第56期王位戦七番勝負第1局 Feed

2015年7月 9日 (木)

本局の中継の棋譜・コメントを担当した潤です。王位戦第1局は羽生王位の勝利となりました。感想戦では95手目の▲6三角が敗着とされ、代えて▲8五歩△同歩を入れてから▲6三角なら先手優勢とされました。ここでは感想戦で両者が頭を悩ませた変化について、その時の両者の様子を交えながら紹介いたします。

Photo_2図は94手目、羽生王位が△8三同銀と成桂を取った局面。ここから本譜は▲6三角としましたが、感想戦ではその手が敗着とされ、代えて▲8五歩△同歩▲6三角とする順で先手優勢が結論づけられました。以下△8四香のときに、当初は先手よしの変化が出ませんでしたが、本局の立会人である福崎九段が▲7五銀打を指摘。するとこの手があまりにも難解な変化ながら、ひと通り調べられいずれも先手よしと結論づけられました。ところが、羽生王位が、「ちょっとすいません、いいでしょうか」と呟いたひと言をきっかけに、感想戦は思わぬ方向へと進んでいきます。

▲7五銀打に対し羽生王位は△9四香▲8五銀△9八歩成▲8四銀直△8八と(下図)を指摘。一直線の攻め合いですが、この順があまりにも難解だったようで、両者は険しい顔つきで下を向き、しばらくの間固まってしまいました。やがて無言で脳内盤を動かしあったあと、広瀬八段が、「うーん、こっち(先手)足りないですか、駄目ですか」と切り出しました。

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当初の両者の読みは△8八と以下▲8三銀成△7一玉▲8一角成△6二玉▲6三銀△5三玉で後手優勢というもの。そこで▲3四桂と縛っても、△7二桂▲同成銀△8九飛▲6八玉△7九飛成▲5七玉(参考1図)のときに、△6三玉が銀を取りながら5一の飛車で開き王手を掛ける一手となり、王手を受けても△7二金と成銀を取った手が飛車で馬取りとなります。

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ところが広瀬八段の問い掛けに、羽生王位が「まさかとは思うんですけど、不成、不成の筋は……」と呟きました。対して広瀬八段は、「あ、不成。そうか。そうかー」と何かを悟ったかのように返しました。二人が認識し合ったその順とは・・・・・・。

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図(再掲)から▲8三銀不成が羽生王位の「不成」を示した第一弾。△7一玉▲8一角成△6二玉▲6三銀△5三玉▲3四桂△7二桂のときに、▲同銀左不成が「不成」の第二弾。以下△8九飛▲6八玉△7九飛成▲5七玉(参考2図)のときに、7二の桂を銀成でなく銀不成で取った手が燦然と輝いていて、△6三玉とできなくなっています。この変化は95手目で▲8五歩とした変化から23手にも及ぶ順で、もちろんこの順は94手目での変化のひとつに過ぎず、両者が頭を抱え合うのも理解でき、広瀬八段にとってはあまりにも酷な局面だったと言えます。

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羽生王位は参考2図までの進行を確認すると、珍しく、「「駄目だー」と大きな声を出しました。そして、「この将棋はこちらは54手目の△4四銀で、△3四飛として千日手を狙いに行くしかありませんでした」と本局の感想を述べると、広瀬八段は、「▲6三角で▲8五歩とする順は、△同歩▲6三角△8四香のときの具体的な順が分からず断念しました」と返し、感想戦はお開きとなりました。以上、第1局のハイライトでした。

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(感想戦写真 撮影:文記者)

2015年7月 8日 (水)

第1局は羽生王位が先勝。防衛へ向けて好スタートを切りました。本局は北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞の各紙上において、相崎修司さんによる観戦記が8月15日より掲載されます。詳しくはそちらも合わせてご覧ください。

第2局は7月21・22日(火・水)、兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」で行われます。

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感想戦の後半では、対局者が難しい変化に頭を悩ませる場面がありました。じっくり時間をかけて調べられ、結論は先手よし。羽生王位は序盤の作戦がどうだったか、と話していました。感想戦は20時15分ごろまで行われました。

