の最近の戦いぶりについてどう思うか。
伊藤 藤井王座は近年、序盤で自分から趣向を凝らす展開もよく指されていると感じますし、中終盤は相変わらず精度の高い手を積み重ねられているという印象を持っています。

――羽生九段とは約2年半ぶりの対局だった。そのときの印象から変わったことはあるか。
伊藤 前回の対戦は初手合だったんですが、そのあとABEMAトーナメントの団体戦で指名をいただいたこともあって、将棋を教わる機会もありました。羽生先生の強さを常に感じていましたので、公式戦で対戦できるのは非常に楽しみという思いが強くありました。

(牛蒡)

感想戦

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Dsc_0373(感想戦は17時40分に終了した)

(牛蒡)

終局直後

終局直後にインタビューがありました。

Dsc_0250(伊藤叡王は初めて王座に挑戦する)

――本局を振り返って。
伊藤 途中まで前例のある進行で、△8七歩成から△8六歩をやってみたかったんですけど、ずっと際どい攻防が続いているのかなと思いました。

――▲7八歩のあたりで長考した。
伊藤 こちらもいくつか選択肢がある気がしていたんですけど、本譜も▲5一銀を利かされてしまったので、かなり怖い格好だと思いながら指していました。

――手ごたえを得た局面は。
伊藤 ▲7二馬が詰めろにならなければ、少し勝っているのかなと思いました。

――挑戦権を獲得した。
伊藤 タイトル戦に出ることは一つの目標だったので、よかったかなと思います。

Dsc_0241(羽生九段は時間切迫が響いたか)

――本局を振り返って。
羽生 途中までは前例のある展開で、どうなるかと思ったんですけど、△6五銀と出られる形になって応対が分からなかったですね。もうちょっとマシな手はあったかもしれないですけど、あまり自信のない展開になってしまいました。

――終盤の形勢はどのようにみていたか。
羽生 △8五桂のときに▲8八香を打つか、かなり悩んだんですけど、それをやるしかなかったかもしれないですね。それでもあまり自信はないです。

――終盤で▲4四桂と王手をしたあたりは。
羽生 駒が1枚足りない形なので、あのへんはもうダメだと思います。

――2年連続で挑戦者決定戦の敗戦となった。
羽生 まだまだいろいろ足りないと思っています。

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(牛蒡)

伊藤叡王が王座初挑戦

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伊藤叡王が羽生九段に勝ち、王座初挑戦を決めました。終局時刻は17時5分。消費時間は▲羽生九段5時間、△伊藤叡王2時間21分。五番勝負第1局は9月4日(木)、シンガポール「アマラ・サンクチュアリ・セントーサ」で行われます。

(文)

最終盤の変化

250703_104_2控室では、▲4四桂にまず△同歩▲7二馬△6五桂▲5四馬△同歩▲6二飛成△3三玉(変化1図)が調べられました。後手玉が詰むかどうか。

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検討の結果、後手玉は詰みませんでした。

では変化1図に至る手順の途中、▲5四馬に代えて▲6五飛はどうか(変化2図)。

250703_104ss_3これも△8五銀打▲同飛△同銀▲7五玉△7四飛で後手が勝ちそうです。

伊藤叡王は時間を使っています。控室の検討のように、変化をひとつずつ潰していっているものと思われます。伊藤叡王には、変化をしらみつぶしに解決していくだけの残り時間があります。

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(牛蒡)

勝負の際

250703_104伊藤叡王は▲5一銀に△3二玉(図)と逃げました。代えて△3三玉は▲4二銀打を嫌ったものと推測できます。

関係者控室に深浦康市九段が来訪。近藤正七段と検討しています。すぐに(1)▲6二銀不成は△8五銀▲7五玉△7七馬で受けが難しいため、(2)▲7六玉はどうなのか……と調べ始めたところ、羽生九段は(3)▲4四桂!を指しました。残り時間の少ない状況で長い勝負にしては、いずれは時間切迫に追い込まれます。ここは短期決戦で勝負すべきと判断したのかもしれません。

Dsc_0196(深浦九段は、自身の対局を終えて関係者控室へ。近藤正七段とは同学年)

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一瞬の機

250703_103これまで後手は△7五香(94手目)や△8五桂(98手目)で先手玉をしばりつけてきました。しかし、△7三桂(102手目)は包囲網がわずかに緩んだ感もあります。この機を羽生九段は逃しませんでした。

受け一方の展開から一転、▲5一銀(図)がハッとする鋭手。(1)△5一同玉は▲7一馬が詰めろになります。詰み手順は▲6二馬△4一玉▲5二金△3二玉▲4一銀△3三玉▲5一馬まで。後手玉は△3三玉から△2四玉があるのが強みでしたが、その脱出ルートを馬が消しています。(2)△3三玉が難敵ですが、どこかで△6五桂に▲6二銀不成に入れば、銀が7三に利いて先手玉に逃れ筋が生じるかもしれません。▲5一銀は流れを変える一手になる可能性を秘めています。

Dsc_0165_2(▲5一銀は羽生マジックの一手になるか)

(牛蒡)

羽生九段、残り1時間を切る

250703_099羽生九段は37分の考慮で▲7八歩を指しました。手駒の歩で△7七馬を受けた手です。ただ、飛車の横利きを止めてもいるため、後手には△9八馬があります。それを承知で指したのだから、羽生九段の受けの勝負手といえるでしょう。

先手玉が助かるすべは、入玉か、右辺への玉の脱出くらいしかありません。現実的には後者を目指すしかないでしょう。このあとも綱渡りの受けが求められます。残り時間は▲羽生49分、△伊藤4時間3分。

Dsc_9662(東京の旧将棋会館。電柱につけられていた「将棋会館」の看板が外されていた)

(牛蒡)

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