一夜明け会見
藤井王座の八冠達成から一夜が明け、改めて会見が行われました。まずは花束贈呈から。
(昨夜同様、会見は着席して)
――昨晩の過ごし方は。
藤井 終局も遅かったので、部屋に戻ったあとに軽く対局を振り返って、という感じでした。
――よく眠れたか。
藤井 いろいろ考えてしまったところもあったのですが、それなりに普段どおりに寝られたかなと思います。
――師匠や家族からのお祝いのメッセージや連絡は。
藤井 はい、家族からは。師匠は恐らくお忙しいかと思うので、まだ特にご連絡はないのですが、こちらのほうから報告を入れようと思います。
――一夜明けて、改めて八冠の重みや感慨は。
藤井 今回の王座戦で八冠に挑戦できるのは、すごく貴重な機会と思っていましたし、それを達成できたのは、なかなか実感が湧かないのが正直なところです。うれしい気持ちとともに、これまで以上に将棋の内容でも細かいレベルのものが要求されると思っています。
――21歳になり、今後のピークはどのあたりを想定して取り組むのか。
藤井 まだまだ改善の余地は多いと思っているのですが、10代の頃と違って何か意識的に取り組んでいかないと、棋力を伸ばしていくのがどんどん難しくなっていっているのが私の目からも感じています。なので、どうすれば実力を高めていけるのかは、しっかり考えていきたいと思っています。
――八冠をどの期間、維持していきたいといった目標はあるか。
藤井 目標といわれるとまったく考えていないのですが(笑)。いまも竜王戦も始まっていますし、これからの番勝負をできる限り、よい内容のものにしたいと思っています。
――デビューからこれまでの成長を振り返って。
藤井 プロデビューからだと、タイトルに挑戦するまではある程度の時間がかかったかとは思っているのですが、それ以降のタイトル戦では自分の実力以上の結果が出ているというのが正直なところで、これからは結果に見合うだけの実力を求められると思っています。
――完全に追われる立場になった。戦い方は変わるか。
藤井 そうですね(笑)。ただ、将棋は盤を挟んでしまえば立場の違いなどもまったくないので、その点はこれまでと変わらない気持ちでもいいのかなと思っています。
――どうして独りだけこれほど勝ち続けられるのか。これほど強いのか。
藤井 この王座戦に関していうと第3局と第4局は全体を通しても非常に苦しい将棋で、逆のスコアでも、まったくおかしくなかったと思っています。そのことについては幸運だったと思っています。運はどちらに出ることもあるので、そうではなく、もっと実力が必要だと感じることが多いシリーズだったと思っています。
――昨日一日、対局室はどのような環境だったか。また、八冠の偉業をこの京都で達成したことに何か感じるものがあれば。
藤井 私自身はこちらで対局をさせていただくのは昨日が初めてだったのですが、対局室はすごく静かで、素晴らしい環境のところで集中して対局できたと思っています。京都での対局は他棋戦を含めると仁和寺さんなど何回か経験をさせていただいているので、私自身もなじみ深く、そういったところで達成したこともうれしく思っています。
――現在の心境を何と揮毫するか。
藤井 すみません、それはまだ考えていないのですが、恐らくどこかで(記念)扇子が出るかと思いますので、それをお待ちいただければと思います。
(笑顔を見せることも)
――今回、自身へのご褒美は。
藤井 私自身は勝ったときに何かご褒美をということは、実はあまり考えていません。勝ったときも負けたときも変わらずモチベーションを保つことが大事なので、むしろ負けたときにどう気分をよくするかは意識しています。なので、今回も何かご褒美をということはなく、この王座戦をしっかり振り返って、また前に進んでいけたらと思っています。
――劣勢の場面で幸運を引き寄せる力はあると考える。そういう場面で心がけていることは。
藤井 局面が苦しいときは、そのまま自然に進めてもさらに苦しくなってしまうので、なるべく相手玉に少しでも迫る形を作って、何とか複雑にできればということを考えて指していました。
以上で第71期王座戦の中継を終了します。