終局直後
(主催紙による終局後インタビュー)
──本局を振り返って。
藤井 早い段階から激しい展開になったのですが、▲7七角(37手目)△同馬▲同桂と局面が落ち着いたところで、どうバランスを取るかが分からなくて、そのあとは苦しくなってしまったのかなと思っていました。
──形勢を苦しくしたと思われたのは。
藤井 夕食休憩(54手目△6四銀)の辺りは、はっきり苦しいと思っていました。
──終盤は二転三転していたと思いますが、ご自身の形勢判断は。
藤井 終盤、先手玉に迫れる形になって、難しいところも出てきたのかなと思いましたが、時間もなかったですし、分からなかったというのが正直なところでした。最後は負けにしてしまったところもあったと思います。
──最後、逆転したと思われたところは。
藤井 △5六歩(126手目)と打って、詰めろで迫っていけそうな形になったかなと思いました。
──五番勝負全体を振り返って。
藤井 どれも難しい将棋だったと思っているのですが、その中で中盤で差を作られてしまう将棋が多くて、その辺りにまだ実力不足を感じるところが多かったと思います。
──王座獲得ついて。
藤井 本当に苦しいシリーズだったので、結果は幸いしたのですが、この経験を糧に、もっと実力をつけていかなくてはと感じています。
──八冠制覇について。
藤井 ここ1、2年、タイトル戦の結果はよかったのですが、ただ、それに見合った力があるかというと、まだまだだと思うので、引き続き実力をつけていくことが必要かと思っています。
(続いて永瀬前王座にもインタビュー)
──序盤、かなり工夫された展開でしたが。
永瀬 昼食休憩明けの▲7五歩(41手目)までは予定だったのですけど、△8四飛に対して、こちらの選択肢が多くて難しかったと思います。
──控室では永瀬王座が優勢と見られていましたが、ご自身の形勢判断は。
永瀬 いや、難しいのかなと思って指していました。
──本局の敗因、敗着があれば教えてください。
永瀬 ▲5三馬(123手目)に代えて▲4二金なら。以下△同金▲同成銀△同玉▲5二飛の順がエアポケットに入ってしまっていて、▲6二飛だと足りないと思ったのですが、▲5二飛~▲5五馬の順なら駒が取れるので。それほど難しくない順だったので、逃していけなかったと思います。
──五番勝負全体を振り返って。
永瀬 前の棋聖戦よりは、だいぶ差が縮まったのかなと思っていたのですが、終盤でチャンスがあったときに決定力が足りずに負けになってしまう、というのが2局続けてありましたので、それはなんとかしなければいけないと思っています。全体的には一局一局、全力で挑むことができて、一生懸命指して、内容はどれも見応えのある瞬間があったかと思っていますので、自分なりに一局一局、ベストを尽くしてて、今の自分の全力は出せたのかなと思います。第3局、第4局とチャンスの局面をものにできていれば次につながっていましたので、その点は残念に思います。
──名誉王座を目指す戦いでした。
永瀬 途中からは一局一局、ベストを尽くすという方向でしたので、そちらを意識して取り組んでいたかなと思います。結果としてはとても残念に思います。
──無冠になってしまいましたが、再起に向けて。
永瀬 公式戦で藤井さんに教えていただいて、番勝負を始める前と後では、だいぶ見えてきたものも違うかなと思うので、個人としては悲観せずに、今まで通り一歩一歩頑張っていきたいな思っています。
(書き起こし:夏芽)
(飛龍)