2019年2月
終局直後
主催者のインタビューに答える渡辺新王将。
【渡辺新王将の談話】
―― 本局の序盤戦はいかがでしたか。
「予想していた戦法の一つではありました」
―― △7三桂(36手目)は控室では予想されていませんでしたが、予定の作戦だったのですか。
「はい。あのあたりまでは予定していました」
―― 封じ手の局面はどのように見ていましたか。
「攻め自体はうまくいっていると思っていましたが、その後、本譜のように反撃されますので。1筋と3筋の反撃がどれぐらいかな、という感じて見ていました」
―― 2日目の進行についてはいかがでしたか。
「▲1五歩(57手目)△同歩▲3五歩の攻め筋は、あまり読んでいなかった手だったので。本譜△5五銀(60手目)は長考になりましたが、自玉が案外危ないので、そこはあまり成算がなかったです」
―― 終盤は追い上げもあったように思いますが、どこでよくなったと思いましたか。
「(80手目△1三金で)銀が入って先に詰めろがかかったので、そのあたりはよくなったと思いました」
―― 一4連勝で王将を奪取されました。
「挑戦者になってからは(タイトルを奪取することを)目標にしてましたので、それが達成できたのは大変うれしく思います」
―― シリーズ全体を振り返っていかがですか。
「中終盤をまずまずうまく指せた気がしますので、それが結果につながったのかなと思います」
【久保前王将の談話】
―― 三間飛車から右四間に振り直す展開でしたが、これは予定の作戦でしたか。
「変化としては、想定内の一つではありました」
―― 1日目の展開はどう見られていましたか。
「評価が難しい局面が続いていたので、先に進まないとわからない局面が多かった気がします」
―― 今日の午前中の流れはいかがでしたか。
「1筋と3筋の反撃がどれほどの効果があるのか、先に進まないとわからなかったので、なんとも言えないなと思いながらやっていました」
―― 終盤は追い上げたようにも見えましたが、いかがでしたか。
「組み合わせがいろいろあるので、一つぐらい何か、こちらにいい変化があるのではないかと考えていたのですが……。いろいろと読んでみると、全部こちらにうまくいかない変化で、いい組み合わせがなかったように思います」
―― 形勢が思わしくないと判断されたのはどのあたりでしたか。
「▲1三銀(77手目)に△2二金と寄る変化が出てきて。(持ち駒の)金を温存されてしまう変化にどうしてもなってしまうので、それで苦しくなったと思いました」
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「変化自体は何十年も前からあるもので、その時のことを思い出しながらやっていたんですが。ちょっと精査してみないと、先手番で使える戦法なのかどうかはわかりませんが、自分のやりたい将棋を指せたとは思います」
―― 今シリーズを振り返っていかがでしたか。
「全体的にチャンスの少ない将棋が多かったように思いますので、今後の課題にしていきたいと思います」
―― 今後の抱負をお願いいたします。
「これまでも順風満帆の棋士人生ではありませんでしたので。また1から階段を登って、しっかり研究をして、この場所に戻れるように頑張りたいと思います」
渡辺棋王が王将奪取
王将戦七番勝負第4局は渡辺棋王が勝ちました。投了図以下は▲8六玉なら△8五金、▲6五玉なら△6四金までの詰みです。終局時刻は17時53分。消費時間は▲久保王将7時間58分、△渡辺棋王7時間1分。渡辺棋王が4勝0敗で七番勝負を制し、王将位を奪取。自身3期目の獲得とともに、二冠に復帰しました。
決め手を放つ
17時25分頃、渡辺棋王は平凡に△8六同飛と走りました。△6九金までの詰めろで、▲8七歩には△6六飛と角を取って▲同銀に△5六角や△6九銀から一手一手の寄りと見られています。
「うわあ、これが厳しいのか。先手が猛追していたけど届かないのか……」(中田功八段)