2013年7月

2013年7月30日 (火)

17時40分過ぎ、大盤解説会から戻った中座七段と久津女流初段が控室に。「難しくなったんですよね?」と中座七段は口を開く。「さっきの行方さんのため息はなんだったんでしょうか」と楽しげだ。行方八段と中座七段は親しい仲。前夜祭の行方八段のあいさつでは、以前北海道を訪れた際に、中座七段の実家に泊まったことが触れられていた。
盤上はきわどい形勢。羽生王位の玉は相当に危険な形に追い込まれている。

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飛金当たりの▲6三銀に対し、行方八段は先手の玉頭から反撃に出た。図の先手玉は金を1枚はがされて薄くなっている。しかし、先手は右側に広い空間があるうえ、駒をもらったことで後々の攻めがより厳しくなっている。先手がリードを広げているようだ。
控室の継ぎ盤の周囲は静か。石田四段はじっとモニタを見つめている。

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上図から行方八段は△6三飛▲同角成△7七銀(図)と一気にスピードアップして攻める。鋭い打ち込みだ。▲同桂△同歩成▲同玉に△7五香(参考図)が後手の狙い筋のひとつ。

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右図で合駒をすれば△8七金で詰み。▲8六玉と逃げれば△5七角成と銀を取られて詰めろがかかる。これはきわどい展開だ。
17時30分、△7七銀を見てそれまで早かった羽生王位の指し手が止まっている。控室の継ぎ盤の上では活発に駒が動いている。

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行方八段は銀を取りにいって先手の攻めを催促した。銀を取らせている間に別方面からの攻めを考えそうな局面だが、羽生王位は▲5四銀!(図)と捨てる強手を放った。「見えていない攻めがあるのだろうか」と、控室では先手の継続手を探している。
実戦は図から△5四同金▲2四香△同歩と進み、そこで羽生王位が手を止めた。指された手は▲6三銀(下図)。後手玉のまわりに目がいっていた検討陣から、ため息が漏れた。

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直線的な寄せを目指した手ではなく、相手の攻め駒に働きかける曲線的な手だ。△8二飛とまわる手が幸便に見えるが、それは▲8三歩△同飛を利かせて飛車の横利きを守りから消したうえで▲5四銀成と金を取る。この手自体はまだ詰めろではないが、後手が銀を渡せば▲3四桂から後手玉は詰み。後手は攻め方を限定されることになる。

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(継ぎ盤で検討する田丸九段と石田四段)

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16時、現地では大盤解説会が始まった。中座七段と久津女流初段は、対局前日の両対局者の様子から話を始めていた。
「行方さんはとてもリラックスしていましたね。羽生王位は金曜日に深夜に及ぶ対局があって、中一日でこちらに移動してきたんですが、いつものように平然としていました」(中座七段)

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15時25分ごろ、盤面を映すモニタのスピーカーから、大きなため息がいくつも聞こえた。羽生王位が席を立っていることから、行方八段のもののようだ。

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羽生王位が駒得を拡大し、▲4一角(図)と矢倉囲いの急所に狙いを定めた。次に▲2七香や▲1五桂といった筋があり、得した駒を使っての攻めは理想的な流れ。戦力差があるため、後手の行方八段は真っ向勝負では苦しくなりそうだ。控室では「先手がよさそう」との声があがり、Twitter解説でも阿部隆八段が「先手有利」の形勢判断を下している。

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