2024年1月
両対局者が解説会場に
終局直後インタビュー
終局直後、両対局者にインタビューが行われました。
(終局直後)
(勝った藤井聡太王将)
── 向かい飛車の戦いでした。1日目の進行はどのように見ていましたか。
藤井 序盤はあまり想定していない展開になり、角が向かい合っている形での駒組みになったので、そのあと色々な展開が考えられて一手一手難しいところかなと思っていました。本譜は動いてこられて、こちらが反撃にする展開になりました。封じ手直前で▲8三歩(43手目)と打たれたとき、本譜は△7二飛と寄ったのですが、▲5五歩と▲8二歩成の組み合わせに気づいていなかったので、△6二飛のほうがよかったかなと思っていました。
── △8四角成(48手目)と馬を作った局面は、難しいと思っていた?
藤井 そうですね。部分的な狙い筋ではあったのですが、▲7三歩が打たれている形だと6二の飛車の配置が弱い感じがします。やっぱり▲8二歩成から飛車を狙われてしまうので、それほど成算はある感じではないと思っていました。
── 2日目の昼食休憩の辺りは。
藤井 うまく指せばよくできる可能性のある局面かなと。△7五歩(56手目)では、△8六とと迷っていたのですが、本譜は△7三桂(60手目)に▲8七角と、と金を払われるのをうっかりしていて、だいぶマズい順を選んでしまったなと思っていました。△8六とと引くか、▲6六飛(57手目)に△7三桂と取るかで、違う順をやらなくてはいけなかったです。
── 優勢を意識したのは。
藤井 △5六歩(64手目)と垂らした局面は自信がなかったのですが、△6三同竜(74手目)と自陣に引きつけた形が結構安定しているかなと思ったので、その辺りは指しやすくなったかなと思いました。
── 総括して印象に残ったところは。
藤井 中盤はお互い、難しい局面だったと思います。その中で、こちらにいくつか読みの甘いところがあったので、そこは反省点だったかなと思います。
── 3連勝で王将位の3連覇、タイトル戦の20連覇に王手をかけました。
藤井 七番勝負は全体でひとつの勝負かなと思っているので、次もそのことは意識せずに、これまで通り臨みたいと思います。
(敗れた菅井竜也八段)
── 向かい飛車を選択された意図を教えてください。
菅井 ずっと同じ戦型が続いていたので、違うことをやってみようかなと思いました。
── 1日目の進行はどのように見ていましたか。
菅井 封じ手の少し前が大事なところなのですが、結局、判断がつかないまま指して、あまりよくない選択だったと思います。具体的には△4四角(30手目)に▲6六角と合わせたあと、普通は先に▲5八金左と上がるのが形で、それがいちばんよかった気がします。
── 1日目の時点で少し指しにくくしたと思っていたのでしょうか。
菅井 そうですね。攻めるしかなくなっているので、しっかり受けられると負けという将棋になっています。
── 2日目で棋勢を好転させようとされたと思うのですが。
菅井 △5六歩(64手目)に▲4六角と打つ手はありましたが、ちょっと負けなので1日目で苦しくしたのがマズかったと思います。
── 次戦に向けて。
菅井 スコア的にはかなり厳しいですけど、最後まで諦めずに頑張りたいと思います。
書き起こし=夏芽
撮影=武蔵
藤井王将が3連勝
第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局は、94手で藤井王将が勝ちました。終局時刻は16時41分。消費時間は▲菅井八段6時間48分、△藤井王将7時間5分。
この結果、七番勝負は藤井王将が3連勝。次戦、第4局は2月7、8日(水、木)に東京都立川市「オーベルジュときと」で行われます。