2017年1月

2017年1月 8日 (日)

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本局の流れを振り返ります。振り駒で郷田王将の先手番に決まり、後手番になった久保九段は△5二飛(6手目)と得意のゴキゲン中飛車に構えました。


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郷田王将はゴキゲン中飛車対策として定番の超速▲3七銀戦法で対抗します。久保九段は△3二銀~△5六歩(18手目)と積極的にさばきに出る作戦を選びました。


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後手が5筋で飛車をさばいたところで、▲6五角(23手目)が序盤の焦点になる一着でした。この手は2011年2月の公式戦で深浦康市九段が初めて指し、その年に公式戦では8局の実戦例が出ています。しかし不思議なことに、翌年以降、ぱったりと見ることがなくなりました。飯島七段は「後手に決定的な対策が出たわけではなく、先手に別の有力な手段が出たからではないか」と分析します。郷田王将と久保九段は、ともに居飛車側を持って経験があります。
【王将戦:郷田 角手放し急戦狙う 険しい局面に 第1局 - 毎日新聞】 http://mainichi.jp/articles/20170108/k00/00e/040/164000c

現地では、13時から大日本報徳社大講堂で大盤解説会が始まっています。最初の解説者は飯島七段。午後になって風雨が強まってきましたが、1日目から多くの方が訪れていました。

報徳思想は二宮尊徳(二宮金次郎)が説いた、豊かに生きるための知恵。会場の大講堂は明治36年に建てられた近代和風建築で、国の重要文化財に指定されています。

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再開の時刻が近づき、郷田王将、久保九段の順に対局室に戻りました。13時30分、記録係の渡辺正五段が再開を告げます。久保九段は駒台の駒に手を触れましたが、すぐには指しませんでした。

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12時30分、久保九段の手番で昼食休憩に入りました。消費時間は▲郷田2時間22分、△久保49分。昼食は郷田王将が天麩羅うどん、久保九段が蟹肉あんかけ炒飯。炒飯のあんは食べる直前にかけるとのことです。対局は13時30分に再開されます。

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12時過ぎ、郷田王将が本局2度目の長考に入っています。消費時間は2時間を超えました。対する久保九段の消費時間はここまで37分。時間の使い方が対照的です。控室では神谷八段と飯島七段が継ぎ盤で検討中。郷田王将が6年前に指されていた手段を採用したことで、何か用意の策があるのではと見られています。

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掛川城大手門は、山内一豊が松尾口の大手筋を連雀町に移して大手郭を作った際に、その正門として設けたものです。馬に乗ったまま通行するため、約4.4メートルもの高さがあります。嘉永の地震(1854年)で倒壊、その後再建されましたが、明治期の廃城後、火災で焼失。区画整理事業に伴う発掘調査で規模を確認し、元の位置から50メートル北側に移して復元されました。この発掘で番所の遺構も発見され、大手門と同じ位置関係に復元されています。

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対局前日の検分後には、掛川茶PRレディ、マスコットキャラクター「茶のみやきんじろう」と記念撮影を行いました。郷田王将の兜は徳川家康が使っていたものの意匠、久保九段の兜は山内一豊が使っていたものの意匠と伝えられています。

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掛川対局で使われる盤と駒は、地元経済人の方々によって組織された「ゼロの会」所蔵のもの。駒は掬水師作、源兵衛清安書の盛上駒です。駒を入れる平箱には第60期七番勝負を戦った久保王将と豊島六段(肩書は当時)の揮毫が、盤のふたには歴代王将の揮毫が入っています。

【将棋のまち・掛川城対決:第66期王将戦第1局/上 開催と運営支える「ゼロの会」 松本巌会長(74) /静岡 - 毎日新聞】
http://mainichi.jp/articles/20161215/ddl/k22/040/084000c

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掛川市は静岡県の中西部に位置する市。今川氏の家臣である朝比奈泰煕が掛川城を築き、城下町の基礎を作ると、江戸時代には掛川藩が置かれ、東海道五十三次の宿場町として発展しました。掛川の名は、市域を流れる逆川の崖が欠け落ちることから、「欠川」と呼ばれたことに由来すると伝えられています。

市内の見どころには掛川城をはじめ、掛川城御殿、小夜の中山の夜泣き石が知られます。特産品は茶(深蒸し煎茶)、イチゴ、バラなど。

王将戦の掛川対局は2010年の第59期七番勝負第3局から始まって、今期で8年連続の開催になります。

【静岡県掛川市 公式ホームページ】
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/

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