第72期王将戦七番勝負第6局 Feed

2023年3月13日 (月)

タイトル防衛から一夜が明け、改めて会見の場が設けられました。
Img_7347_2(ピースサインの藤井王将)

□藤井王将一問一答

――王将位防衛から一夜明けての心境は。
 防衛することができてホッとしています。今回のシリーズを通して貴重な経験ができたと思っているので、それを今後に生かしていきたいという気持ちが強いです。

――藤井王将にとって羽生九段とはどんな存在なのか。またタイトル戦で戦いたいか。
 自分が将棋を始めるずっと前から第一線で活躍しておられて、今回タイトル戦という舞台で戦う機会を得られたことを大変うれしく思っていました。6局対局する中で、羽生九段の将棋をいままで以上に感じることができました。自分にとってよい経験になりましたし、またこういった舞台で対戦することができればと思っています。

――羽生九段の強さ、具体的に何を感じたか。
 読みの深さであったり、柔軟な判断の感覚、それらを8時間という長い持ち時間だからこそより強く感じる場面が多かったです。

――対局1日目の午前おやつ「佐賀県産いちごさんムース」は昨年も祝賀会で召し上がった。佐賀の料理について。
 覚えていたわけではありませんが、苺の甘みがすごくあって、対局中ですがリフレッシュできて美味しくいただきました。地元の食材を使った昼食をいろいろと用意していただいて、ボリュームがあって驚いたのですけど、そちらもとても美味しかったです。

――世界で活躍されている選手が刺激になる、と常々仰っている。
 注目される試合でパフォーマンスをしっかり出せるのは素晴らしいことだなと思います。自分も刺激を受けていますし、見習っていきたいところかなと思います。

――本日からマスクの緩和。対局中のマスクについて、パフォーマンスの意味でどう感じているか。
 マスク着用について、対局にまったく影響がないとはいえないです。社会的な状況に合わせて判断される部分で、日本将棋連盟でも規定が緩和されるということで、その規定に合わせて対応します。

――重要な局面ではマスクを外すことがあるかもしれないと。
 現時点で具体的に何か想定しているわけではありませんが、状況によっては一時的にそういうことも考えられるかなとは思っています。

――棋王戦の抱負は。
 第3局まで終えているという状況で、手応えのあった部分と課題を感じた部分がありました。第4局以降に生かしていけるように、またよい将棋が指せるように頑張りたいと思います。

――名人戦の抱負は。
 4月開幕で、持ち時間が自分の経験した最長の8時間よりもさらに長い9時間となります。長い持ち時間で対局できるのが楽しみでもありますし、集中力を高めて臨みたいと思っています。

――六冠、史上最年少名人と七冠、八冠まで現実味を帯びてきた。これまで記録については意識しないと仰ってきたが、いまはどうか。
 期待していただけることはうれしく思います。ただ自分としては意識するような段階にありません。いままでどおり目の前の一局に全力を尽くしたい、という意識でやっていければと思います。名人戦に挑戦することができて、記録面を意識することはないですけど大きな舞台だと思っています。相応しい将棋が指せるように精一杯頑張りたいという気持ちです。

(書き起こし=虹、撮影=武蔵)

第6局の結果、4勝2敗で藤井王将が防衛を決め、第72期七番勝負は終了しました。すでに第73期の一次予選は始まっています。次なる挑戦者は果たしてどの棋士になるのか。これからも熱戦にご期待ください。
以上で、本中継ブログの更新を終了します。ご観戦いただきまして、ありがとうございました。

2023年3月12日 (日)

感想戦終了後、場所を移動して王将位の防衛記者会見を行いました。
Img_7164(王将位初防衛を記念して、花束が贈られた)
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Img_7263(ポーズをつけて一枚)

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□インタビュー

――王将初防衛、いまの率直な思い。
 内容的にも非常に難しい将棋が続いたシリーズでした。大変な将棋の中で何とか防衛という結果を出せてうれしく思います。

――タイトル通算100期が懸かる羽生九段との対戦。これまでのタイトル戦とどう違ったか。
 羽生九段とタイトル戦という大舞台で対戦できることを楽しみにしていました。どの対局も違った戦型になって、その中で一手一手考えるという展開で充実感がありましたし、羽生九段の強さを感じるシリーズでもありました。

