第74期王将戦七番勝負第3局 Feed

2025年2月 6日 (木)

終局後、両対局者にインタビューが行われました。

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Dsc_2951 (インタビューを受ける藤井王将)

――2勝0敗で迎えた本局は角換わりになりました。後手でしたが、この戦型選択の印象はいかがでしたか。
藤井 角換わりになれば、本譜の形になると思いました。

――1日目の進行についてはいかがでしたか。
藤井 馬を作る展開になりましたが、8五桂が負担になる駒でどういう風にまとめればいいかがわかりませんでした。本譜は少し自信がないだろうと思いながら指していました。

――92手目に金桂両取りの2八ではなく、△2九飛と打ちました。
藤井 △2八飛は▲1七角△4八飛成▲2六角打のときに飛車を取られてしまいそうな形で、形勢が悪いと思ったので△2九飛で手を渡しました。自信はないですがどれくらい頑張れるかという進行だと思いました。

――98手目△3六歩では△5五歩で千日手もあるのではといわれていました。
藤井 千日手もあると思いましたが、▲3六桂と攻められてもどう受ければいいかわからなかったので、本譜は△6六桂(108手目)に期待しました。ただ、進んでみると薄い形だったかなと思います。

――▲4四桂△同玉(114手目)と進みました。玉が上がるのは危険という見方もあったと思います。
藤井 ▲4六馬△4八歩成▲4五飛△3四玉のときに後手玉が寄っていてもおかしくないと思いましたが、具体的にはわかりませんでした。
(注:ブログ記事「先手よしの見解」
https://kifulog.shogi.or.jp/ousho/2025/02/post-a03f.html
「検討が進んで…」
https://kifulog.shogi.or.jp/ousho/2025/02/post-77e5.html
で紹介したように、114手目△4四同玉に▲4六馬とする変化は、当初控室で先手よしとみられていたが、のちに後手玉への寄せが難しいと判明した)

――手応えがあったのでしょうか。
藤井 わからなかったのですが、簡単に寄る感じではないと思っていました。

――形勢が好転したとどこで感じましたか。
藤井 こちらの玉は危ない形が続いて最後までわかりませんでしたが、△3七歩成(126手目)と成ったときにこちらの玉が寄らなければと思っていました。

――3勝0敗になりました。
藤井 スコアのことは意識せずに臨みたいと思います。

Dsc_2978 (永瀬九段は藤井王将のインタビュー中に考え込む時間が長かった)

――1日目に角換わりを採用されました。進行の判断はいかがでしたか。
永瀬 難しいかなと思っていました。

――封じ手開封以降はいかがでしたか。
永瀬 封じ手は考えた選択肢に入っておらず改めて考える感じになりました。

――昼食休憩あたりの判断はいかがでしょうか。
永瀬 ▲6五歩(93手目)の局面は少し指せていてもおかしくないと思いました。

――午後の戦いはいかがでしたか。
永瀬 (97手目▲3七角に)△5五歩とされない気が…。本譜でどうかなという感じがしていました。

――本局を一局通しての感想についてお聞かせください。
永瀬 終盤でちぎれてしまったのと経験値が足りていない部分があるなと感じるところがありました。

――0勝3敗となり、あとがなくなりましたが、第4局への抱負をお願いします。
永瀬 一局一局勉強になっていますので、精いっぱい準備したいと思います。

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Dsc_3013 (終局時の盤面。134手目△3四歩に永瀬九段は投了した)

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第3局は藤井王将が勝ちました。終局時刻は19時3分。消費時間は▲永瀬7時間56分、△藤井7時間51分。
藤井王将はシリーズ3連勝を決めて、4連覇まであと1勝に迫りました。第4局は2月15・16日(土・日)に大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」で行われます。

20250206_120 図は120手目△4五歩の局面。「中段玉寄せにくし」という格言の通り、現状は後手玉を寄せるのは容易ではなく時間がかかるようです。形勢は後手よしに。藤井王将が際どいところを切り抜けました。
永瀬九段は▲4一飛△4二金左▲2一飛成として、▲2三竜から▲3三歩成と側面からの攻めを試みました。▲2三竜とすれば、竜の利きで後手玉の上部脱出の牽制もできます。藤井王将は▲2一飛成に△4六歩と銀を取って△3七歩成を楽しみにします。

