2024年2月 8日 (木)

20240208a7300482(記者会見に先立ち、花束が贈呈された)

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――シリーズ4連勝という形で、防衛を果たされました。4局を振り返って、感想をお願いします。

藤井「すべて対抗形の将棋で、判断が難しいところが多かったかなと感じています。これまでは2日制で対抗形の将棋はなかったので、今回の王将戦で考えてみるとこれまでと違った感覚を得られるところもあったかなと思っています」


――今回の防衛でタイトルを20期連続獲得となり、大山十五世名人の19期連続を抜いて、史上最多記録となりました。

藤井「記録というのは意識はしていなかったんですけど、意識してもなかなか目指せるというものでもないので、光栄なことだと思っています。これまでのタイトル戦を振り返ると、苦しいシリーズも少なからずあったので、こういう結果はやっぱり幸運もあったかなと感じています」


――藤井さんが初めてタイトルを取られたのが、2020年です。その当時に感じられていた課題で、克服できたものがあれば教えてください。そして、課題として残っていること、どう克服するかの考えも聞かせてください。

藤井「当時のことは覚えてはいないんですけど、まず序盤において当時よりもいろいろな形に対応する力が少しずつ付いたところはあるのかな思っています。それでも、やっぱり考えても判断がつかない局面というのは少なからずあるので、その点は引き続き、 課題でもあるのかなと思います」


――今回は大山康晴十五世名人の記録を更新されました。藤井さんにとって、大山十五世名人はどういう存在として意識されてきたんでしょうか。

藤井「私自身は大山先生ともだいぶ離れていて、もちろん直接お会いしたりといった機会もないです。 伝説上の方というイメージですが、奨励会時代に大山先生の棋譜を並べていたことがありました。主に相居飛車の将棋で、手厚さは当時から結構、先進的な将棋を指されていたのかなという印象です。その棋譜を並べたことは、自分にとってすごく勉強になることだったと思っています」


――王将戦の開幕まで、対局間隔が空いていました。12月はほとんど対局がなかったはずです。そのことは今回のシリーズで実戦の勘に影響したり、逆に研究の時間を十分取れてよかったこともあるかと思います。その辺りはいかがでしょうか。

藤井「王将戦開幕前は対局が少ない時期だったので、その間に対振り飛車の練習をしたりなど、時間はしっかり取れたのかなと思っています。対局の間隔が空いたこともあって、中盤で時間を使いすぎてしまったんですけど、全体としては1局を集中して指すことができたのかなと感じています」


――4勝0敗というのは、これ以上ない成績です。このシリーズを満足度を教えてください。

藤井「シリーズ全体を通して見ても、2日制で対抗形の将棋はこれまで経験がなかったので、序盤から長い時間を生かして、いままでより一手一手考えて指せました。自分にとっては充実したシリーズだったといえるかなと思っています」


――立川での王将戦は4年目を迎えました。 達人戦も始まって、もっと将棋の街みたいになったらいいなと思いますが、指す人や観る人が増えるようなアイデアはありますか。

藤井「立川市ではここ数年、毎年この王将戦の対局を開催していただいていて、私自身は今回で3回目になり、盛り上がりを実感しています。今年から達人戦の決勝戦をはじめとする対局が、立川市で開催されています。公開対局と合わせて、いろいろなイベントも開いていただき、すごくファンの方や立川市の方に将棋を身近に感じていただける機会になったかなと思います。それが今後も続けばいいなと思っています」


――今回の対局地「オーベルジュ ときと」は、地元の人にもすごく憧れの場所です。居心地はいかがでしたか。

藤井「『オーベルジュ ときと』さまは、昨年に新しく開業され、 本当にすごくいいところだと聞いていましたので、私自身も楽しみにしていました。実際に伺ってみると、期待以上で本当に洗練された雰囲気があり、お食事も美味しくて、素晴らしい環境の中でも対局をさせていただきました」


――去年のタイトル戦を振り返るときに、菅井八段との叡王戦を課題として挙げていらっしゃいました。今回、菅井八段とタイトル戦に臨むに当たって、何か意識したことはありますか。

藤井「叡王戦では序盤でペースを握られてしまったり、中盤の難しい局面で急所を掴めずに時間を多く使ってしまったことがありました。今回の王将戦はこの点を意識して、対抗形の経験を積んだり、叡王戦のときよりも序盤を深く考えて臨みました。実際、それが生きたところもあったのかなと思います」


