2023年1月

2023年1月 8日 (日)

藤井王将と羽生九段は、ともに中学生で四段昇段した共通点があります。
羽生九段は谷川浩司十七世名人、渡辺明名人に続いて3人目の中学生棋士とのタイトル戦です。

20230108_chugakutitle_2
上の表は中学生棋士同士のタイトル戦の成績です。中学生棋士5人はそれぞれ棋界を代表する棋士ですが、それでも世代が離れすぎているとタイトル戦の対戦が難しいことがうかがえます。31歳9ヵ月の年齢差のタイトル戦は異例なのです。

Dsc_3732 (羽生九段)

20230108_38

37手目▲2六飛以降、両者の長考が目立つようになりました。上図の△3五銀は昼食休憩を挟む1時間10分の長考です。以下、▲2五飛(1時間16分の長考)△3六銀▲2六飛(1時間10分の長考)△4七銀成で下図です。羽生九段は先手の飛車を責めながら銀を敵陣に侵入。そして、藤井王将は飛車の往復により手損したうえで下図で▲5八銀と受けました。
副立会人の神谷広志八段は「羽生九段は勝負にいっていますが、藤井王将が冷静に受けてこれで十分とみています。私には後手は薄く感じてあまり自信がありません。バランスを取る将棋は羽生九段も得意でしょうけど、苦労が多そうな気がします。▲5八銀からは△同成銀▲同金△3五銀▲2五飛△2四銀▲2八飛が予想されます。1日目はあと数手で封じ手になりそうです」と話します。

20230108_42

Dsc_3617 (控室で検討する副立会人の神谷八段。神谷八段は静岡県浜松市出身)

Dsc_3844 (控室にお天気キャスターの森田正光さんが訪れている。久保九段とは指導対局を受けていた。森田さんはアマ三段の棋力で、スポーツニッポンで本局の記事を執筆するとのこと。田丸昇九段と親交が深い。昨年の将棋ペンクラブ大賞では最終選考委員も務めた)

今回の七番勝負は、両対局者に31歳9ヵ月もの年齢差があります。これは歴代2位の記録。1位は大山康晴十五世名人と南芳一九段による第15期棋王戦で、40歳2ヵ月差のタイトル戦でした。
なお、記者が調べたところでは、年齢差のあるタイトル戦の3位は藤井王将と木村一基九段による第61期王位戦で29歳差、4位は羽生九段と米長邦雄永世棋聖による第52期名人戦で27歳3ヵ月差、5位は大山康晴十五世名人と桐山清澄九段による第28期棋聖戦で24歳6ヵ月差でした。
羽生九段は2002年7月生まれの藤井王将と1943年6月生まれの米長永世棋聖とタイトル戦での対戦があるわけで、こうしたデータからも長く上位で活躍し続けているかがわかります。なお、藤井王将は、米長永世棋聖が59歳1ヵ月のころに生まれました。

Dsc_3725_2 (羽生九段)

藤井王将は今回が通算12回目のタイトル戦。これまでのタイトル戦で敗退したことがないのは驚異的です。羽生九段が最初に五冠王になったのは1993年度の第34期王位戦で、タイトル戦登場は9回目でしたが、2回目の第3期竜王戦で谷川浩司王位(現十七世名人)に敗れています。
11回のタイトル戦の先後別の勝敗は以下のようになります。

20230108_fujiititle
先手番は通算で22勝3敗(0.880)と、非常に高い勝率です。後手番は17勝5敗(0.773)。こちらも高勝率ですが、番勝負を通してみると後手番で負け越したシリーズが第6期叡王戦と第35期竜王戦の2回あります。相手側からすると、自身の先手番をものにしつつ、藤井王将の先手番をどう切り崩すかが課題といえそうです。

Dsc_3768

羽生善治九段は王将戦七番勝負に19回目の登場です。これまで18回の七番勝負をまとめました(画像をクリックすると、大きなものが出ます)。王将獲得は通算12期で、永世王将の資格を得ています。また、第44期から第59期にかけて16期連続で七番勝負に登場しました。

20230108_habu_ohshosen

Dsc_3775 (19回目の七番勝負となる羽生九段。後ろで観戦しているのは掛川市の小・中学生。)

15時になり、1日目午後のおやつが出されました。藤井王将は「CHABATAKE」と「フレッシュジュース(いちご)」。羽生九段は「火の羊羹 3種(ゆず蜂蜜・掛川茶・本練)」、抹茶。

Dsc_3818 (藤井王将のおやつ。静岡県はいちごの生産量が全国でも有数の県として知られる)

Dsc_3824 (「CHABATAKE」の断面を見ると、色が少しずつ違う。掛川産の深蒸し茶、抹茶、不知火コンフィチュールを使用して、層をなしている)

Dsc_3826 (羽生九段のおやつ。火の羊羹は、左から本練・掛川茶・ゆず蜂蜜)

14時になり、対局場そばの大日本報徳社の講堂で大盤解説会が始まりました。事前申し込みの数が多く、座席を80から130に増設して対応する盛況ぶり。また、2日目はサテライト会場も設けます。
第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局の開催について - 掛川市
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/gyosei/docs/170517.html

1日目の大盤解説会で最初に担当したのは久保利明九段。「一手損角換わりは驚きました」と話していました。

Dsc_3815 (大盤解説会場)

Dsc_3798 (久保利明九段が担当)

Dsc_3804 (解説会の様子。会場は満員だった)

Dsc_3677 (解説会場の外でグッズの販売会が開かれていた)

Dsc_3692

Dsc_3688(将棋の駒柄の袋などが売られていた)

二人の対戦成績は藤井王将7勝、羽生九段1勝(下の画像はクリックすると大きなものが出ます)。初手合いの2018年から毎年対局しています。特に王将戦での対戦が多く、すでに3回対戦しています。また、戦型が多彩なのも特徴的。羽生九段が注文をつける将棋が多いです。本局も後手番の羽生九段が最近ではほとんど指していなかった一手損角換わりを用いました。

20230108_fujiihabu

Dsc_3737(藤井王将は羽生九段に勝ち越し)

13時30分になり、対局が再開されました。再開されると、羽生九段はすぐに△3五銀を打ちました。

Dsc_3745 (対局再開後、すぐに△3五銀と打つ羽生九段)

Dsc_3753 (△3五銀の打たれた盤面)

Dsc_3765 (藤井王将)

Dsc_3777

Dsc_3699 (対局室に少しだけ正月気分を)

Dsc_3714 (13時26分ごろ、先に羽生九段が入室し、その十数秒後に藤井王将が対局室へ。対局者二人が同時に着座するのは珍しい)

Dsc_3721 (羽生九段が信玄袋から道具を取り出すころ、藤井王将はすでに前傾姿勢で盤面を考えていた)