2020年1月
大盤解説会場に
終局直後
―― 直近の対決の叡王戦と同じく矢倉になりました。どのような構想で。
渡辺 ▲9六歩を突いてから早囲いにするのは、予定だったのですが、そのあとに具体的なプランがなくて。銀交換になって、いちおう予定ではあったのですが。△9四歩で端攻めを見せられて、対応がなかったのが序盤の誤算です。長考して▲7七金上はちょっと失敗したので、粘りにいく方針で組み立てたのですが。
―― 端攻めを見せられて封じ手になったのですが、一夜もやもやした状態だったと。
渡辺 仕方がないかなと思ったんで。▲7五歩は自分の玉頭なのですが、いかないとジリ貧になってしまうので。
―― 形勢が傾いたと思ったのは。
渡辺 今日の午前中は大変になっていたとは思います。よくなったと思ったのは△5八銀に▲5九銀で手駒が増えていったので。それまでは元が悪そうだったので、いい勝負にはなったかなという認識でやっていました。
―― 封じ手の△6三金に▲2四歩でしたが。
渡辺 △6三金なら▲2四歩は昨晩からの予定で、▲2九飛までは決めていました。そのあとは、かなり怖い変化も多かったですが、進んでから考えようかなと。
―― 今日の昼食休憩でも怖い変化も多かったですか。
渡辺 あそこは長考になって、2択3択で迷っていました。本譜の選択が正しかったどうかはわかりませんが、ほかの変化が怖かったので、いちばん無難な順を選びました。形勢はわからないですけど。
―― 勝ちに近づいたと思ったのは。
渡辺 ▲6三銀で攻めが一手速いかなと思いました。
―― これで幸先よいスタートです。第2局に向けて。
渡辺 まだ始まったばかりですし、第2局までほかの対局もありますし、また近くなったら作戦を練って臨めればと思います。
―― 全体的に広瀬八段が描いていたペースをつかめていたところはあったのでしょうか。
広瀬 序盤の▲9六歩に対応としては、まずまずだったかなと思います。▲7七金上は本意ではないだろうなと思っていました。何か攻勢が取れそうかなと感じていたのですが。強く▲7五歩とこられてしまって、思いのほか攻めが難しかったのが誤算ですね。
―― △8四桂に渡辺王将が長考されましたが手ごたえは。
広瀬 本譜の順がいちばん嫌でしたね。駒の損得はほとんどないのですが、こちらの陣形が狭く、広さと狭さの差が出てしまった気がします。
―― 形勢に差を感じたのは。
広瀬 △5八銀は苦し紛れだったのですが、▲5九銀で差がついてしまったかなと。ただ代わる手段が難しいので、その前にさかのぼるということになるでしょうね。
―― △5五歩のあたりは。
広瀬 △5五歩に▲7四歩をあまり読んでいなくて。あらためて読み直すことになったのですが、そこでうまく攻めが繋がらないと、そもそもあまり局面が芳しくなかったということになります。
―― 第2局は先手番になりますが。
広瀬 先手後手もそうですが、次局以降は差が開かないようにしたいと思います。