2023年7月

2023年7月26日 (水)

Img_2506 終局直後の様子。

Img_2510 インタビューを受ける藤井王位。

【藤井王位の談話】
――(53手目)▲4五歩と先に仕掛けました。このあたりの序盤はいかがでしたか。
「右玉に対して、こちらがどう打開するかという将棋だったのですけど。本譜は▲4五歩で仕掛けていったのですが、△同歩のときに、最初は▲同銀と取ろうかなと思っていたのですが、△4四銀とぶつけられたときに6九の飛車が働きが弱い形で。ちょっとバランスの取り方がわからなかったので。ただ、本譜▲4五同桂では、駒があまり前に、それ以上出ない形なので、(こちらから)仕掛けていったんですけど、うまくいっていないのかなと思っていました」

――その後は、後手が△1五歩(58手目)と動きました。このあたりはいかがでしたか。
「1筋から動かれて、どう対応するか難しいかなと思っていました。△1八歩(60手目)のときに、▲6五歩のような感じで動いていく手もあったかなと思うのですが、ちょっと、封じ手に入れるタイミングを少し間違えてしまって。その辺り、ちゃんと精査しないまま進めてしまったところは、ちょっとよくなかったと思っています。本譜(64手目△3六角成)馬を作られて見ると、少し苦しめの形勢なのかなと思っていました」

――(75手目)▲4七金と上がった中盤の辺りはいかがでしたか。
「一応、1八の香がなんとかさばける目途がついたので、少し持ち直したかなと思っていました。ただ、依然として後手陣が手厚い形で。ちょっとどう手を作っていけばいいのかわからない局面が続いていたかなと思います」

――(87手目)▲4二銀と打ちこんだ辺りは、ある程度見通しがついていたのでしょうか。
「いや、それほど急所をつけているわけではないので。攻めてはいったのですが、あまり成算の持てない指し方になっているかなと思っていました」

――(97手目)▲8一飛のあたりは、手応えはありましたか。
「後手陣はまとめづらい形かなと思っていたのですが。ただ、こちらも攻め駒が少なくて。これ以上、手を作っていくのがちょっと難しい形で。6九の飛車の働きが少し弱いのも懸念材料で。どうなっているかわからないなと思っていました」

――(106手目)△5八角と打たれて、受ける展開になった辺りはいかがでしたか。
「△7五歩(102手目)のときに、あらかじめ玉を動かして受ける手とかも考えていたんですけど。最終的に本譜を選んだのですが、かなり当たりが強い形になってしまって、ちょっとまずい順を選んでしまったかもしれないと思っていました」

――(115手目)▲4四香~▲1一角が鋭い切り返しに見えました。この辺りはいかがでしたか。
「△4三馬(114手目)を軽視しまっていて。本譜は何か負けの順があってもおかしくないなと思いながら指していました」

―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「中盤にかけて、どういった形で攻めを見せていくかという構想が非常に難しい将棋で。その辺り、少し方針が定まらないまま指してしまったところがあったので。その辺りは課題が残ったかなと感じています」

――第4局に向けて一言お願いします。
「4局目はまた後手番になるので。これまで以上にしっかり準備をして、よいコンディションで臨みたいと思います」

Img_2511 インタビューを受ける佐々木七段。

【佐々木七段の談話】
――右玉で対抗しました。駆け引きもありましたが序盤を振り返っていただけますか。
「▲4五歩(53手目)から動かれてしまっているので対応が難しかったです」

――1筋から反撃を仕掛けました。封じ手のあたりまでどのように見ていましたか。
「こちらが攻めを呼び込むことになりましたが、1筋を刺激したのはあまりよくなかった気がします。6筋の攻めも怖かったですし、馬を作ってもポイントになっていなかったかなというところで、いろいろと誤算がありました」

――▲3三歩(65手目)に大長考をされました。この辺りは、どんなことを考えていましたか。
「局面に自信がなかったのでどう粘るかで。▲3三歩は打たれるなというのは、封じ手の前から可能性があると思っていましたが、ちょっと方針が決まらず△3一金や△4二金などをいろいろ比較して、どれも自信がなかったです」

――△5四銀(74手目)や△2四馬(76手目)は挑戦者らしいジッとした動きと思いましたが。この辺りは。

「▲4七金(75手目)に、攻める手も少しあるかなと思ったのですけど。うまく余されそうだったので我慢するしかないかなと思いました。本譜、△1三同香(80手目)で△1三同馬もあるかなというところで。▲4二銀(87手目)と打たれた形はかなりうるさくなってしまったかなと思いました」

――▲4二銀から▲5一角(93手目)と打たれたところは、手応えとして苦しいでしょうか。

「少し前の局面からちょっと苦しいなとは思っていたのですが。(93手目△5一同飛で8一の)飛車がいなくなって、先手玉への脅威がなくなってしまったかな、というところです」

――(102手目)△7五歩から反撃に出ましたが、この辺りは手応えとしてはいかがでしたか。

「本譜の▲8七玉(109手目)の対応と、▲4四香(115手目)の切り返しが、気づくのが遅れてしまって。もう少しうまく粘る順を探さないといけなかったかなと思いました」

――本局を振り返ってください。

「受けに回ろうかなというところで、ジッと対応されて、こちらが苦しい時間が長く続いてしまったかなと思います。中終盤、多少は粘って、急所が見えないようにと心がけていましたが、徐々に悪化していったかなという気がします」

――次局に向けて一言お願いします。

「課題がいろいろとあるので、しっかりとクリアして。いい状態で臨めるように切り替えたいと思います」

Oui202307250101_131

藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する、伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第3局は、19時1分に131手で藤井王位の勝ちとなりました。消費時間は▲藤井7時間49分、△佐々木7時間55分。勝った藤井王位は3連勝で、4連覇にあと1勝です。佐々木七段はあとがなくなりました。
第4局は、8月15・16日に佐賀県嬉野市「和多屋別荘」で行われます。

20230725102時刻は18時を回りました。△7五歩までの消費時間は▲藤井6時間52分、△佐々木7時間42分。
この局面で藤井王位は30分考えて、18時現在で残り時間は38分に。佐々木七段との時間差が縮まってきています。
現局面に至るまでに木村九段がポイントして挙げたのが以下の局面です。

2023072587_287手目の▲4二銀。この手が好手でした。
「藤井王位はこの手で攻めが続くと見て、ここまで組み立てて来たのでしょう」と木村九段。
流れは藤井王位に一気に傾きかけましたが、そこを踏みとどまったのが次の図です。

20230725100100手目の△5二銀が佐々木七段の粘り強さが出た一手。この手で踏みとどまったことで、現局面で藤井王位が長考することになっているようです。
ここからは互いに死力を尽くした勝負になりそうです。

Img_2401小樽の街並み。

2023072587図は16時45分頃の局面。▲4二銀までの消費時間は▲藤井6時間31分、△佐々木7時間24分。
長考合戦から一転して、両者の指し手がペースアップ。10手ほど一気に進みました。図の▲4二銀は、AIが第一候補に挙げていた手で、次の狙いは▲3一角です。控室の木村九段は「▲4二銀は浮かばないなあ」と言っていましたが、藤井王位はノータイムで銀を打ちました。当初からの予定だったようです。佐々木七段は残り時間が40分を切っています。ペースアップして追い上げることができるかどうか。正念場を迎えています。

Img_2442 残り時間が少なくなった佐々木七段。ここを耐えらえるか。