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王座戦がタイトル戦に昇格したのは1983年のこと。陣屋ではそれ以前にも王座戦の対局が行われています。昔の観戦記は日本経済新聞の夕刊に掲載されていました。陣屋で行われた対局の観戦記をいくつか、ひもといてみます(棋士の肩書は対局当時)。
1963年7月12日に行われた加藤一二三八段-芹沢博文八段戦の観戦記には、「最近は振り飛車ブームで居飛車党から振り飛車党へ転向する棋士がかなり多い。この点、ふたりはともに純粋の居飛車党」という記述があります。今日、東京で大盤解説を担当している佐藤天彦九段は居飛車党から振り飛車党に転向した代表的な棋士。歴史は繰り返す、といいたくなるような状況です。
1964年7月6日に行われた大山康晴名人-丸田祐三八段戦の観戦記は、最終譜に「むかしから"攻めつぶす"ということばはあっても"受けつぶす"ということばはなかった。"受けつぶす"が将棋界で新語として使われるようになったのは、大山将棋が出現してからである」とあり、今日では普通に使われている言葉についての発見があります。
大山-丸田戦は第1期、第8期、第14期で優勝を争ったカード。陣屋には2人の対局写真が飾られています。
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森内九段がABEMAに出演して現地の様子をレポートしました。陣屋の館内を紹介するとともに局面についてスタジオの解説陣と意見を交わし、森内九段は「藤井王座が正念場を迎えている」と話していました。その正念場で藤井王座が一つの決断を下します。
端に手をつける△9五歩(64手目)が思い切った選択です。出演を終えて控室で検討していた森内九段は「さすがですね」とうなりました。永瀬九段が指した▲2九飛は角のラインから逃げて形を整えた手ですが、先手玉が中央方面に逃げ出す展開になると、飛車は二段目にいたほうが受けに利いている面があります。「そこに目をつけて端を攻めたのが藤井さんらしい『相手の手に対応した手』で、非常に反射神経がいいなと思いました。△2二玉もあったとは思いますが、▲2九飛の顔を立ててしまうので」と森内九段。ここから▲9五同歩△9六歩▲5五歩と進んでいます。
森内九段は次のように話します。「どちらがいいかはわからないんですが、後手は数手で混沌とした形に持ち込みましたので、不利感をいっぺんに解消しました。藤井さんが攻めて、永瀬さんがクリンチする展開になると思います。次の手がすごい難しいですね。△9五香か、△5五同歩か。方針が変わってきますので」
ここに至るまでのポイントとして、「永瀬さんとしてはどこかで▲7四銀と打ちたかったと思うんですけど、見送って打てなくなったのが気になります」と森内九段。例えば、銀交換になった直後の△7五同歩(60手目)の局面で▲7四銀は考えてみたい手でした。森内九段は「けっこう嫌な銀だったと思うんですけど。現状は先手としては『追いつかれたな』と感じます」と話しています。
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対戦成績は藤井王座15勝、永瀬九段7勝と王座がリードしています。タイトル戦で争うのは今回で3度目。前期の王座戦五番勝負は永瀬王座に七冠を保持する藤井竜王・名人が挑む歴史的なシリーズになりました。藤井竜王・名人が3勝1敗で王座を獲得し、前人未到の八冠独占を達成しています。
雪辱を期す永瀬九段は今期、挑戦者決定トーナメントから出場。郷田真隆九段、菅井竜也八段、鈴木大介九段に勝って挑戦者決定戦に進むと、羽生善治九段を破って挑戦権を得ました。前期と立場を入れ替えてのリターンマッチに挑みます。
陣屋での対局は藤井王座が2回目、永瀬九段が7回目です。永瀬九段は王座戦では初挑戦の第67期以来6期連続。注目すべきは永瀬九段の成績で、通算では5勝1敗、王座戦は5戦全勝です。
■永瀬九段の陣屋対局成績(対局相手の肩書は当時)
2023年 ○藤井聡太竜王・名人 王座戦五番勝負第1局
2022年 ○豊島将之九段 王座戦五番勝負第4局
2021年 ○木村一基九段 王座戦五番勝負第3局
2020年 ●豊島将之竜王 叡王戦七番勝負第8局
2020年 ○久保利明九段 王座戦五番勝負第1局
2019年 ○斎藤慎太郎王座 王座戦五番勝負第1局(千日手指し直し)
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控室では青野九段、森内九段、野原女流初段が色紙に揮毫していました。東京で行われる大盤解説会の景品です。野原女流初段は森内九段門下。陣屋に立ち寄ってから東京に向かうとのことでした。大盤解説会は会場受付を締め切りましたが、オンライン視聴は申し込みが可能です。色紙は来場者だけでなく、オンライン視聴者用にも用意されています。
【第72期将棋王座戦第1局 佐藤天彦九段が大盤解説、9月4日に - 日本経済新聞】
https://www.nikkei.com/live/event/EVT240712002
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