防衛会見
□藤井王座インタビュー
――最終盤を振り返って。
藤井 終盤の入り口あたりでは、少し苦しめの形勢と感じており、秒読みに入ってからは、形勢判断するのは難しかった。△7一桂(120手目)と受けたとき、本譜の▲6三金から▲5四桂(121手目~123手目)が厳しい手順で、足りない形だと感じていた。
――シリーズ全体では3連勝で防衛を決めた。結果を受け止めての感想と、その内容について。
藤井 シリーズ全体を通して、中盤戦の長い将棋になった。判断の難しい局面が続いて、対局してい充実感のあったシリーズだった。
――王座防衛で、すべてのタイトル戦で防衛を果たした。防衛戦の難しさについて。
藤井 防衛については、まったく意識はしていない。前期よりも充実したシリーズにできればという気持ちで指していた。防衛戦は、番勝負開幕に向けてしっかり状態を上げていかなくてはいけない。ただ、シリーズが始まってしまえば、防衛を意識することなく、今期も前期と同じく挑戦する気持ちで指していたといえるかもしれない。
――再び八冠を目指したいという思いはあるか。
藤井 いまの段階ではまったく考えておらず、目の前の一局に全力を尽くしたい。10月からは竜王戦が開幕する。そちらでいい将棋を指せるようにと思っている。
――今シリーズは「指したことのない指し方を試した」との話があった。
藤井 今回のシリーズは、後手番のときに実戦例の多い形から外れて、難しい将棋にできればと考えていた。実際に指してみて収穫もあった。戦型選択としても、いままでより幅を広げられれば、と意識していた。
――△9六香を指すとき、最後の勝負手という意識があったか。
藤井 △9六香では△9一飛と迷っていた。ただ、どちらでも少し足りないと感じていた。最後という意識というよりは、勝負手を探しながら指していた。
――次は竜王戦が控える。挑戦者の佐々木勇気八段に対する、現在の印象について。
藤井 佐々木八段の最近の対局を見ていると、鋭さに加えて手厚さもあって、非常に充実されているという印象がある。大変なシリーズになると思うが、佐々木八段と2日制の対局をするのは初めてで、楽しみな気持ちもある。一手ずつしっかり読みを入れて、充実した内容の将棋が指せるようにと思う。
――ストレート勝ちという結果を見て、自身の手応えは。
藤井 前期と比較すると、内容は改善したところはあった。形勢判断の難しい局面が多く、そういった局面をしっかり考えることができたという点は収穫があった。それと同時に、いまより形勢判断の力を高めていかなくてはいけないとも感じた。
―― ファンの方々に向けて。
藤井 今シリーズは中終盤の形勢判断が難しい将棋が続いた。手応えであったり、課題であったり、色々なものが見つかったと感じる。これから生かしていけるように、引き続き、頑張っていきたい。