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2022年2月

2022年2月24日 (木)

伊藤沙恵新女流名人への記者会見

感想戦終了後、伊藤沙恵新女流名人への記者会見が行われました。

Img_2347(記者会見に臨む伊藤沙恵新女流名人)

―― 改めまして、初タイトル獲得の思いをうかがえますでしょうか。

伊藤 実感が湧かないですね。すごく長かったような気がします。

―― 長かったというのは歳月やそれとも何度も何度もチャレンジというところもあるかと思うのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。

伊藤 苦しかったんで、タイトル戦に挑戦できるっていうことはそんなに何度も経験できることではないのでうれしいんですけど、やっぱり負けたりするときついので、今回は結果を残せてよかったなあと思います。

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―― 支えてくださっているお母様から戦前に、「沙恵のまだ見ぬ景色を見てみたいという強い願いがかないますようにと切望しています」とのメッセージをいただきました。そのお言葉を受けて、どのような思いでいらっしゃいますでしょうか。

伊藤 ずっと応援してくれて、サポートもしてくれて、すごく感謝しています。ようやく親孝行できたなって思いますね。

Img_2371(涙を流しながら、会見に応えるシーンも見られた)

―― 第3局で、ちょっと完敗という内容だったかと思うんですが、そのあと公式戦で結果も伴わないという状況で本局を迎えられたと思うのですが、その間、心の揺れ動きなどはなかったのでしょうか。

伊藤 いや、結構ありました。3局目は見せ場も作れなくて早い段階で形勢を悪くしてしまいましたし、2月は勝っていなくて、正直、これじゃーダメだなと感じだったんですけど、でも、師匠から言葉をもらって、すごく勇気づけられたんですよね。やっぱり応援してくれている人の気持ちに応えたいなというのはずっとあったので、気持ちを切らさずに頑張りたいなと思いました。

―― その師匠の屋敷伸之九段からうかがっていまして、「大変なことが長く続いて、多かったと。ただ、それは無駄ではなかった。何故ならその経験が生きるからだ。結果というものが出ればさらなる修行というものは続けられるものだ。里見さんや西山さんはまだまだ高い壁で、逸れに迫る活躍をしてほしい。おめでとう」という言葉をいただきました。その師匠に対して、存在というか、お言葉をうかがえますでしょうか。

伊藤 (涙をながしながら)めちゃくちゃありがたいです。本当に感謝しかないですね。お会いするといつも通りなんですけど、応援してくれているのも分かりますし。お言葉もありがたいですし。お会いしてもいつも通りに接してくれるのもありがたいですし、すごく大きい存在なので。1つ結果を残せて、少しは恩返しできたのかなと思います。

Img_2375(最後はマスクを外しての撮影。記者のリクエストに応え、一冠のポーズを取った)

以上で第48期五番勝負第4局の中継を終了いたします。第48期女流名人戦の中継をご観戦いただきましてありがとうございました。第49期もどうぞお楽しみに。

(潤)

感想戦

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(潤)

終局後インタビュー

終局後、両対局者に主催紙インタビューが行われました。

□伊藤新女流名人のインタビュー

-- 一局を振り返って。
 序盤はゆっくりしているとまずくなるのかなと思って、自ら駒をぶつけていました。遠い場所の開戦で相手にはしてもらえないかと思いましたが、仕掛けられたあたりは難しいのかなと思って指していました。

-- 序盤を振り返って。
 こちらは自然に指し進めていたつもりでしたが、少しわかりませんでした。

-- 先にと金作った局面(46手目)について。
 と金が生きる形にしたいなと思っていましたが、桂を逃げられるような変化もあったので、と金が残ってしまわないように指したいと思っていました。

-- △4九飛(58手目)と攻めに転じた局面は。
 わからなかったです。天守閣美濃は飛車に強い形ですので。ただ、こちらも割と堅めの陣形でしたので、難しいのかなと思いました。

Img_2293(初タイトルとなる女流名人を獲得した伊藤沙恵新女流名人)

-- ▲2五桂(61手目)あたりの中盤戦について。
 できれば中央に使いたいはずの桂だったと思うので、こちらはこちらで主張があるのかなと。

-- よくなったと思った局面は。
 ずっとわからなかったんですよ。玉頭戦なので1手間違えるとすぐに終わってしまうので。最後の最後まで本当にわからなかったです。

-- 最終盤はどのような思いで指していたか。
 時間がどんどんなくなっていく中で、間違えないようにしたいなと思っていました。

-- 勝ちを確信したのは。
 △8六桂(112手目)と打ったところで、受けが難しそうなのかなと思いました。

Img_2301(質問に目を赤らめる場面も見られた)

-- 初挑戦から7年、9度目の挑戦でのタイトル獲得について。
 うれしいです。ずっと応援してくださる方がいらっしゃったので、結果を残せてよかったなと思います。

-- 里見女流名人からタイトルを獲得した点について。
 これだけ長くの間、いろいろなタイトル戦で安定した成績を収められている方なので、すごいなと思います。こういう舞台で何度も戦わせていただいて、うれしいです。
これまでいろいろ経験をさせていただき、確実に自分の成長につながっているのかなと思います。将棋に対する向き合い方などが変わったのかと思います。

-- これからの夢について。
 タイトルを持たれている方は、素晴らしい方、強い方ばかりです。自分も見合った実力をつけなければいけないと思うので、これからもがんばっていきたいです。

 

