2015年3月
渡辺王将が51手目を封じる
図の50手目△6三歩で封じ手時刻の18時になりました。渡辺王将はすぐに封じ手の意思表示をしました。この局面で1日目終了。1日目の消費時間は▲渡辺1時間37分、△郷田2時間23分。2日目は13日9時に開始予定です。
郷田九段の新手
長考で△6五歩
郷田九段は▲2五歩に△6五歩と仕掛けました。前例も多い手です。
これを▲同歩は△7三桂で後手の術中にはまります。
▲6六銀は、△8六歩からの歩交換。▲6四歩は△7五歩▲同歩△6五桂~△8六歩で後手が攻め続ける展開になりやすいです。後手は一歩持つと△3五歩▲同歩△3六歩も狙いになります。▲2五歩と突いた手が▲2五桂を消しており、桂を目標にできれば後手が先手の手を逆用した格好だといえるでしょう。
実戦の▲6四角△9二飛▲4五歩は、△7三桂を消しています。▲4五歩は角の退路を確保する必要な一手で、代えて▲6五歩は△6三銀▲5五角△5四銀▲6六角(▲6四角は△6三銀で千日手)△7三桂は攻勢を取れる後手が十分です。
渡辺王将が▲2五歩を選ぶ
△2二玉の局面は、△7三桂と跳ねない形で多く指されている局面です。ここは先手の分岐点で、実戦の▲2五歩以外に、▲2五桂△2四銀▲2八角(つぎは▲4五歩と攻める)、▲1八香(一手パスして後手の最善形を崩す)、▲6八金右(▲6七金右)と玉を固める手も考えられます。
実戦の▲2五歩は力を溜めた手です。△4三金直のパスには▲4五歩と仕掛けて先手ペースの戦いになります。
以下△同歩▲同銀△同銀▲同桂△4四銀▲5三桂成△同銀▲4四歩△同銀▲7一角。
桂を成り捨てて▲4四歩と打つのが急所で、▲7一角で2枚換えが狙えます。△4二飛の受けには▲4四角成△同金▲5三銀です。
ちなみに、もし後手の形が△4二金の形なら▲4五歩△同歩▲同銀の攻めは成立しません。▲4四歩~▲7一角の攻めがないからです。
封じ手準備
大盤解説会
参考棋譜
15時現在、41手目▲2五歩まで進みました。この局面は渡辺王将が8日の第40期棋王戦七番勝負第3局で指したばかりです。
また、副立会人の飯塚祐紀七段は同じ局面を経験しています。その将棋を参考棋譜として紹介します。
開始日時:2008/03/18 10:00
終了日時:2008/03/18 17:12
棋戦:第58期王将戦一次予選
持ち時間:各3時間
消費時間:96▲169△166
場所:東京・将棋会館
先手:飯塚祐紀六段
後手:高野秀行五段
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲4六歩 △6四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲6八玉 △6三銀 ▲3六歩 △5四銀
▲3七桂 △4四歩 ▲4七銀 △5二金 ▲5八金 △4一玉
▲5六銀 △3一玉 ▲7九玉 △7四歩 ▲6六歩 △3三銀
▲4八飛 △4二金右 ▲8八玉 △2二玉 ▲2五歩 △6五歩
▲6四角 △9二飛 ▲4五歩 △同 歩 ▲同 桂 △4四銀
▲6五歩 △4七歩 ▲同 飛 △3八角 ▲4八飛 △2九角成
▲3五歩 △4三銀 ▲9五歩 △同 歩 ▲9三歩 △同 飛
▲8二角成 △9六歩 ▲9八歩 △8六歩 ▲同 歩 △7三桂
▲3四歩 △3六歩 ▲3三歩成 △同 桂 ▲同桂成 △同金右
▲3四歩 △同 銀 ▲2六桂 △8七歩 ▲同 金 △3七歩成
▲4四飛 △同 金 ▲9三馬 △同 香 ▲4一飛 △4二歩
▲5五銀 △4五角 ▲5六銀 △同 角 ▲同 歩 △同 馬
▲6七角 △5五馬 ▲3四桂 △同 金 ▲同 角 △9五桂
まで96手で後手の勝ち
8年前の王将戦佐渡対局
佐渡での王将戦対局は3回目。1回目は9年前、2回目は8年前に、いずれも佐渡市「ホテル大佐渡」で行われました。「ホテル大佐渡」は佐渡市の西側の相川地区にあります。本局が行われている両津は佐渡の東側です。
8年前の第56期七番勝負第7局は、羽生善治王将と佐藤康光棋聖(肩書はいずれも当時)で指されました。羽生王将は永世王将、佐藤棋聖は二冠王がかかっていました。
記者(銀杏)も対局取材で訪れました。戦型は当時佐藤棋聖が指し始めたダイレクト向かい飛車。羽生王将の端攻めを佐藤棋聖は軽視し、形勢が少しずつ傾きました。羽生王将が押し切って王将防衛。羽生王将は永世王将の資格を得ました。
対局前日、船酔いするリスクがあるにもかかわらず、佐渡へ向かうジェットフォイルの中で本を読んでいた羽生王将が印象に残っています。
開始日時:2007/03/19 10:00
終了日時:2007/03/20 18:52
棋戦:第56期王将戦七番勝負第7局
持ち時間:各8時間
消費時間:111▲464△479
場所:新潟県佐渡市「ホテル大佐渡」
先手:羽生善治王将
後手:佐藤康光棋聖
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △9四歩 ▲9六歩 △1四歩
▲2五歩 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3三銀
▲6八玉 △2二飛 ▲7八玉 △6二玉 ▲6五角 △7四歩
▲同 角 △7二銀 ▲5六角 △5二金左 ▲3六歩 △5四歩
▲6六歩 △5五角 ▲3七銀 △6六角 ▲4六銀 △7一玉
▲7七銀 △8四角 ▲8八玉 △4四歩 ▲5八金右 △4三金
▲6八金寄 △7三角 ▲7八金上 △4五歩 ▲同 角 △4四銀
▲6七角 △4五歩 ▲3七銀 △3三桂 ▲7五歩 △5二金
▲7四歩 △8二角 ▲9五歩 △同 歩 ▲9四歩 △6二玉
▲9三歩成 △同 桂 ▲9四歩 △5五銀 ▲9三歩成 △同 香
▲3五歩 △同 歩 ▲2六飛 △2一飛 ▲8五桂 △6四銀
▲8六飛 △2五桂 ▲2六銀 △6五銀 ▲7三歩成 △同 銀
▲9三桂成 △同 角 ▲8三飛成 △8二銀 ▲8五龍 △7六歩
▲6五龍 △7七歩成 ▲同金直 △7六歩 ▲同 金 △9六桂
▲同 香 △同 歩 ▲5六桂 △5五銀 ▲9四歩 △8四角
▲2五銀 △5六銀 ▲同 龍 △5五香 ▲4五龍 △5七香成
▲4四香 △同 金 ▲同 龍 △9七歩成 ▲同 桂 △9六桂
▲7七玉 △7一飛 ▲5七金 △同角成 ▲5三銀 △同 金
▲同 龍 △同 玉 ▲6五桂
まで111手で先手の勝ち
(感想戦の様子。立会人は佐藤義則八段。副立会人は真田圭一七段。記録係を務めたのは、現在三段リーグ編入試験を受験している天野貴元さん。最終局とあって、当時の日本将棋連盟副会長の中原誠十六世名人も現地を訪れた)