*お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第6局 
1日目昼食休憩
東京・将棋会館
千駄ヶ谷の将棋会館は旧会館から移転し、「ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル」の1階が新しい本拠地になっています。2024年、日本将棋連盟の創立記念日にあたる9月8日にお披露目式が行われました。2025年1月から対局場としての運用が始まり、対局室は特別対局室・鐘馗(しょうき)・陽響(ひびき)・高雄・雲鶴・棋峰・飛燕・銀沙・香雲・歩月・桂の11部屋があります。新会館に移ってから2日制のタイトル戦が行われるのは初めてです。
旧会館からショップや道場といった機能は「棋の音(きのね)」に引き継がれ、新たにカフェがオープンしました。「棋士カプチーノ」は月替わりで棋士の顔写真がプリントされるインパクトのあるメニュー。9月は女流王位の保持者である福間香奈女流六冠です。
永瀬九段の研究か
戦型は角換わり腰掛け銀になり、早いペースで指し手が進みました。藤井王位は▲4五銀(43手目)とぶつけて開戦。玉の位置の差がポイントで、銀交換になると▲6三銀△同金▲7二角という定番の攻め筋が先手にだけ生じます。実戦は△5五銀▲5六銀△同銀▲同歩△5二玉▲6八金△4四歩と進みました。
データベース上には5局の実戦例があり、2022年のお~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第4局で初めて指されました。藤井王位に豊島将之九段が挑戦したシリーズです。この王位戦第4局は先手を持っていた藤井王位が▲4七玉と指し、以下△4二金▲5五歩△6三角▲5七金左△8六銀▲同歩△同歩▲5六角と進んで激しい戦いに突入しました。結果は先手勝ち。
以後の4局はいずれも▲4七玉ではなく▲5五歩と位を取り、後手は△6三角や△7二角と自陣角を打って対抗する構図になっています。
本局でも藤井王位が▲5五歩と新しい定跡を選びましたが、永瀬九段は△6三銀(52手目)と角ではなく銀を打ちました。これは前例のない手です。永瀬九段の研究と思われます。
八代八段は「角を打つのは見たことがありますが、銀はないですね」と意外そうな様子。藤井王位は33分使って▲5六銀と位を支えました。八代八段は「後手は△5四歩▲同歩△同銀と動く手があったので、そのときに▲5五歩と打って追い返せるようにしていますね。先手は5筋の位が主張です」と話します。一見すると位という明確な差があって先手十分のようですが、角換わりは持ち角を使った切り返しに警戒が必要な戦型。うまく陣形をまとめながら進められるか、先手は神経を使う展開になりそうです。