第52期王位戦七番勝負第6局
感想戦 (2)
最終盤での妙手順
図は110手目△5二金の局面。広瀬王位は△5二金と指されて、思ったより局面が難しいことを軽視していたそうです。実戦は▲2六角と後手玉に狙いをつけましたが、△5六金から後手勝ちに。
感想戦の結果、図では▲7五角(参考図)が羽生二冠指摘の好手で先手にチャンスがありました。本譜と同様に△5六金なら▲同飛△4七角▲1八玉△5六角成に▲6一飛△8二玉▲9三銀△同香▲同角成△同玉(△同桂は▲8一金から詰み)▲9四銀△同玉▲8五銀△9三玉▲9四香(参考1図)で後手玉は詰み。
後手は本譜と同じ攻めが利きません。
▲7五角は直接手ではありませんが、もう1枚先手に金駒が入ると後手玉が詰むようにプレッシャーをかけています。9三から攻める方が後手玉を詰ましやすかったようです。
よって、▲7五角に△5八成桂(参考2図)としがみつきますが、▲6一飛△8二玉▲9四銀(参考3図)が詰めろになります。
詰手順は▲9三銀打△同香▲同銀成△同桂▲同角成△同玉▲8五桂打△9四玉▲9六香△9五歩▲同香△同玉▲9六歩△8四玉▲6四飛成(参考4図)△7四歩▲7五銀△9四玉▲9五歩まで。
驚くべきことに、途中までは完全な遊び駒だった7七桂や9九香、三段目の歩が詰みに働いています。
なお、参考3図の▲9四銀に△同香も▲9三銀から同じように攻めて詰みます。
感想戦で「(参考3図は)負けのような気がします」と羽生二冠。
▲7五角に△5三金と粘る手は検討されなかったため、その場合の手順は不明ながら、5七金を取れるため激戦が続いていたことは確実です。相手玉を直接狙う▲2六角よりも、端を狙う▲7五角が正着とは、難解で複雑な最終盤戦でした。
(銀杏)
感想戦 (1)
インタビュー
―― △6四角~△3六歩の仕掛けの分かれはいかがだったでしょうか。
羽生 手得を生かしてと思ったんですが、生角が負担になってしまったので……。
―― 馬を作られた局面はいかがでしたか。
羽生 押さえ込まれそうなので悪いと思いました。
―― どの辺りから流れがよくなったと?
羽生 △5六金と取って、上に逃げる筋ができたので。それで。
―― 最終局へ向けてひとことお願いします。
羽生 そうですね、全力を尽くしていきたいと思います。
―― △6四角~△3六歩の辺りはいかがだったでしょうか。
広瀬 想定外でしたが、こっちは角を持っているので、それを生かせればと考えていました。
―― ▲2三角成で馬を作る展開になりましたが、その辺りは。
広瀬 馬を作ればよくなるかなと思っていたんですが、思ったより難しかったです。
―― 終盤はいかがでしたか。
広瀬 少し余している気はしたんですが、金引きが……。難しい終盤でした。
―― 最終局に向けてひとことお願いします。
広瀬 いや、ええ、全力で戦います。
(文)