記者会見
感想戦後に伊藤叡王の記者会見がありました。
――今日はどのような気持ちで対局に臨んだか。
伊藤 羽生先生と大きな一番で対局できるのはうれしいことで、楽しみにしていました。始まってしまえば普段通り指すことができたかと思います。
――1年以上タイトル挑戦から遠ざかっていた。
伊藤 タイトル挑戦になかなか絡むことができなくて、まだまだ実力が足りていないのかなと感じてはいたんですけど、今日は久々のチャンスでしたので、なんとかものにできればという気持ちでした。
――今期の好結果の要因についてどう考えるか。
伊藤 今期は本戦から出場することができて、当然、一局一局、強敵との対戦になるんですけど、比較的決断よく指していたのがよい結果につながったのかなと感じています。
――藤井聡太王座とのタイトル戦は久しぶりになる。
伊藤 藤井王座とタイトル戦で対戦することは各棋戦で目標にしているので、それが一つかなったのはうれしいことだと思っています。公式戦でも1年以上対戦がなかったと思うので、こちらが頑張らないとなかなかいい勝負にならないと思うので、しっかりと準備して充実したシリーズにしたいと思います。
――深い研究が光った一局だった。どのあたりまで考えたことがあったか。
伊藤 本局はここ最近、角換わりの一つのテーマとして考えていた展開でした。△8六歩に▲7六金と上がられてからは細い攻めをうまくつなげられるかという展開かと思っていて、そのあとも事前に考えたことはあったんですが、実戦で改めて指してみるとまだまだわからないことが多く、非常に難しい将棋だと感じていました。
――第1局がシンガポールで行われる。海外に行った経験と、海外対局について。
伊藤 海外は最後に行ったのも10年以上前だと思うので、パスポートも更新しないといけないですし、なかなか海外に行く機会はないので、こうした機会をいただくのはうれしいです。シンガポールに行くのは初めてなので楽しみにしています。
――叡王防衛から王座挑戦となった。モチベーションが変わるきっかけがあったのか。
伊藤 叡王を獲得してから1年間は次の防衛戦に向けてプレッシャーも少なからずありました。叡王戦は大変なシリーズだったんですけど、よい結果で終えることができて、それ以降は伸び伸び過ごすことができたと思います。
――藤井王座との距離が広がったと話していた。
伊藤 藤井王座と公式戦で対局するには、こちらが勝ち上がっていかないといけない状況ですので、1年以上対局がなかったのは残念だったんですけど、今回挑戦することができたので、気持ちを前向きに取り組んでいきたいと思います。開幕まで時間があるので、しっかり準備したいと思います。
――タイトル保持者同士で戦うことについて、心境の変化はあるか。
伊藤 以前は1局も勝てていない状況で対局が続いていたので、そういう点では少し伸び伸びと臨めるかなと思うのですが、最近の藤井王座の将棋を見ていると高いレベルで充実されていると感じるので、こちらが努力してどれだけ食いつけるかという戦いになるのかなと思います。
――研究の深さに定評のある伊藤叡王に対し、羽生九段が研究勝負に飛び込んだ。どういう印象を持ったか。
伊藤 先手ですと矢倉をよく指されている印象があったので、その可能性が高いと思い、角換わりの定跡形でこられるのは本命視はしていなかったですが、羽生先生らしい選択と感じました。
――本局はどのあたりまで準備していたか。
伊藤 ▲7六金と上がられてからはこちらに選択の余地がないと思っていたので、仕方ないところかなと思っていました。
――シンガポールについて、楽しみにしていることは。
伊藤 あまり詳しくないので、これから調べてみようとは思うんですけど、街がきれいという印象があるので、美しい街並みを楽しみにしたいと思います。
――海外はいつ頃に行ったのか。
伊藤 いちばん最近だと、小学校高学年の頃に、ベラルーシで行われたヨーロッパの将棋大会に参加したことがありました。
【World Open Shogi Championships 2013 in Minsk|WOSC】
https://euro2013.shogi.by/en/tournaments#rwosc
【World Open Shogi Championships 2013 in Minsk|Photo】
https://euro2013.shogi.by/en/gallery#photos
――藤井王座の最近の戦いぶりについてどう思うか。
伊藤 藤井王座は近年、序盤で自分から趣向を凝らす展開もよく指されていると感じますし、中終盤は相変わらず精度の高い手を積み重ねられているという印象を持っています。
――羽生九段とは約2年半ぶりの対局だった。そのときの印象から変わったことはあるか。
伊藤 前回の対戦は初手合だったんですが、そのあとABEMAトーナメントの団体戦で指名をいただいたこともあって、将棋を教わる機会もありました。羽生先生の強さを常に感じていましたので、公式戦で対戦できるのは非常に楽しみという思いが強くありました。
(牛蒡)