【藤井王座の談話】
―― 午前中から激しい戦いになった。形勢について
藤井 △7五歩(24手目)と突き捨て、△4五歩(26手目)のあたりが予定で、相手玉を薄くして実戦的に、と考えていました。そのあと、ゆっくり指していると1歩損が大きいのでどのくらい手を作れるかと思っていましたが、△7七歩成(42手目)の筋で攻め自体はつながりそうだと感じたので、感触としては悪くないと思っていました。
―― 最後、勝ちに近づいたのは。
藤井 ▲3一飛(51手目)のときに、△4一銀と打つ予定でしたが、そこで▲3八飛を見落としていました。△2八角が明らかに空振りのような形になってしまい、嫌な展開にしてしまったと思っていました。本譜は△4一銀(58手目)から△7六歩(60手目)と詰めろをかけて、一手勝ちかと感じました。
―― シンガポールでの対局の感想と、次局に向けての抱負。
藤井 二度目の海外対局で、集中して指すことができました。対局以外も含めて、貴重な経験ができたと感じています。第2局以降は先後が決まった戦いになりますので、次局にむけて準備をしていきたいと思います。
【伊藤叡王の談話】
―― 午前中から激しい戦いになった。形勢について。
伊藤 △7五歩と突き捨てられて、こちらにキズが多い形で神経を使う展開かなと思っていました。▲2六飛(33手目)と浮いた手がまずくて、本譜の△8九との局面が進めてみるとかなり思わしくなく、そのあたりの判断がまずかったと思います。
―― シンガポールでの対局の感想と、次局に向けての抱負。
伊藤 海外対局は初めての経験でどうなるかわからなかったのですが、現地の方々に温かく歓迎していただいて、非常にいい経験をすることができました。シンガポールの方々に感謝したいと思います。本局は精度を欠いてしまったので、しっかり反省して次局に生かしていきたいと思います。
(紋蛇、書き起こし=武蔵)
五番勝負第1局は藤井王座が勝ちました。終局時刻は19時13分。消費時間は、▲伊藤4時間49分、△藤井4時間3分(チェスクロック使用)。勝った藤井王座は防衛に向けて、幸先のいいスタートを切りました。
第2局は9月18日(木)に、兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」で指されます。
(武蔵)
対局場の「アマラ サンクチュアリ リゾート セントーサ」は、シンガポールのセントーサ島に位置する5つ星ホテルです。イギリス植民地時代の建築が特徴のエレガントな空間で、市の中心部からわずか5キロメートルの距離とアクセス抜群。建物の周辺は緑に囲まれており、都会の喧騒を忘れることができます。
https://sentosa.amarahotels.com/
(ホテルが見えてきた。左手が対局場、右手に宿泊施設などがある)
▲3一飛に△4二玉が強気の受け。以下▲3二飛上成△同銀▲2二金と進んでいます。
2八の角に空を切らせるような強襲です。もちろん、藤井叡王もそれを見越して△4二玉と上がり、攻めを呼び込んだのでしょう。控室の検討では実戦的に大変なところもあるようです。
(紋蛇)
17時、この局面で夕食休憩に入りました。ここまでの消費時間は▲伊藤3時間52分、△藤井3時間16分。夕食の注文は、藤井王座がシンガポールチキンライスとオレンジジュース、伊藤叡王はチリクラブ・フライマントゥと冷たい緑茶。対局再開は17時30分です。
チリクラブ・フライマントゥは、シンガポール名物のチリクラブ料理と揚げマントウ(中華風揚げパン)のセット。チリクラブは辛味と甘味が効いたトマトベースのチリソースでカニを炒めた料理。揚げたマントウをこのソースにつけて食べるのが定番です。
(武蔵)