Dsc_2946 (時刻は18時30分を過ぎた)

20250206_sanko3参考図は直前の記事(先手よしの見解 https://kifulog.shogi.or.jp/ousho/2025/02/post-a03f.html)で触れた進行です。ここで△2四玉は▲3三銀の好手で先手勝ちと結論づけられていました。ところが、参考図で△4二玉とかわすのが難敵とわかりました。▲6六馬の開き王手でボロッと桂を取られてしまうためやりにくいのですが、▲6六馬に△4三歩と受ければ6六馬取りや4九香取りになって先手が忙しいのです。また、△4二玉に▲6二銀成も△4三歩▲5二成銀△同銀▲5一銀△3一玉(△同玉は▲6二金から寄るため逃げるのが正しい)で後手玉を寄せるのが大変です。
少し前は先手よしとみられていましたが、検討が進んで参考図での△4二玉が発見されたことにより、その見解が揺らいでいます。
下の図で▲4六馬とすれば上の参考図に進みますが、永瀬九段は22分使った末に▲3八銀。▲4六馬では勝てないと判断してまき直しをはかりました。水面下で非常に高度が読み合いがなされていることがうかがえます。

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Dsc_2522(藤井王将の玉は直線的な変化に進んでも際どく耐えていた)

20250206_110図は110手目△2九竜まで。藤井王将は残り1時間を切りました。控室で現局面は先手よしとみられています。検討の一例は△2九竜に▲4九香△4七歩▲4四桂△同玉▲4六馬△4八歩成▲4五飛△3四玉▲3五馬△3三玉▲4四馬△2四玉▲3三銀(参考図)。3三の銀を取るのは▲3五馬で詰み。△1三玉も▲3二銀成と金を取って先手勝ち筋です。参考図まで進むと後手がまずいので、藤井王将は途中で変化しなければなりません。難局をどう切り抜けるか。

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Dsc_2925 (検討の様子)

Dsc_2904001 (西国立駅に南武線の電車が到着)

20250206_98千日手? といわれていた97手目▲3七角に、藤井王将は1時間を超える長考で△3六歩(図)と打ちました。▲7三角打や▲8二銀を受けるのではなく、逆に引っ張り込む手です。
図以下、▲8二銀△4一飛▲7一角△同飛▲同銀不成△5三玉と進行。相手に攻めさせ、反動を生かして玉を中段に逃がすのが藤井王将の着想でした。

Dsc_2836_2 (対局再開直前の永瀬九段。考え込む)

20250206_97_2図の97手目▲3七角の局面で藤井王将が長考しています。控室では千日手という意見も出ています。図から△5五歩に▲4七角△5九飛成▲5八金△4九竜▲4八金△5九竜…という手順で千日手になります。▲4七角に△3九飛成も▲3八金△4九竜▲4八金でやはり千日手模様です。
千日手模様を打開するかどうかは、両対局者の形勢判断を推測するための目安になります。千日手模様を避けるなら悪くないと判断しているか、相手に千日手を避けられて自信がないと判断していると考えられます。いずれにしても、図からの数手は重要なポイントといえます。

Dsc_2841 (藤井王将はどういう選択をするか)

15時になり、2日目午後のおやつが出されました。永瀬九段は「四つ星苺のシャルロット 練乳エスプーマとトンカ豆ソース」、「金の抹茶アイスラテ」、「ホットブレンドハーブティー」で、2日目午前と同じです。藤井王将は「狭山茶ほのか」、「国産オレンジジュース」でした。

Dsc_2666001 (永瀬九段のおやつ。永瀬九段は1日目と2日目の午前午後、4回連続で「四つ星苺のシャルロット」を頼んだことになる)

Dsc_2875_1 (藤井王将のおやつ。2日目午後はドリンクで糖分補給するのが藤井流)