――挑戦中の棋王戦と名人戦に向けての抱負。
 これまでもそうですが、棋王戦や名人戦をはじめ重要な対局が続いていきます。よい状態で迎えられるようにと思っています。また、少しずつでも実力を伸ばせるように取り組んでいければと思います。

――先手番が勝ち続けるという、いままでにないシリーズだった。羽生九段の強さをどんなところに感じたか。
 第4局は長考した局面でミスをしてしまって、残念なところもありました。改めて三番勝負として気持ちを切り替えていければと思っていました。本シリーズを振り返ると羽生九段のほうによい手をたくさん指されたなと感じています。第1局の46手目△3七歩、第2局の59手目▲8二金、指されるまで気づいていませんでしたが、どちらも考えていくうちに好手なんだなと分かってきて。時間を使って考える中で、羽生九段の強さを感じるところが大いにあったと思っています。

――感想戦で羽生九段と楽しそうに検討する姿があった。
 シリーズがすべて違う展開で、経験の少ない形も多かったです。感想戦も含めてそういった局面を考えることができたのは、楽しい時間だと感じています。
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――いままでは特定の戦型が多かった。今回はすべて違う戦型。どちらのほうが好きか。
 戦型が違うのは、羽生九段のほうに意図されたところがあると思います。ひとつの戦型を突き詰めて考えるのも面白いですが、今回は新鮮な局面が多くて面白くて、また勉強にもなりました。

――羽生九段と多くの時間を共有した。羽生九段の印象深かったところは。
 第1局の終局後コメントで、8時間の持ち時間があっても結局は短い、という趣旨のことを仰ったと思います。それが印象深かったですし、自分もそれを実感したシリーズだったと思っています。感想戦でもいろいろな検討をすることができて、その点も非常に勉強になりました。

――シリーズが始まる前と終えたあと、羽生九段について新しく気づいたことは。
 8時間という持ち時間で6局指すことができて、いままで以上に羽生九段の柔軟さ、そして積極性を感じました。先ほど第1局の46手目△3七歩を挙げましたが、やりずらいと思っていた手が指されてみると難しいと分かりました。そこを掘り下げて可能性を見出すところが強さだと感じました。

――番勝負の経験がご自身にどう生きていくか。
 6局とも違う展開になって、その中でうまく判断できない展開や課題が見えたところもあります。そのあたりを改善できるように取り組んでいけたらと思います。

――佐賀県での初対局、実際に対局してみて。
 対局は初めてでしたが、祝賀会などで何度も呼んでいただいて、自分自身ではまったく初めてという感じがしなかったです。非常に快適に対局できました。
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(撮影=武蔵、書き起こし=虹)

Img_7113(勝った藤井聡太王将は、王将位初防衛となった)

□藤井王将のインタビュー
――△6四角(40手目)で前例を離れた。
 その前も変化はあって、本譜は少し危ない形になるが、際どい将棋になるかと思っていた。

――△7五同歩(44手目)に1時間を超える時間を費やした。難しい局面という認識だったか。
 こちらが壁銀の形で攻め合っているので、慎重に指さなければいけないと思っていた。

――先に角を手放す展開は、2日目にどう影響したか。
 △7四角(50手目)は仕方なく、そのあとの構想が難しかった。7四の角のラインを生かす形になればと考えていたが、具体的な組み合わせははっきりとわからないまま指していた。

――封じ手の局面(58手目△3三桂)の形勢判断は。
 △3三桂~△4五桂と跳ねて、7四の角を生かして攻めていく形を作れればと考えていた。

――△3六銀~△4五銀上(64手目~66手目)の踏み込みについて。
 △8四飛(62手目)と浮いたところなどで、すぐに△3七歩と攻めていく手があった。本譜は▲5六歩(65手目)とさせて、角打ちを消して攻めていくという構想だった。しかし、本譜のタイミングで▲2一角には気づいておらず、嫌な形にした。△4五同桂(70手目)の局面は、前につんのめってしまいそうだったので、自信はなかった。

