第65期王将戦七番勝負第1局 Feed

2016年1月11日 (月)

感想戦の前に両対局者が大盤解説会場へ足を運びました。

Img_6795満員のお客様に両対局者が挨拶。一言ずつ感想を語った。

Img_6774「(ポイントのわかりづらい将棋でしたね、の問いに)▲7八飛(41手目)とか玉飛接近で普通は悪い形ですし、よくわからない将棋でした」(郷田王将)

Img_6794「もう少しうまく攻められなかったかと思うんですが……。どこかでおかしいことをしてしまったんでしょうね」(羽生名人)

Img_6713終局直後、主催紙によるインタビューが行われた。

Img_6727先勝した郷田王将。

【郷田王将の談話】

――序盤の▲6八玉(19手目)が珍しい構想といわれていましたが。
「あ、そうですね。△3三銀(18手目)がちょっと早かったので、やってみようかなと」

――1日目が終わった段階では、どのように思っていましたか。
「ちょっと頑張りすぎたのか、そうでもないのかと。(陣形が)バラバラですからね。ただ、そういう指し方を選んだので仕方がないか、という感じで」

――2日目に入りまして、玉の近く(7筋)から攻めました。
「もう行かないと、作戦の一貫性がないので仕方がないかと」

――どのあたりでよくなったと思われましたか。
「飛車交換して、と金ができて。少しやれるかな、という感じですかね。▲8二竜と引いたところでは、と金の分だけちょっとやれるかなと」

――勝ちになったのはどのあたりだと思われましたか。
「ああ、いや、詰ますまではまだまだ大変だと思っていましたので」

Img_6756羽生名人は淡々と振り返った。

【羽生名人の談話】
――後手番になって、矢倉も予定のうちだったと思いますが、相手の早囲いは予想されていましたか。
「いえ、何になるかはわからなかったです。ただ、▲6八玉に対して、どう対応するかがよくわからなかったです。ちょっと本譜の展開は危険だったかもしれません」

――1日目を終えられた段階では、どのように感じていましたか。
「ちょっと忙しい局面になってしまったかなと思って指していました。そのあと、どういう展開になるか予想できなくて。うーん、何かうまくまとめる手順がなかったですかね」

――いまの段階で、ここが悪かったというのはありますか。
「これがはっきり悪かったというのは、いまの段階ではわからないですね」

――最後の投了は、あのあたりで。
「もうちょっと早く投げようかと思ったんですけど。まあ、ここはダメだということですね」

8017時15分頃、羽生名人は△7七桂成とさばいてから、取った桂を△7二桂と打ちました。控室では「気の早い人なら投げても……」と、いわれていたところで放たれた辛抱の一手です。羽生名人の鬼の粘りが見られるでしょうか。

Img_6218掛川城公園の弁財天像。

77時刻は17時を回りました。
羽生名人は苦しい状況の中で、持ち駒の補充を求めて△4五香と打ちました。対して▲8六角△4六香▲同歩と郷田王将は銀を取らせて丁寧に対応しています。後手は銀香交換で部分的には駒得ですが、持ち駒の数自体は増えていません。検討陣は差が開いたと見ています。

■Twitter解説■
広瀬章人>77手目▲4六同歩は普通といえば普通の手ですが郷田王将が指すと「格調高い」というフレーズをつけたくなります。局面はすでに終盤戦なので緩手になりかねないのですが△4七香成とされると歩切れを解消されてしまう上に攻め駒が一枚増えてしまいます。(先手優勢)

Img_6622敵兵を寄せ付けない、掛川城の武者返し。郷田王将の城も後手の攻めを跳ね返している。

69図は15時40分頃の局面。
検討陣は後手から攻める手を探していましたが、どうしても見つからずさじを投げました。検討例をいくつか挙げます。(1)△8六角▲同歩△9七桂成▲同香△8七香▲同金△6九竜は▲8九角で先手よし。(2)△7七桂成▲同銀△8五桂▲8六銀△同角▲同歩△7七香は▲同金寄△同桂成▲同金と清算されても後手自信がないとのこと。また(1)の攻めを含みに(3)△6九竜とにじり寄る手には▲7九歩がしっかりした受けで、後続手がないといわれています。
Twitter解説の広瀬八段も後手の手が見つからないとして、先手優勢と判断しています。

「差がついている気がします。終盤前に投了ということもあるかもしれないぐらいです」(神谷八段)

■Twitter解説■
広瀬章人>現局面で後手の手を一生懸命考えていますがなかなか浮かびません。△8六角の筋はコメント欄の通りうまくいかなさそうです。△7七桂成▲同銀△8五桂▲8六銀と進んでたとしても攻めをつなげるのは容易ではありません。(先手優勢)

Img_6615城主の屋敷として利用されていた掛川城の二の丸。

67_2時刻は15時半を回りました。
後手は飛車交換後、ひとまず△2二玉と入りました。先手はその間に飛車を下して香を取っています。

Img_6702中村修九段が大盤解説から戻り、神谷八段、中座七段と検討陣が3人揃いました。見解は先手優勢で一致しています。

「ひとりで解説だと、ボケても誰も突っ込んでくれないからつらいです(笑)」(中村修九段)
「仕事だから我慢しなさい」(神谷八段)

5715時過ぎ、後手が▲6六歩の飛車取りに△7七歩と飛車取りへ切り替えした局面で、先手は強く▲6五歩と飛車を取り合う道を選択しました。ほかに▲7七同桂などで飛車の取り合いを回避する順も検討されていましたが、郷田王将が踏み込んだ格好です。
図から△7八歩成▲同金までは必然。そこで後手の指し手が注目されます。

Img_6614天守閣の敷地から臨む対局場の二の丸茶屋。