――今年は最初の防衛戦で防衛されました。いいスタートを切れた手応えはありますか。

藤井「対局の間隔が空いたときに、少し内容のよくない将棋を指してしまうことが多かったです。今回も対局が少ない状態で開幕を迎えたんですけど、コンディションを崩さずに戦っていけたというのは、手応えのある結果だったかなと思っています」


――昨年に八冠を達成されたあたりから「少しずつ戦法の幅を広げたい、球を増やしたい」という発言をされていました。今回、第4局は自分から角交換して力戦に持ち込んでいます。いままで、あまり指していなかった展開だと思うんですが、発言されたような意識があったんでしょうか。

藤井「自分自身も、本局は経験のない形でした。序盤でこちらが1歩得するような形になるので、それを生かすことができたら面白いのかなという気持ちもありました。持ち時間の長い将棋だったので、力戦というのも合っているかなと考えたというところもあります」


(書き起こし=紋蛇、写真=玉響)

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20240208a7300323【藤井王将の談話】
――本局の戦型は予想していたか。
藤井「考えられる戦型の一つと思っていました。本譜の馬を作り合う順をやろうと思っていましたが、実際に指してみると構想の立て方が難しかったと感じました」

――1日目を振り返って。
藤井「序盤から一手一手が難しい将棋になったと思いました。(15手目で)1六に馬を引いたんですけど、進んでみると(馬の)働きがよくない気がしました。どうやって馬を使うかが苦心したところでした」

――2日目午前はお互い馬を自陣に引きつける展開になった。
藤井「かなり手が広い局面が続いて、どう判断すればいいか非常に難しいところだと思っていました」

――2日目の昼食休憩明け(57手目)については。
藤井「飛車を3四か1六に打つか迷ったんですけど、本譜はどれぐらい主張があるか分からない展開になってしまったかなと。そのあと銀を繰り出す感じになって、少しずつ指しやすくなったかなと思います」

――これで王将戦は3連覇。今期シリーズを振り返って。
藤井「対抗形は相居飛車と比べて中盤が長い将棋になりやすく、王将戦もそういった展開が多かったんです。長い持ち時間で考えられたことは、いい経験になったと思います」

――これでタイトル戦は20連覇。大山十五世名人の19連覇を更新したが、それについては。
藤井「そういったことは意識せず、棋王戦五番勝負も開幕しているので、前を向いてやっていきたいと思います」

20240208a7300369【菅井八段の談話】
――シリーズを振り返って。
菅井「1日目から苦しくなる将棋が多かったので、自分の研究不足というか、それが結果に出たかなと思います」

――本局については。
菅井「戦型に問題があるのか、その後の指し方に問題があるのか、具体的にどこが悪かったというのは難しいんですけど、苦しい時間が長かったと思います」

――今期番勝負の4局を振り返って、何か収穫はあったか。
菅井「すごい簡単なミスをした将棋もたくさんあったので、内容において収穫があったかというと難しいですね。ちょっと自分のミスが多すぎました」

――今年度は残り1カ月半だが、残る期間に向けての抱負は。
菅井「もう少し力をつけて、振り飛車を指すならもうちょっと工夫するとか、何か戦い方を変えるとか、そういう大きな変化が必要かなと思います」

20240207121図の局面で菅井八段が投了しました。終局時刻は17時52分。消費時間は▲藤井7時間13分、△菅井7時間35分。
勝った藤井王将は4勝0敗で防衛を決めて、3連覇を果たしました。またタイトル戦を20回連続で制したことになり、大山十五世名人(永世王将)が保持している19期連続(1963~66年。名人4期、王位3期、十段3期、王将3期、棋聖6期)の記録を抜いて、歴代単独1位に躍り出ました。

【藤井聡太、タイトル連続獲得期数の記録を更新】
https://www.shogi.or.jp/news/2024/02/post_2399.html

20240208_109図は持ち駒の金を7五に打った局面。控室では「カラい」との声が上がりました。駒割りは▲金香△銀で先手の駒得。加えて玉の堅さ、手厚さでもまさっています。藤井王将が隙のない指し回しを続けて、盤石の態勢を築きつつあります。

20240208_93図は持ち駒の歩を3四に垂らした局面。意図は2一桂を3三に跳ねさせないことです。対して△3四同金には▲3五銀△同金▲同馬の狙いですが、控室の検討陣から「ここで決めにいくのか」と驚きの声が上がりました。図では代えて▲3五銀と引き、歩以外の駒をなるべく渡さないようにして、ジワジワ優位を広げていくのが自然と思われていました。

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