【藤井王将の談話】
―― 後手番で△3四歩から始められました。この手はどういう想いで指されましたか。
「本局は△3四歩~△4四歩で角道を止めて戦ってみようかなというのは事前に考えていたんですけど。ただ、手の組み合わせがいろいろ考えられるので。その後はどういう展開に進むかわからないかなと思っていました」
―― 先手の▲6八金寄で封じ手になりました。一日目の進行としてはいかがだったでしょうか。
「これまで指したことのない将棋だったので、形勢判断がわからないところだったのですけれど。封じ手の辺りは、いったん局面が落ち着くような形になって。おそらくいい勝負なのかなと思っていました」
―― 今日に入って、△2一飛(58手目)と回りました。あの辺りの午前中の戦いはどうでしたか。
「3五歩の形を生かすような組み立てができればと思ったのですけど。△3四銀(56手目)のように玉から少し駒が離れていって、ちょっと薄い形なので。怖いところは多いかなと思っていました」
―― 形勢の好転を自覚されたのはどのあたりでしたか。
「自玉が薄いのでよくわからなかったのですけれども。△3五銀(88手目)と銀を立って角を捕まえた辺りでは、少し指せるのかなと思ったのですけど。ただ、そのあとも、やっぱり自玉が薄い形で、難しいところは多いかなと思っていました」
―― 新しい指し方で始まった一局を振り返っていかがでしょうか。
「本格的な戦いが始まるまでが、かなり長くて。駒組みのところでも、いろいろ選択肢の広い局面が多かったので。その辺りが非常に難しい将棋だったのかなと感じています」
―― 4勝1敗となって、4連覇ということになりました。王将戦の歴史の中で5人目の4連覇ということになるのですが。この4連覇という数字についてはいかがでしょうか。
「今期のシリーズを振り返ると、第1局から難しい局面の多い将棋が続いたかなと感じているので。指していて充実感というものもありましたし。その中で結果を残せたことも嬉しく思っています」
―― 永瀬九段との初めての2日制の対局でしたが、そのことも大きかったですか。
「そうですね。2日制の長い持ち時間で指して。いろいろ勉強になるところがあったかなと感じております」
―― また4月からお二人で名人戦ということになりますが、抱負などをうかがえればと。
「名人戦の開幕までは、おそらく公式戦の対局は少なくなると思うので。しっかり、いい状態で名人戦に臨めるように取り組んでいきたいと思います」
【永瀬九段の談話】
―― △3四歩(2手目)と指されましたが。これについては、どうでしたか。
「開幕戦辺りは意識していたんですけど。本局だと意識が抜けてしまっていたので。準備不足だったなと思います」
―― 戦いを終えられて、こう指せばよかったとか、いま振り返られる反省点などがありましたら教えてください。
「ちょっと序盤が損しているのか、相場なのかが、ちょっと判断がつかなかったので。その点は反省点だなと思います。難しい局面が長く続いていたような気はするんですけど、急に悪くなってしまったような気がするので。▲1四歩(81手目)の辺りがまずかったのかもしれないですけど。手前からよくわからなかったので、もう少しうまくバランスを取りたかったなと思いました」
―― 七番勝負は1勝4敗で、今回は終わることになりますけれども。1局でも長くというお話を戦前もされていたかと思いますが。その部分も含めて、この七番勝負をどういうふうに振り返られますか。
「3連敗してからは、1局でも多くということをいっていたんですけど。私は2日制の経験値が浅すぎるので。それで5局指すことができましたので、よい経験ができたなと思います」
―― 藤井王将との初めての2日制という部分での収穫とか、課題とか、そういう部分について発見されたものというのはいかがだったでしょうか。
「やってみないとわからない発見というものも多くありますし。藤井王将と対局できないと、なかなか発見できなかった反省点も多く見つけることができましたので。自分にとってよい成長の糧になっていると思います」
―― 4月から名人戦七番勝負がありますが。
「引き続き、2日制の感覚を引き継いで、ということにはできますので。今回の王将戦は、結果は残念ではありましたが、また名人戦で対局できますので、そちらも集中したいなと思っています」
―― △3四歩に対して準備不足だったというお話しがありました。午前中から時間を使われていましたが、準備不足の影響があったのでしょうか。
「やりたい形がちょっとなかったので。そこは準備不足だったなと思いました」