第73期王将戦七番勝負第1局 Feed

2024年1月 8日 (月)

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【藤井王将の談話】

――後手番で相穴熊になりました。戦型が決まるまでの展開はいかがでしたか。
「序盤は途中まで叡王戦の将棋とも近い形だったのですけど。今回は穴熊に組む前に△3二金(28手目)と△4三金(30手目)を先に組む形にして。それがどう違いが出て来るか難しいかなと思っていました」

――1日目は千日手模様の展開が続きました。封じ手までの展開はいかがでしたか。
「△2四角(40手目)と△8四飛(42手目)の組み合わせがあまりよくなかったかなと思っていました。△7四飛(44手目)に▲6七銀と引かれて、思っていたよりも手が難しい形になってしまったので。△8四飛に代えて△7四歩と突く形にしたほうがよかったかな、ということは思っていました」

――2日目、封じ手の▲4七飛と、その後の展開はいかがでしたか。
「▲4七飛に対して仕掛けていったのですけど。その後10手ぐらい進むと少し模様が悪い気がしたので。その辺りの手順がもう少し工夫が必要だったかなと思います」

――模様が悪かったというのは、どの辺りがどのようにでしょうか。
「▲5五歩(63手目)と突かれた辺りから少しこちらがうまく動いていくのが難しい形になってしまったかなと感じていました」

――お互いに4枚穴熊の形になったあと、△8七歩(80手目)から局面が動いていったと思います。その辺りの展開はいかがですか。
「▲7六飛(73手目)と回られた辺りはちょっと7筋の形がこちらにとって負担になってしまって、苦しくしてしまったかなと思っていました。△8七歩の少し、飛車の利きの陰になってしまうので、あまり成算はなかったのですけど。局面を収めにいくのもちょっと大変なのかなという気がしたので。動いていく変化を選びました」

――その後、勝負になったなと思ったのはどの辺りでしたか。
「攻め合いのときに、こちらの玉のほうがどうしても4筋に歩が立ってしまう分、ちょっと薄い形なので。自信がない局面が続いているかなと思っていたのですけど。△5九飛(108手目)と打ったあたりは、と金を払う筋を見せて頑張れそうな形になったかなとは思っていました」

――第1局、白星からスタートしました。第2局目以降に向けての抱負をお願いします。
「本局は序盤の構想に課題が残ったかなと思うので。その辺りを第2局に向けて修正していけたらと思います」

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【菅井八段の談話】

――三間飛車から穴熊にされました。先手番になったら、こういった作戦でいこうという予定でしたか。
「そうです。はい」

――1日目は千日手模様に進みましたが、その辺りはどう考えていましたか。
「凄く難しい序盤戦かなと思っていました」

――打開を探っていた感じでしょうか。
「はい、そうです」

――封じ手は選択がいくつかあったと思いますが、▲4七飛はどういったことを考えて選ばれましたか。
「凄く手が広いので。▲5六銀など、他にも手があったと思うのですけど。凄く難しい局面でした」

――後手のほうから仕掛ける展開から互いに4枚穴熊を作る進行になりました。その辺りはいかがでしたか。
「▲4八銀(79手目)と引いたのがよくなかったように思います」

――具体的にはどういった理由ですか。
「本譜、△8七歩(80手目)の瞬間に(攻め合おう)と思ったのですけど、こちらが桂馬とか香車に弱い形なので。ちょっと厳しいかなと思いました」

――▲5四歩(93手目)から▲4四歩と、飛車を見捨てて穴熊に迫りました。あの辺りはいかがでしたか。
「実戦的に、というつもりでしたけど。最後ちょっと△6四角(104手目)という手がいい手で。その局面はまずい、というかピッタリでしたね」

――本局の反省材料としては、どの辺りでしょうか。
「中終盤の読みの精度ですかね。はい」

――第2局に向けて抱負を聞かせてください。
「はい。集中して頑張りたいと思います」

20240107110図は18時10分の局面。
「△6四角(104手目)が起点となって、そこから藤井王将がぐいぐいリードを広げた印象です。先手は1手前の▲4九金引で▲4九金打とすれば堅いのですが、そうすると△5三飛成からと金を払われて、ゆっくり指されて攻め手がなくなります。▲4九金引は攻めを残す勝負手ですが、△8九飛成と桂を取られて、次の△4七桂が激痛です。後手がはっきり優勢になったと思います」(塚田九段)

Img_7092 今朝のスポーツニッポンと毎日新聞。

20240107104図は17時50分の局面。
図の△6四角を見て、猛攻を続けていた菅井八段の手が止まりました。攻防の要所に打たれた角を前に、攻めの継続が難しくなっています。藤井王将の残り時間は5分となっていますが、残り10分を切ってからも慌てた様子はなく、要所で小刻みに時間を使いながら落ち着いて指し回しています。残り時間が少なくなっても藤井王将に揺るぎは見えません。控室では「後手優勢か」の声も出始めています。

Img_7348 藤井王将は、残り時間が少なくなってからも揺るぎのない指し回しを続けている。

2024010791時刻は17時40分を回りました。
△5七歩の垂らしに対して、菅井八段は受けずに▲5三角成と角切りの強手を決断。以下△5三同金▲5四歩△6三金に▲4四歩で次図。

2024010795飛車取りを放置する▲4四歩は、△7四金なら▲5三歩成から▲4三歩成と攻める狙いがあります。相穴熊戦では大駒よりも、と金の攻めの価値が高くなることとが多く、控室では「確かにこれは飛車を取っている場合ではなさそう」と言われています。局面はいよいよ激しさを増してきました。
▲4四歩まで、残り時間は▲菅井1時間8分、△藤井6分。

Img_7344 菅井八段が強手で勝負に出た。

2024010784図は17時17分頃の局面。
藤井王将は△8七とに18分使って、残り時間は8分になりました。残り時間が10分になると記録係の秒読みが始まります。対する菅井八段は1時間20分残しています。局面は、と金が出来ていますが、互いの穴熊は手付かずで、まだ終盤ではありません。残り8分でこの先を戦い抜くことができるのか。藤井王将の時間との戦いが続きます。

Img_7321 菅井八段が残り時間で大きなリードを奪った。

対局場のホテル花月は那珂川中流の河原に面しており、徒歩0分で河原を散策できます。

Img_7265 気持ちのいい上天気だが、さすがに風は冷たい。

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Img_7271 河原の土手には前夜の雪がうっすらと残っている。

Img_7275 こちらは支流の湯坂川。ホテル花月の脇で那珂川に流れ込む。

Img_7215 河原から見上げたホテル花月。

2024010771時刻は16時を回りました。
控室では「後手を持って悪い気はしない」と言われています。ただ、図の▲5七銀は駒がバックして辛抱したようですが、次に▲4六銀や▲7六飛の狙いがあって、意外に好感触と言われています。また、図の局面までの消費時間は、▲菅井6時間4分、△藤井7時間16分と1時間の以上の差がついています。残り時間で言うと菅井八段は1時間54分、藤井王将は44分で、2.5倍の差があります。局面はまだ中盤戦で、この時間の差は大きな影響がありそうです。

Img_7349 局面は藤井王将が指しやすいと見られているが、残り時間では追い詰められている。