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羽生 かなり力戦調の将棋で、でも端を攻められる形になってしまったので、つまらないことになってしまったかなと思って指していたですね。角と桂香の交換になって、こっちはキズが多いので、自信のない将棋でした。

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広瀬 持ち駒に歩が足りなくて、中盤くらいから歩の枚数が足りないことをずっと懸念していたんですけども、それが最後の最後まで、途中は角と桂香の二枚換えで判断が難しいような気がしていたんですけども、最後のほうは歩が足りない将棋だったという気がしています。

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松尾 どのあたりがポイントだったのでしょうか。気になる手はありますか。
広瀬 ▲6三角と打った手がよくなかったかなと。
羽生 ▲8五歩で、ええ。
広瀬 後から打ったんですけど、先に。迷ったんですけども。
松尾 じゃあ(局面を)作りますね。

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広瀬 この局面は少し自信があったんですけども、数手進んだら全然ダメになっちゃって。実戦は単に▲6三角と打ったんですけど、その前に▲8五歩と入れて。
羽生 ここだともう取るしかないです。
松尾 このあたりは羽生さんはどう考えていましたか。
羽生 ちょっと悪そうなので、粘って指すっていう将棋なのかな、と思って。ええ。
松尾 お二人とも先手がちょっと指せそうという感覚で見られていたんですかね。
羽生 △7四銀打じゃあちょっとつらいかな、でも攻め合いもできないししょうがないかな、という。
広瀬 これで(▲8五歩△同歩を入れて)▲6三角ならだいぶ展開も変わってくるような気がするんですが、どうですかね。
羽生 どうするんでしょうかねえ。なんかしょうがないから打つ(△8四香)んですか。ただ、ここに打ってしまうと攻めに使えないので、ゆっくり来られたときにどうなるか。
松尾 本譜は△9四香から△9八歩成で、ちょっと先手の攻めが遅れた感じでしたか。
羽生 そうですね。ここが一番怖いところなので、長期戦になるのかなと思ってたので、このあとどうやるかわからないですけど。
広瀬 この3九角を使える展開にしたいですけど、なかなか実現させるのは難しそうです。
松尾 実戦はその後も難しい戦いだったと思うのですが。
広瀬 難しくなる順もあったと思うんですけど、角を打っちゃったので逆に目標になっちゃったというか、常に角を取られる変化を気にしながらだったので、飛車の逃げ場所も難しくて、そうこうしているうちに悪化してしまったかな、という気がしました。

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■羽生善治王位

―― お疲れさまでした。一局を振り返っていただきます。羽生王位、序盤から中盤はいかがでしたでしょうか。
羽生 バランスが取れているんじゃないかと思っていたんですけど、ちょっと押さえ込まれている形になってしまったですね。なんか中盤で少し問題があったかもしれないですね。
―― その後角と桂香の二枚換えになったのですが、そのあたりの分かれはいかがだったでしょうか。
羽生 少し悪いんじゃないかと思って指してました。こっちはキズが多いので。あまり自信なかったですね。
―― 終盤はいかがでしたか。
羽生 端にと金ができて難しくなったんじゃないかと思ったんですが。うーん。途中まではどうなっているかよくわからなかったですね。
―― 勝ちを意識された局面は。
羽生 そうですね、△7二桂と打って。

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■広瀬章人八段

―― 続いて広瀬八段、お願いします。横歩取りから押さえ込むような展開になったのですが。
広瀬 戦いを起こさないようにしていればギリギリ均衡が保たれるかな、という感じでした。
―― その後角と桂香の交換になったのですが。そのあたりはいかがでしたか。
広瀬 しょうがないかな、という気がしたのですが、そんなに悪くないかな、という気がしていました。
―― そのあとで攻めていったところではいかがでしたか。
広瀬 ちょっと、うーん……攻め方というか、局面のバランスの取り方を間違えたというか。と金を作られて急に景色が悪くなった気がしました。

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