――勝ちを意識したのは。
 △5六角(76手目)と出て角が働く形になり、寄せの形が見えてきた。

――王将位初防衛となった。これまでの6局を振り返って。
 得るものの多いシリーズだった。今後に生かしていけたら。

――羽生九段と初めてのタイトル戦を戦った。6局盤を挟んで得られた収穫は。
 8時間という長い持ち時間で指すことができて、羽生先生の強さや自分の課題を感じた。今シリーズは考えてもわからないという局面が多く、将棋の奥深さを感じた。盤上に没頭して指すことができた。

Img_7114(敗れた羽生善治九段)

■羽生九段のインタビュー
――羽生九段の主導で角換わり早繰り銀となった。40手目(△6四角)までは自身が経験のある形で、改めて採用してどうだったか。
 去年、公式戦で同じ形を指してみて、まだわからない部分があったのでもう一回やってみた。角銀を持ち駒にしてもう少し手があるかと思ったが、手を作るのが難しい将棋だった。桂頭のあたりを攻めていく筋を作りたかったが、なかなかいい組み合わせがなく、ちょっとずつ苦しくした。

――1日目の昼休み明け、1時間以上の長考で▲6六銀(45手目)と指した。2歩損もあったが、形勢判断は。
 あの場面は違う変化をやるか、ずっと悩んでいて、明確に成算を持てずに見送ったが、もしかするとよくなかったかもしれない。

――封じ手あたりの形勢判断は。
封じ手のところは、もう悪いと思っていた。その前に問題があったのではないか。

――2日目、攻めのターンが回ってこない展開だった。1日目の形勢判断を踏まえて、どのような組み立てを考えていたか。
 苦しい局面なので、どれだけ頑張れるかと考えていたが、やはり少しずつ苦しくなっていった。

――七番勝負は2勝4敗。6局を振り返って印象に残ったことは。
 いろいろやってみて、もう少し全体的に指し手の精度を上げないといけないと感じたシリーズだった。

――藤井王将と初めてのタイトル戦で6局戦ってみて、これまでのタイトル戦との違いや、印象に残ったことは。
いろいろな変化や読み筋がたくさん出てくるので、対局していて大変でもあるが、勉強になった。

――今後について。
自分自身の足りないところを改善して、また次に臨めたら。


Img_7120(終局直後の模様)

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第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局は、藤井王将の勝ちとなりました。終局時刻は15時56分。消費時間は▲羽生6時間43分、△藤井聡6時間25分(持ち時間各8時間)。
本局の結果によりシリーズが決着。藤井王将が4勝2敗で王将位を初防衛しました。

2023031176_2飛車取りに角を飛び出しながら、先手玉に迫ります。6三の地点が弱まっても、上図から▲6三歩成△同金▲6一銀△4二玉に▲6三飛成は、△3八角成▲同玉△3七銀打(変化図)からの詰みがあります。

2023031184実戦も▲6一銀まで進んでおり、藤井王将が王将位初防衛に近づいています。
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現地では10時30分から、大盤解説会が開かれています。事前申し込み制で、抽選人数450人に対して応募は1500人も集まったようです。
Img_6986(解説会場の上峰町民センター)
Img_6988(客席定員は最大で700名ほど)
Img_7025(深浦九段と)
Img_7002(豊川七段のダブル解説が行われていた)
Img_7019(解説会場の販売ブースには、両対局者の記念品にもなった地酒『鎮西八郎』が)

2023031172上図は▲6四歩を放置して△5七銀と打ち込み、攻め合いに踏み込んだ局面です。自玉の急所を攻められても、先に先手玉を寄せてしまえばいいという判断なのでしょう。確かに、▲5七同銀△同桂成▲6三歩成△同角(変化図)の局面は、次に△2七銀打からの詰めろがかかって、先手は受けに回らなければいけません。

2023031176実戦は△5七銀に▲6七飛として辛抱しました。局面は後手が指しやすいとの評判です。
Img_7074(羽生九段は額に手を当て、悩ましげな表情を浮かべる)

大幸園の中の様子を少しだけご紹介します。
Img_6964(2期前の王将戦で寄贈された椿)

Img_6440(前期は大幸園での対局は行われなかったが、王将位奪取を記念して吉野桜が植えられた)

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Img_6626(酒樽に囲まれて。お酒好きの深浦九段)