第70期王将戦七番勝負第1局 
終局直後
終局直後にインタビューがありました。
――1日目はいかがでしたか。
渡辺 定跡形だったので1日目は手数が長く進みました。前例を離れてからが難しかったです。封じ手はいくらでも考えたいところでした。▲5五歩(封じ手=77手目)もそれほど成算があったわけではありませんが、それでどうなっているかという感じでやってみました。
――2日目はスローペースになりました。
渡辺 終盤戦なので、どうしても長考にはなりました。
――終盤は自分の敷いたレールにのったという感覚はありましたか。
渡辺 うーん、ちょっと明快さに欠ける局面が続きました。なかなか決め手がつかめない展開でした。
――その決め手がつかめたと思われた局面はどのあたりでしょうか。
渡辺 ▲5三同飛成(107手目)から▲5四銀(109手目)で、それで自玉が詰まないなら勝ちだと思ってやっていました。元々はそういう予定ではなかったのですが、ほかの順がわからなくなってしまったので。
――では勝利を確信したのは終局の間際ですか。
渡辺 そうですね。寄せにいって、自分の玉は詰まないと思ったので勝ちだろうと。ただ、駒をいっぱい渡しているので頓死する可能性を恐れてはいました。
――シリーズ先勝について。
渡辺 始まったばかりなので。対局は久しぶりだったのですが、それなりにやれたので、ここから調子を上げていければいいと思います。
――掛川対局では6戦全勝です。何か理由はあるのでしょうか。
渡辺 3つ4つと勝っていくと得意なんじゃないかと思うところはあって、いい結果につながっているかもしれないですけど、基本的には理由はないかなと思います(笑)。
――1日目はいかがでしたか。
永瀬 ▲7六銀(75手目)に△6四銀(76手目)では自信がなかったです。(代えて)△9七歩成では少し細い気がしてしまって、それで△6四銀としたのですが……。ただ、それ以降は互角と思った局面はなかったので、少し苦しい作戦を選んでしまったのかもしれません。
――封じ手の▲5五歩はどう感じましたか。
永瀬 後手からすると10択くらいの局面に思えました。▲5五歩は選択肢のひとつで、指されれば△同桂か△同銀直か△同銀右か……。△同桂が難しければそう指したかったのですが、成算が持てずに△同銀直(78手目)としてしまいました。それも形勢が悪かった気がするので、△同桂で何かあればという感じです。
――2日目は苦しい展開だったでしょうか。
永瀬 そうですね。互角の局面があれば、それをキープしたかったです。
――第1局を終えた心境を聞かせてください。
永瀬 難しい局面を作れなかったので、次から作りたいと思います。
渡辺王将勝利
渡辺明王将に永瀬拓矢王座が挑戦する第70期王将戦七番勝負第1局は、18時43分に125手で渡辺王将の勝ちとなりました。消費時間は▲渡辺7時間37分、△永瀬7時間59分。渡辺王将が3連覇に向けて好スタートを切りました。
第2局は1月23・24日に大阪府高槻市「山水館」で指されます。(銀杏)
あとひと押し
先手優勢の最終盤です。すっきりした順は見つかっていないため、先手勝勢とまではいえません。相手は「負けない将棋」で知られる永瀬王座。そう簡単ではないようです。図から▲5三同飛成△同玉に▲5四歩と▲6四角が有力で、そのどちらかに先手の勝ち筋があるかどうか。渡辺王将は読みきろうとしている雰囲気です。大盤では▲5四歩で先手が勝ちそうという結論になりましたが、それでも「100パーセントの確信はない」と神谷八段。
後手玉は寄るのか
渡辺王将は「先ほどの3択」で▲5四飛を選択。勝ちにいきました。「これで寄るのか。大盤の検討ではわからなかったが」と神谷八段。渡辺王将は勝ちへの道を見つけたのでしょうか。
山場
意外な逃げ方
2日目午後のおやつ
好手▲7四銀
▲7四銀が厳しいと評判です。飛車取りと6五への利きのどちらも重要です。
まず飛車の適当な逃げ場がありません。(1)△8一飛は▲7二角、(2)△8二飛や(3)△9三飛は▲7六角が痛打になります。▲7六角に△6五歩が二歩で打てません。仮に△9三飛だとして、▲7六角△6五銀打▲6六桂は先手銀得が見込めます。
(4)△6八銀や(5)△6八金は▲同金△同歩成▲同飛で飛車が働いてきます。(6)△8六歩▲8三銀不成△8七歩成▲同金△7五桂は▲5一飛で先手の攻めが速い。最後の手段として(7)△9七歩成がどうかと検討されています。
神谷八段は69手目▲7四金打以降、基本的には先手持ちの姿勢。森内九段も現局面は「先手が少しよさそう」と話しています。永瀬王座は▲7四銀に手を止め、長考しています。