2024年7月

2024年7月17日 (水)

別室で封じ手の記入を終えた渡辺九段が対局室に戻ってきました。渡辺九段は2通の封筒を藤井王位に差し出し、藤井王位が署名を入れて返します。最後に渡辺九段が封筒を森内九段に預けて、1日目が終了しました。

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18時、渡辺九段が図の局面で封じ手の意思を示しました。封じ手の考慮時間は44分。消費時間は▲渡辺3時間37分、△藤井3時間52分。対局は明日9時に再開されます。
森内九段、野月八段、久津女流三段、鈴木廉三段に話を聞きました。封じ手予想は▲3四同角が3人、▲3六飛がひとり。それぞれの見解は次の通りです。
森内九段「第1局の千日手指し直し局と同じ出だしになり、そのときに戦った内容と事後の研究を含めた勝負になりました。早い段階でポイントの難しい将棋になり、手探りで指している展開です。水面下で激しい変化もあったと思いますが、比較的穏やかな戦いになったのが1日目でしょう。ほとんど形勢に差はないと思いますが、私自身は後手番のほうが指す機会が多そうなので、後手を持ってみたいです」
野月八段「相掛かりになり、渡辺九段が前局の展開を途中までなぞる形で進んでいました。お互いに研究を積んだうえでの進行で、駒組みが終わった中盤はバランスを取るのが難しく、お互いに指し手が難しい状況を迎えています。角交換後に先手の飛車がいじめられない状態で戦いが続いていくと思いますが、どこでバランスが崩れてしまうのか、どっちが攻めて受けるのかもわかりません。2日目は中盤のねじり合いで、どっちが先に動いていくかに注目したいです。私自身はどっちを持っても自信がないですが、直感的には先手を持ちたいです。駒が少し前に出ている分だけ指しこなしてみたいと思ったので」
久津女流三段「一手一手が慎重に進み、難しい将棋だなと思っていました。現局面は先手が歩を持つと、攻め筋が増えます。▲3四同角として△同銀▲2四飛と進む気がしますね。▲3六飛△5六角▲同歩で、▲5七玉と逃げられるようにする味も捨てがたいのですが」
鈴木廉三段「▲3四同角と▲3六飛で迷いますが、▲3六飛にします。△5六角▲同歩△2七角で難しそうです」

詩人の石川啄木は函館の自然を短歌に残しました。大森浜にある啄木小公園の看板によれば、函館に滞在した約4ヵ月間は、啄木の短い生涯の中でも楽しい期間だったとあります。


 頬につたふ
 なみだのごはず
 一握の砂を示しし人を忘れず


歌集『一握の砂』の名が取られたこの一首をはじめ、「砂」は啄木が好んで散歩した大森浜がモチーフになっているといわれます。函館山を望む大森浜には、啄木像が建てられています。今回、啄木亭で対局に使われている部屋にある書も、啄木が詠んだ短歌です。


 たはむれに母を背負ひて
 そのあまり軽きに泣きて
 三歩あゆまず

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昼食休憩明けから▲3五歩(57分)△同歩(65分)▲5八金(5分)△7五歩(38分)▲5六角(17分)と進みました。考慮時間から中盤の勝負どころであることがうかがえます。飛車の横利きを通す△7五歩が大きな手になるので、黙っているわけにはいきません。渡辺九段は3筋を突き捨てて動く準備をすると、▲5六角(48手目)と急所のラインに角を据えました。

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攻め駒を3筋方面に集中させて対応を尋ねています。控室で検討する森内九段は「戦いになるような気がしますね」と話します。17時を過ぎ、どちらが封じるか気になる時間帯になってきました。1日目のうちは本格的な戦いに入らないと見られていますが、2日目は早くから決戦に入る可能性も出てきました。

15時、午後のおやつの時間になりました。藤井王位は「テリーヌ・ド・ショコラ」とアイスティー、渡辺九段は「バタークリームケーキ(メロン抜き)」とオレンジジュースを注文しています。テリーヌ・ド・ショコラはノワールとフロマージュの2種類。渡辺九段はケーキに添えられているフルーツのうち、メロン抜きで希望しました。

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