【主催者挨拶】
朝比奈 豊・毎日新聞社代表取締役社長。
「みなさま、あらためまして、明けましておめでとうございます。毎日新聞の朝比奈でございます。新年の土曜日に、こんなにたくさんの方々に前夜祭にお集まりいただきまして、本当にうれしく思っております。
私は会社の用事がありまして、富士山静岡空港からこちらに来たのですが、素晴らしい天気で駿河湾と富士山がいっぺんに見られました。日本国外はバタバタした情勢ではありますが「日本のお正月は掛川からまた始まるのだな」という思いを強くいたしました。
王将と名人に話を聞きましたら、さきほど掛川城を背に、武士の格好で記念撮影をしたそうです。この写真がスポニチさんの紙面に載ると「やっと将棋界の一年が始まるな」という気がします。掛川の王将戦は7年連続ということで、ここまでくると恒例になってきたように思います。
掛川で王将戦をするようになったきっかけは2009年の名人戦でして、当時の羽生名人に郷田さんが挑戦したのですが、その第2局を熊本城でやるということで話題になりました。それを聞いた掛川の人たちが「木造で再建したお城が掛川にもある。こちちでもやるぞ」と盛り上がり、私どもの担当者たちも「それはいい」と乗り気になりまして、翌年から掛川で王将戦が始まったというわけです。
郷田さんは昨年、4勝3敗で見事に奪取されました。第1期叡王戦でも準優勝されています。私が忘れられないのは前期の就位式のことです。ご病気で倒れられたご友人のプロレスラーの方のために、募金をされていた姿が印象に残っています。その郷田さんは「羽生さんにはたくさん借りがある。勝ってその借りを返したい」とおっしゃっています。非常に意欲的なコメントだと思います。
一方、羽生さんですが、本当に強いですよね。名人戦を2連覇された後、棋聖戦、王位戦、王座戦と防衛して現在四冠王です。王将獲得は通算12期で永世王将の資格も持っておられます。羽生さんは昨年、若い人たちの挑戦を受けてきたこともあって「同世代の郷田さんと戦うのはかえって新鮮」とおっしゃっています。我々も楽しみにしています。
今回は名人が王将に挑戦するという得難いシリーズです。将棋連盟は今年もいろいろなことに挑戦されていくと聞いておりますが、毎日新聞、スポーツニッポンも力を合わせて、将棋界を盛り上げていきたいと思っています。
最後になりますが、掛川対局がこれまで続いてきたのは、松井市長をはじめとした掛川のみなさまのご尽力のおかげです。本当にありがとうございます。みなさまにとって素晴らしい年になりますことを、また、お二人にとって素晴らしい戦いになることを期待いたしまして、私のあいさつと代えさせていただきます」
河野 俊史・スポーツニッポン新聞社代表取締役社長。
「明けましておめでとうございます。お寒いなかを王将戦第1局の前夜祭に駆けつけていただきまして、本当にありがとうござます。王将戦の掛川対局は7年連続7回目、第1局に限れば5年連続5回目となります。これもひとえに掛川市や掛川信用金庫さま、さらには地元有志の方たち、いわゆる「ゼロの会」のみなさまのおかげです。まさに官民一体となって実現したことだと思います。あらためて感謝申し上げます。
今回は名人が王将に挑戦するという、将棋界のゴールドカードになりました。歴史的にさかのぼりますと、王将と名人にはいろいろな因縁があります。王将戦が始まったのは昭和25年(1950年)です。A級棋士を5人選抜して、総当たりのリーグ戦を行い、その優勝者が当時の木村義雄名人と戦うことになっていました。名人と戦うことから王将戦が始まったといえます。
王将対名人の王将戦を数えてみましたら、これまでに8回ありました。1999年には当時の羽生王将と佐藤(康光)名人が戦っています。今回は16年ぶりになります。これまでの8回の勝敗は、王将が20勝、名人が23勝です。わずかに名人が勝ち越しています。今回も白熱した戦いを期待しています。
郷田王将にはスポニチも大変お世話になっております。昨年は有馬記念の予想をお願いしまして、予想された3連単のボックス買いが12万円の穴馬券になりました。買った人は大儲けされたと思います。今期防衛されましたら5月のダービーも占っていただきたいと思っています。
羽生名人とは昨年の名人戦第3局、松江対局でご一緒させていただきました。対局前に松江城も見学させていただいたのですが、その数日後に松江城が国宝に指定されるというニュースが流れました。羽生さんは本当に引きが強いなと思ったものです。
本日はお二人に兜をかぶせたり、刀を持っていただいたりしましたけれども、読者のみなさまが楽しみにしていることですのでご容赦ください。スポニチも毎日新聞とともに全力で王将戦を盛り上げていきますので、ご支援のほどよろしくお願いします。明日からの対局では熱戦を期待しています。ありがとうございました」
谷川 浩司・日本将棋連盟会長。
「みなさま、明けましておめでとうございます。今年の王将戦は、防衛を目指す郷田王将に、五冠を目指す羽生名人と、非常に楽しみなシリーズになりました。お二人はタイトル戦で何度も顔を合わせておりますけれども、その始まりは平成5年(1993年)の王位戦でした。当時はまだ20代同士ということで、序盤から長考合戦になりました。将棋の真理を見極めるという、お二人の志を感じるシリーズでした。それから20年の年月が流れまして、郷田さんは44歳、羽生さんは45歳になりました。お二人を年寄り扱いするわけではないのですが、合計89歳のタイトル戦は、大山名人のころはさておき、最近では珍しいことです。私の記憶に間違いがなければ、平成5年の中原米長の名人戦以来のはずです。そのときは合計年齢が93歳か94歳だったので、それに次ぐ年齢の高さとなります。それはつまり、郷田さん、羽生さん、森内さん、佐藤さんといった世代の棋士たちが、20年以上も将棋界の中心であり続けたことの証明だと思います。今回の王将戦が、20代のころのような長考合戦になるのか、40代の円熟した戦いになるのか、それはわかりませんけれども、将棋ファンのみなさまには楽しんでいただきたいと思います。また、いまの将棋界は20代の若手棋士がだらしないので、若手棋士たちもこの七番勝負をしっかりと見て、タイトルを獲るにはこれだけ将棋に打ち込まなければいけないのだと、そう感じてほしいと思います。今回も素晴らしいシリーズになることを期待しています。ありがとうございました」
【共催者挨拶】