第53期王位戦七番勝負第1局
後から利いてくる手
「不思議だなあ」
藤井九段は▲5五歩(図)と突いた。控室ではこの手に代えて▲1一角△6一飛▲9一角成などが検討されていたが、どれも一筋縄ではいかない。見た目は先手がよさそうなのに、具体的によくする順を示すことができない。この▲5五歩は△同歩なら▲同角で弾みがつき、次に▲5四歩と取り込めれば後手陣を乱して攻めやすくなる。力をためた手なのだ。ただ、後手に△4六飛と切られる筋もできる点は一長一短。何より、ここで後手に手番を渡す不安がある。深浦九段は「藤井さんはいいと思っていないんでしょうね」と言う。だから直線的に進めずに含みを持たせようとしている、ということだろう。形勢よしと見ればシンプルに、悪いと見れば複雑に、が将棋のセオリーだ。深浦九段はもう一度局面を見て「不思議だなあ」とつぶやいた。
(雲が空を覆い、風も出てきた。一雨きそうな雰囲気だ。予報は曇のち雨)
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さばきの真髄
図は17時25分頃の局面。藤井九段はすんなり角を成らせて▲9七桂(図)と端に逃げた。次は▲8五桂で飛車先をブロックし、続いて▲4六角と出る味がたまらない。相手の力を利用する、振り飛車らしい指し方だ。後手は△6六歩と打ちたいのだが、駒台に歩がない。ならばと△9五歩は、▲8五桂△9六歩▲4六角がぴったり間に合う。角を成り込んだ羽生王位だが、これからの攻め方には工夫がいるようだ。控室の見解は先手よし。
「突いたときは見通しの立たなかった▲4五歩が、こうなると立派な位ですよね」(深浦九段)
【Twitter解説】
増田裕司>▲8五桂にどうするのでしょうか。▲4六角が絶品ですから。少し先手が指せそうですが、羽生王位の戦い方に注目です。
大盤解説会では深浦九段が登場。「やっと駒がぶつかりましたね」と腕時計を見て言う。二人が解説を続けていると、会場の照明が落ちてしまうハプニングが。すると深浦九段、「サプライズですか? 誕生日の方がいるんでしょうか」と即座の切り返し。これには会場中がどっと沸いた。
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4筋vs2筋
大盛況の大盤解説会
大盤解説会では千日手指し直しを受けて、予定されていた「次の一手クイズ」を急遽「指し直し局戦型予想クイズ」に変更。藤井システムに50票以上が集まったそうだ。来場者が続々と増えているため、席を増やして対応している。壇上では杉本七段と井道女流初段が解説中だ。
井道 藤井先生は食べ物の好き嫌いがあるそうなんです。梅干しと納豆ですね。これは知っている方もいるかと思うんですけども、私が驚いたのは、それを人が食べているのを見るのも嫌い、ということなんです。杉本先生、知ってました?
杉本 知りませんでした。でもそれなら、ぼくが羽生さんだったらおやつに梅干しを頼むなあ。午前は梅干しで、午後は納豆で……。羽生さんはそういうことはやらないと思いますけど。大山先生なら絶対やると思いますよ。勝負の鬼ですからね。
解説会の様子は、USTREAMでも配信されている。現地に来られない方はこちらで楽しんでいただきたい。
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