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■里見女流名人のインタビュー 

-- 一局を振り返って。
 うまく仕掛けることはできたと思いましたが、攻め方がひどくて、時間を使った割に正解が指せなかったのが悔やまれます。

-- 序盤について
 いい形で仕掛けることはできたので、作戦的にはまずまずかなと思っていました。

-- 4筋に飛車を回った構想(43手目)は。
 いちばん自然に指したつもりだったので、いけると踏んで本譜で攻めていきました。

Img_2307_2 (里見香奈女流名人は、13連覇はならず、初失冠となった)

-- 飛車交換から▲4一角(53手目)と据えた局面について。
 ▲3四角と迷っていました。本当は切り合っていく順を考えていたのですが、自重してしまって均衡を保てませんでした。攻め方が変だったと思います。

-- ▲2五桂(61手目)と跳ねた局面について。
 当然▲6三角成と切って、中央に桂を活用しなければいけませんでした。ちょっと大局感がおかしかったです。踏み込んでいく順を考えていて、そちらを選ぶべきでした。

-- 終盤について。
 あっさり、と金を金と交換した(67手目)のですが、やや苦しく、細い攻めになりました。馬が使えていないのがひどく、苦しいかなと思っていました。

-- 今期の4局を振り返って。
 スタートダッシュが悪くて、1、2局目でだいぶ乱れてしまいました。そのあたりが自分の弱さかなと思っていました。

-- 17歳から守り続けた女流名人を失った点について。
 いつかは当然負けてしまうことはわかっていました。ただ、長きにわたってタイトルを保持していく中で、人間的に成長させていただくことがかなり多かったので、女流名人戦という棋戦に感謝したいです。

-- 20代最後のタイトル戦だった。指し盛りを迎えるにあたってどのような目標があるか。
 ソフトが普及してきていて、振り飛車が厳しいとされている時代ではありますが、その中で自分の個性を生かした将棋を指せていけたらと思います。

 

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(書き起こし=武蔵)

(潤)

伊藤女流三段が新女流名人に

Joryumeijin202202240101114第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局は、114手までで伊藤女流三段の勝ちとなりました。終局時間は17時54分で、消費時間は▲里見2時間57分、△伊藤2時間57分。この結果、伊藤女流三段が3勝目を挙げて、初タイトルを獲得。新女流名人となりました。

(武蔵)

伊藤女流三段が勝勢に

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図の△8六桂が詰めろになっており、非常に受けにくく、伊藤女流三段が勝勢になったようです。初タイトル獲得の瞬間が近づいてきました。

(潤)

攻防の角

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図は里見女流名人が両銀取りに飛車を打ったところ。ここで伊藤女流三段は△5三角(下図)と攻防の角で対抗。両銀取りを受けながら将来の玉頭攻めを見た攻防の角打ちで、浦野八段は「よさそうな一手ですね。伊藤さんがぐっと勝ちに近づいたのではないでしょうか」と見解を寄せました。

2022022490 Img_2098(伊藤女流三段は攻防の角打ちで初タイトルを手繰り寄せにいった)

(潤)

どうする?

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図は16時頃の局面。里見女流名人が▲9二歩と垂らしたところです。浦野八段は「ここでどうするのかな。△6五歩や△5五歩は考えて見たい手で、例えば△5五歩▲同銀△同銀▲同角の進行は先手の角の端へのにらみが消えて、後手としてはちょっと安心できます。ほかには△8四歩もありそうで、▲同角△8三金はいかにも棋風通りといった感じの進行ですよね。ただしその順は以下▲6二角成△同金上▲9一歩成△同玉▲9三歩のような進行が気になりますか」と解説しました。

Img_2102(里見女流名人は劣勢を跳ね返せるか)

(潤)

後手指せる

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里見女流名人は図から▲2五桂と逃げ、△5四歩に▲3二角成と駒得を目指す方針を見せました。以下△3七と▲2一馬△4八と▲同金△同飛成▲1一馬(下図)と進みましたが、先手は桂香と金の2枚換えながら後手玉が手つかずの状態でもあり、浦野八段は「本譜の進行は後手が得をしたのではないでしょうか。後手が指せるようになったと思います」との見解を示しました。

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Img_2220(指しやすくなったと評判の伊藤女流三段)

(潤)


いい勝負

2022022460図は15時頃の局面。互いに主張がある展開で、浦野八段の見解は「いい勝負」。続けて「間違えるとすぐに悪くなるような感じで、ここ数手は勝負どころでしょう」と話しました。

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(畠山鎮八段と藤井奈々女流初段によるコラボ扇子の絵揮毫)

この絵揮毫に扇子用の木や紙が張られて直筆扇子が完成する。この扇子は日本将棋連盟の配信番組「Wonder将棋」で視聴者への販売商品として扱われた限定品(すでに募集締め切り)とのこと。Wonder将棋は日本将棋連盟とMBS(毎日放送)が協力して将棋の普及と発展を目的としたYouTubeによる将棋番組で、 毎月第3金曜日よる8時から、2名のゲスト棋士を招いて配信している。

【Wonder将棋】
https://www.kansai-shogi.info/wonder14/

(潤)

浦野八段と販売へ

浦野八段と関西将棋会館1階にある販売を訪れました。

Img_2242(浦野八段は販売店に入ると、ショーウインドー内を指差した)

Img_2244(里見女流名人揮毫扇子、「一日一止」が飾られていた)

Img_2257(続いて書籍のコーナーで足を止めた)

Img_2258(浦野八段創作、ハンドブックシリーズの詰将棋本がずらりと並んでいた)

Img_2261(「全本サイン入りです。1冊いかがでしょうか」と浦野八段。ハンドブックシリーズは総発行部数27万部を突破。新作である赤色の5手詰ハンドブックは品切れだった)

(潤)

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