2023年1月
長考が目立つ進行
37手目▲2六飛以降、両者の長考が目立つようになりました。上図の△3五銀は昼食休憩を挟む1時間10分の長考です。以下、▲2五飛(1時間16分の長考)△3六銀▲2六飛(1時間10分の長考)△4七銀成で下図です。羽生九段は先手の飛車を責めながら銀を敵陣に侵入。そして、藤井王将は飛車の往復により手損したうえで下図で▲5八銀と受けました。
副立会人の神谷広志八段は「羽生九段は勝負にいっていますが、藤井王将が冷静に受けてこれで十分とみています。私には後手は薄く感じてあまり自信がありません。バランスを取る将棋は羽生九段も得意でしょうけど、苦労が多そうな気がします。▲5八銀からは△同成銀▲同金△3五銀▲2五飛△2四銀▲2八飛が予想されます。1日目はあと数手で封じ手になりそうです」と話します。
(控室で検討する副立会人の神谷八段。神谷八段は静岡県浜松市出身)
(控室にお天気キャスターの森田正光さんが訪れている。久保九段とは指導対局を受けていた。森田さんはアマ三段の棋力で、スポーツニッポンで本局の記事を執筆するとのこと。田丸昇九段と親交が深い。昨年の将棋ペンクラブ大賞では最終選考委員も務めた)
31歳9ヵ月差のタイトル戦
今回の七番勝負は、両対局者に31歳9ヵ月もの年齢差があります。これは歴代2位の記録。1位は大山康晴十五世名人と南芳一九段による第15期棋王戦で、40歳2ヵ月差のタイトル戦でした。
なお、記者が調べたところでは、年齢差のあるタイトル戦の3位は藤井王将と木村一基九段による第61期王位戦で29歳差、4位は羽生九段と米長邦雄永世棋聖による第52期名人戦で27歳3ヵ月差、5位は大山康晴十五世名人と桐山清澄九段による第28期棋聖戦で24歳6ヵ月差でした。
羽生九段は2002年7月生まれの藤井王将と1943年6月生まれの米長永世棋聖とタイトル戦での対戦があるわけで、こうしたデータからも長く上位で活躍し続けているかがわかります。なお、藤井王将は、米長永世棋聖が59歳1ヵ月のころに生まれました。
藤井王将のタイトル戦
藤井王将は今回が通算12回目のタイトル戦。これまでのタイトル戦で敗退したことがないのは驚異的です。羽生九段が最初に五冠王になったのは1993年度の第34期王位戦で、タイトル戦登場は9回目でしたが、2回目の第3期竜王戦で谷川浩司王位(現十七世名人)に敗れています。
11回のタイトル戦の先後別の勝敗は以下のようになります。
先手番は通算で22勝3敗(0.880)と、非常に高い勝率です。後手番は17勝5敗(0.773)。こちらも高勝率ですが、番勝負を通してみると後手番で負け越したシリーズが第6期叡王戦と第35期竜王戦の2回あります。相手側からすると、自身の先手番をものにしつつ、藤井王将の先手番をどう切り崩すかが課題といえそうです。
羽生善治九段の王将戦七番勝負
羽生善治九段は王将戦七番勝負に19回目の登場です。これまで18回の七番勝負をまとめました(画像をクリックすると、大きなものが出ます)。王将獲得は通算12期で、永世王将の資格を得ています。また、第44期から第59期にかけて16期連続で七番勝負に登場しました。
(19回目の七番勝負となる羽生九段。後ろで観戦しているのは掛川市の小・中学生。)
1日目午後のおやつ
現地大盤解説会
14時になり、対局場そばの大日本報徳社の講堂で大盤解説会が始まりました。事前申し込みの数が多く、座席を80から130に増設して対応する盛況ぶり。また、2日目はサテライト会場も設けます。
(第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局の開催について - 掛川市
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/gyosei/docs/170517.html )
1日目の大盤解説会で最初に担当したのは久保利明九段。「一手損角換わりは驚きました」と話していました。