■藤井聡太王位
――角換わり腰掛け銀から交換した銀を打ち合い、▲2五角(67手目)と打って△2二金(68手目)と壁金にさせた。このあたりどう見ていたか。
藤井 ▲2五角と打ったんですが△2二金を軽視してしまって、そうなると▲2七飛(63手目)が悪い形になってしまって、1日目は形勢としては少し失敗してしまっているのかなと感じました。
――封じ手のあたりは厳しい感覚もあったか。
藤井 どのくらい頑張れるかという形かなと思っていました。
――2日目、攻め合いになったあたりはどう思っていたか。
藤井 どんどん攻めてこられないようにしのげるかどうかという感じかと思っていました。形勢としては大駒の働きがよくならないので苦しい感じかなと思っていました。
――竜に飛車をぶつけて飛車を持ち合ったあたりは。
藤井 ちょっと苦しいかなと思ったんですが、その手前、▲5四歩(99手目)に△5二歩(100手目)と受けたところで▲7五銀(101手目)以外にあまり価値が高い手がないと感じたので、苦しいながら勝負にいってどうかと思っていました。
――▲6七玉(121手目)、▲5七玉(127手目)としのぐ展開になった。
藤井 やはり苦しいとは思ったんですけれど、飛車交換を選んだので受けに回る展開はやむをえないかと思っていました。▲5八桂(129手目)と受けてその局面がどうなっているかかな、と。際どい局面かなと思っていました。
――際どいながら、詰めろをかけながら自玉を安全にした。
藤井 ▲4五銀(143手目)から自玉を安全にすることができて少し抜け出すことができたかなと感じました。
――一局を振り返って。
藤井 早い段階でミスが出てしまって、そのあとは苦しい展開を長い間強いられたかなという感じで、最後の最後に好転したのかなと思います。
――七番勝負を振り返って。
藤井 シリーズ後半に内容も含めてなかなかうまくいかないところが多かったので、本局も含めてしっかりと一局一局を振り返って次に生かしていきたいと思います。
――通算タイトル獲得31期となり、渡辺明九段の記録に並んで歴代4位タイとなった。数字を積み重ねたことについて。
藤井 そのことはまったく意識していなかったんですけれど、一つ数字を積み上げて渡辺九段と並ぶことができたことは光栄に思います。
■永瀬拓矢九段
――1日目、壁金になったところはどのように見ていたか。
永瀬 形勢はよくわからなかったんですけど、△3二玉(70手目)までは一つの予定でした。
――2日目は△8六歩(84手目)から攻める展開になった。
永瀬 もう少し主張がほしいなという感じもしました。△8八歩(86手目)と打ってしまうと歩切れになるので、攻めが切れないようにしていたつもりだったんですが、△8九歩成(94手目)から△2八馬(96手目)はかなり不本意という感じもしました。組み立てとしては違う手を選びたかったと思いました。
――飛車交換になったあたりは。
永瀬 ▲8七金(117手目)の局面がどうなっているかわからなかった。複雑な局面なのかなと思いました。
――終盤、△4七馬(124手目)と角を取って攻めたあたりは。
永瀬 ▲5七玉(127手目)と寄られて▲5八桂(129手目)は見えたんですけど、局面が負けになってしまっている気がしたので、手前でもう少し曲線的な順を拾っていかないといけなかったかなと思います。ただ、具体的によくわからなかったです。
――一局を振り返って。
永瀬 角換わりの定跡形で全体的に楽しみができればと思ったんですが、2日目に正しい手が指せていたかどうか課題なのかなと思います。
――七番勝負を通して。
永瀬 出だしで3連敗してしまって楽しみが少ないかなと思いました。