(5・6年生よりも無邪気な質問が飛ぶ。「給食でテンションが上がる食べ物は何ですか?」の問いに
、藤井王座は「ソフト麺がでてくる日が自分にとって一番の当たりで、その日はテンションが上がりました」、伊藤叡王は「揚げパン」と答えた)
(集合写真。現地教員の「チキンライス、大好きー」「スイカジュース、大好きー」の掛け声に従って笑顔を見せた。チキンライスはシンガポール名物、スイカジュースは藤井王座が印象に残った現地飲食で挙げたもの。伊藤叡王もティオン・バル・マーケットと、おやつで飲んでいた)
(紋蛇)
―― 棋士になりたいと思ったのはいつ頃ですか?
藤井 5歳の頃に棋士の存在を知り、10歳ごろから本格的に目指すようになりました。
伊藤 5歳で将棋を始め、小学校で将棋大会に参加する中で、棋士に対する憧れが強くなりました。小学5年生で奨励会に入って、本格的に棋士を目指すようになりました。
―― プロになるまでに一番大変だったことは?
藤井 奨励会入会後に、競争の厳しさや結果が出ないときに苦労しました。ただ、将棋自体は好きだったので、挫折までは感じませんでした。
伊藤 奨励会三段リーグ戦で、結果を出さないと棋士になれない苦しみがいちばん大変でした。それを乗り越えたことで成長につながりました。
―― 負けた時の気持ちはどう切り替えていますか?
藤井 結果より内容に着目して、経験からフィードバックして成長につなげるように心掛けています。
伊藤 負けた悔しさを、反省と次に向けた糧として成長に生かすように意識しています。
―― 普段の将棋の勉強方法は?
藤井 小さい頃から詰将棋を解くのが好きで、それがメインの勉強法でした。いまはAIの力も向上して、それを活用して形勢判断や技術を磨いています。
伊藤 詰将棋や強い棋士の棋譜並べ、同レベルの仲間との実戦で競い合ってきました。
―― 棋士として普段どんな仕事をしていますか?
藤井 主に対局と普及活動が中心になります。わたしは対局に比重が大きく、週1回ほど対局があり、そのほかの日は対局に向けた準備や指した将棋の振り返りが中心となります。
伊藤 藤井王座がおっしゃられたように、対局と普及活動が主な仕事です。イベントに出演して、将棋の魅力が伝わればいいなと思っています。
―― 海外で将棋を指すことについてどう思いますか?
藤井 海外対局は世界の人に将棋の魅力を知ってもらう、貴重でいい機会です。
伊藤 わたしは今回が初めての海外対局でした。とても貴重な体験となり、今後も機会があれば挑戦したいです。
―― 将棋を通じて人生に役立つことは?
藤井 世代や立場を超えて交流できるコミュニケーションの場になるのがいいと感じます。棋士になれたのも、将棋を通じての出会いがあったからこそです。
伊藤 将棋は必ず始まるときに「お願いします」、終わったときは「ありがとうございました」とあいさつします。敗れたほうは「負けました」と負けを受け入れる心構えや礼儀作法など、人間性の成長に役立つと考えています。
―― 将棋の難しさと面白さは?
藤井 駒の様々な長所をどのように生かすか、持ち駒という将棋の独特のルールがあり、それによって序盤、中盤、終盤と複雑になっていく点が魅力のひとつ。
伊藤 対局中は自分で考えて選択する難しさと、それが勝利した時の喜びにつながる面白さがある。自分なりに分からないながらも考えて指し手を選び、それで勝ったときの喜びは大きいです。
―― 将来に向けて子どもたちにメッセージ
藤井 将棋に出会ったきっかけは偶然に近いものでした。身近な興味を追求し続けることで、それが人生の糧や将来につながるきっかけになります。好奇心や探究心を持って、自分の身近にある興味を持ったことを追求してみてください。
伊藤 人それぞれ、好きなこと、得意のことは違います。そういった部分を見つけて挑戦してほしい。今回をきっかけに、将棋に興味を持ってもらえたらうれしいです。
【藤井王座の談話】
―― 午前中から激しい戦いになった。形勢について
藤井 △7五歩(24手目)と突き捨て、△4五歩(26手目)のあたりが予定で、相手玉を薄くして実戦的に、と考えていました。そのあと、ゆっくり指していると1歩損が大きいのでどのくらい手を作れるかと思っていましたが、△7七歩成(42手目)の筋で攻め自体はつながりそうだと感じたので、感触としては悪くないと思っていました。
―― 最後、勝ちに近づいたのは。
藤井 ▲3一飛(51手目)のときに、△4一銀と打つ予定でしたが、そこで▲3八飛を見落としていました。△2八角が明らかに空振りのような形になってしまい、嫌な展開にしてしまったと思っていました。本譜は△4一銀(58手目)から△7六歩(60手目)と詰めろをかけて、一手勝ちかと感じました。
―― シンガポールでの対局の感想と、次局に向けての抱負。
藤井 二度目の海外対局で、集中して指すことができました。対局以外も含めて、貴重な経験ができたと感じています。第2局以降は先後が決まった戦いになりますので、次局にむけて準備をしていきたいと思います。
【伊藤叡王の談話】
―― 午前中から激しい戦いになった。形勢について。
伊藤 △7五歩と突き捨てられて、こちらにキズが多い形で神経を使う展開かなと思っていました。▲2六飛(33手目)と浮いた手がまずくて、本譜の△8九との局面が進めてみるとかなり思わしくなく、そのあたりの判断がまずかったと思います。
―― シンガポールでの対局の感想と、次局に向けての抱負。
伊藤 海外対局は初めての経験でどうなるかわからなかったのですが、現地の方々に温かく歓迎していただいて、非常にいい経験をすることができました。シンガポールの方々に感謝したいと思います。本局は精度を欠いてしまったので、しっかり反省して次局に生かしていきたいと思います。
(紋蛇、書き起こし=武蔵)